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クリムがイラッとした日

 その日の夜、シュウ達は現地のホテルに泊まる事になった。部屋は簡単に男子と女子で分かれている。今、シュウとタルトは見回りの為に外に出かけている。クリム達はホテルの部屋で待機する事になった。


 部屋の中で、クリムは機嫌が悪そうに唸っていた。


「どうかしたのー?チョコ食べなよー」


 フィアットから受け取ったチョコを食べ、クリムは機嫌が悪い理由を説明した。


「明日からの依頼が大変そうです」


「そうですか? クルーガーみたいな人はいないような気がしますが」


「女生徒です。説明する時に見たでしょ、あの男に飢えているような連中の目を」


 そう言われ、キャニーとフィアットは説明会の時の女生徒の盛り上がり具合を思い出した。


「そう言えば、説明会が終わってすぐにシュウ君の周りに人が集まりましたね」


「親子だってのに、タルトさんの方はだーれも寄り付いてこなかったねー。あっはっは」


「笑い事ではありませんよ。全く、あの後で先輩といちゃついて女生徒達に誰が先輩の彼女であるか思い知らせればよかった」


「あんまりそう言う事を言わないでください」


 アホなことを言ったクリムにこう言った後、キャニーは手元の資料を見直した。フィアットは資料を奪い取り、書かれている文章を読み始めた。


「あ、ちょっと‼ 私がまだ読んでるでしょうが‼」


「何これ? 誘拐された人の名前と誘拐された時の状況?」


「必要だと思って、ギルドの方から送ってもらったんです」


「何かの参考になるかもしれませんね。読み終わった後でもいいので、後で読ましてください」


「はい。分かりました」


 今は何も情報がない。ただ、誘拐犯は何か一つへまを起こしている。完璧に誘拐が出来る奴なんて一人もいない。うまくやれたとしても、どこかで何かを見落としている。と、クリムはそう考えていた。


 一方、シュウとタルトは学校の周りを見ていた。


「怪しい人はいなそうだね」


「ああ。見かけた人って言っても、大体がジョギングかお出かけをする人だ」


「何か情報でもあると思ったんだけどな……」


 タルトは腕時計を見て、時間を確認してシュウにこう言った。


「いったん戻ろう。明日から校舎内での護衛があるから、大変になるぞ」


 その後、二人はホテルに戻って行った。




 翌日、シュウ達が校舎にやって来たのだが、誰一人生徒はいなかった。


「あれ? 今日は休みですか?」


「そんなはずはありません。今日は平日ですし、特別な用事はこの時期ないはず」


 キャニーの説明を聞いた後、シュウは人を探しに校舎内へ入った。その直後。


「シュウさァァァァァァァァァァん‼」


「お待ちしていました‼」


「きゃあああああああ‼ 今日もかっこいい‼」


「付き合ってください‼」


「私とやりませんか?」


 何と、遠くから女生徒の群れがシュウに向かって走ってきたのだ。


「うわ‼ 何じゃありゃ!?」


「皆先輩に向かって走って来てますよ‼」


「シュウとクリムちゃんは逃げるんだ。ここは私が」


 と、タルトが前に立ったのだが、すぐにキャニーとフィアットがタルトをどかした。


「昨日みたいにフルボッコにされるだけです」


「女子の相手は女子がするよ」


 その後、キャニーとフィアットが暴徒と化した女生徒を沈めたのだが、別の所にいる女生徒がシュウに向かって飛びついてきた。


「抱かして頂戴‼」


「ヒャッハー‼ イケメンショタだァァァァァァ‼」


「イケメン、ショタ、童顔‼」


「いっただきまーす‼」


「クッ、こんな所に隠れていたんですね‼」


 クリムは魔力を開放して脅したつもりだったのだが、女生徒達はそれでもシュウに突っ込んで来た。


「仕方ありません」


 そう言って、クリムは風を発生させて女生徒を吹き飛ばした。


「こ……これじゃあ護衛は要らなそうだな……」


 暴徒と化して、暴れている女生徒を見てタルトは呟いた。




 数分後、バカップルは校舎の外を見ていた。そんな中、クリムはホテルで見た資料の事をシュウに話していた。


「昨日、ホテルで事件資料を読んでいましたが、いろんなことが分かりました」


「何か共通点があったのか?」


 はいと答え、クリムは話を進めた。


「誘拐された時間が19時くらいなんです。大体その時刻に帰るのは部活を終えた女生徒です」


「夜か……暗くて回りがよく分からないしな」


「場所も似たようなところで起きています。街灯と人気が少ない場所です。恐らく、犯人は場所を事前に調べています」


「その可能性があるな。しかし、何でこんなことをするんだろうな?」


「それが分からないんです。誘拐だとしたらすぐに金をよこせとか言います。それが一切ありません」


「何かやばい事が裏で始まってるような気がするな」


「はい。早く犯人をとっちめないと」


 聞いている限りは真面目な話だったのだが、バカップルは抱き合ったり、キスをしあったりしているため、真面目に話をしているという雰囲気は全くなかった。そんな馬鹿二人を見て、キャニーはため息とともにこう言った。


「二人とも、真面目に話をするならしっかりやってください。いちゃつくなら、ホテルでお願いします」

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