動き出した誘拐犯
その日の夜。シュウ達は校舎の外を見回りしていた。
「この時間帯なら、犯人と遭遇する確率が多いかもしれません」
クリムの説明を聞き、タルトは周囲を見回してこう言った。
「確かにそうだな。人もあまりいないし、街灯も少ない。不審者とにって好都合だ」
「早く奴らを捕まえて、何を知るのか聞きださないと」
クリムがこう呟いた時、急に車のライトが照らし出された。ただ、通り過ぎるだけだとシュウは思ったのだが、通り過ぎる際にシュウは後ろの座席に武器らしきものがあるのを目撃した。
「父さん、あの車を止めてくれないか?」
「何かあったのか?」
「武器だよ。こんな街中で武器を車にいれる奴なんていないよ」
「そうだな。おい、そこの車‼ 我々はギルドの者だ‼」
タルトが魔力を使って車の前へ止まり、車に止まるように指示をした。タルトが前に出た際に車は一旦止まったが、すぐにエンジンをふかした。
「止まるつもりはないか。仕方ないな……」
止まる気がない車に対し、タルトは剣を手にして車の前方を突き刺した。それを見たのか、運転手と助手席に座っていた男が慌てて飛び出した。逃げようとしているのだが、彼らの前にはキャニーとフィアットが立っていた。
「話、聞かせてもらいます」
「痛い目にあいたくなかったら、言う事を聞いた方がいいよ~」
後ろを見ると、銃を構えたシュウと、魔力を開放しているクリムがいた。観念した二人は、大人しく言う事を聞くことにした。
その後、タルトとフィアットは二人から情報を聞き出すために、一度シェラールのギルドに戻っていた。
「あんた達に聞きたいことはいくつかある」
「その前に、俺達がどうなるか教えてくれ」
「質問をするのは私達の方だ。君達ではない」
冷徹な口調で、タルトは男にこう言った。近くに剣が置いてあることを察し、下手をしたらどうなるか男達は理解した。
「分かった……何でも言うよ……」
「では、あなた達は一体何者?」
「俺達はテロ組織、リセットワールド」
「いくつかテロ組織は潰したことがあるけど、あんたたちの名前は聞いたことがないわねぇ」
「結成して一年も経っていません。小規模なんです」
ふーんと、返事をし、フィアットはタルトの方に目を向けた。次に何を話せばいいのか指示を煽っているのだ。それに察したタルトは私が変わると合図をし、剣を持って机の前に座った。
「私が変わって話を聞こう。で、ユリバナ高等女学院の誘拐騒動は君達が起こしたのか?」
「はい」
この言葉を聞き、タルトは咳ばらいをして次の質問をした。
「何でこんなことを起こした?」
「金の為です。あの年頃の子を売れば、いい値で売れるんです」
「人身販売か……まだそんなことをしている連中がいたのか……」
タルトは少し苛立ちながら、男を睨んでこう聞いた。
「人身販売についていろいろと聞きたい。それと、お前達組織の事もな」
「それは……無理だ」
返事を聞いたタルトの苛立ちが最大まで達し、ついに目の前の男の頭を机に叩きつけた。フィアットが急いでタルトを抑え、何とか落ち着くように説得した。
「タルトさん、奴らがとんでもない悪党だってのは分かるけど、これ以上手を出したら何も答えなくなりますよ」
「はぁ……はぁ……はぁ……すまん、フィアット……」
タルトは一旦落ち着き、男の額から流れる血を拭き、話を再開した。取り調べは夜中まで続いたという。
その頃、リセットワールドの本拠地にて。身動きできないようにしてある女生徒を見て、部下達が気持ち悪い笑みをしていた。
「貴様らの性的趣味が分からない。そんなガキに興奮するのか?」
部屋の中央にいるボスらしき男が、呆れてこう言った。それに対し、部下の一人がこう言った。
「だって、丁度この年頃が可愛く美しい時期でありまして……へへ……」
「気持ちが分からん。俺はもう少し歳をとった方が美しいと思う」
そう言って、ボスは机の上にあるワインを飲んだ。少し考え事をした後で、ボスはこう言った。
「おい、今日の誘拐担当の奴が帰って来てないようだが」
「そうですね。連絡もないですし……」
「……最悪の事態が起きたようだな」
ボスはそう言って立ち上がり、部下を集めてこう言った。
「先日言ってたギルドの連中が動き出した可能性がある。今後の予定を変える。明日以降はギルドの動きが収まるまで、ここで待機。そして、一週間後にある人身販売オークションに向かう。金も欲しいが、これ以上仲間を失う事は避けたい。我らが作る世界の為にな」
話を終えた後、ボスはまた考え事を始めた。仲間が捕まった以上、このアジトにギルドの連中が来る可能性がある。しかし、こっちには攫った女学生がいる。奴らもここで派手にドンパチはしないはずだ。そう考えをまとめた。
だが、ボスにはまだ考えるタネがあった。それは、ギルドの戦力がどのくらいか分からないのである。
「とりあえず寝よう……考えるのは明日でもできるか」
そう言った後、ボスは寝るためにベッドへ向かった。だが、その時に部下の一人が女生徒に手を出そうとしていたのを目撃した。
「へへへ……ちょっとだけなら……」
「おい」
ボスは銃をその部下の頭に押し付け、こう言った。
「商品に手を出すな。値崩れするだろうが」
「は……はい。すみません」
「今日は大人しく寝ろ。またふざけたことをしたら頭が吹き飛ぶからな」
そう言って、ボスは部下を連れてこの場から去って行った。




