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それは野獣の群れにひと切れの肉を入れるようなこと

 数時間後、シュウ達はユリバナ高等学院の体育館のステージ上に立っていた。今、学校側が事情を説明するために全生徒にシュウ達を紹介していたのだ。


「というわけで、今日からしばらくシェラールのエイトガーディアンのタルトさん、同じくエイトガーディアンで同校卒業のキャニーさん、フィアットさん。そしてハリアの村のギルドから来たシュウさんと賢者のクリムさんがあなた達生徒の護衛を始めます。皆さんの仕事の邪魔にならないよう、気を付けてください」


 司会の先生がこう言っているが、女生徒はシュウの顔を見てキャーキャー騒いでいた。


「話を聞いてるのかな、あの子達?」


「聞いてないようですよ。あの様子じゃあ……」


 不安なタルトに対し、クリムは殺意のオーラを放ってこう言った。クリムはこう思っていた、この会が終わった直後に女生徒は一斉にシュウに近付くのだろうと。幼なじみとして、彼女としてシュウに他の女がまとわりつくのは嫌なのである。


「では、解散」


 先生がこう言った直後、女生徒達は一斉にシュウに近付こうとした。だが、危機を察したタルトがシュウの前に立ってこう言った。


「あー待つんだ君達。気持ちは分かるが、これから見回りを行いたい。すまないが……」


「うっせーおっさん‼」


 女生徒の怒りの裏拳が、タルトに命中した。それをきっかけに、女生徒達が一斉にタルトに襲い掛かった。


「何様だテメーコノヤロー‼」


「偉そうにすんじゃねーぞクソ親父‼」


「いっぺん絞めたろか‼」


「誰か、荒縄を持ってきなさい‼」


「あったよ荒縄が‼」


「でかした!」


 女生徒達がタルトに襲い掛かっている隙を狙い、キャニーとフィアットはバカップルを連れ出した。




「うわー、懐かしいなー」


 フィアットは周りを見ながら、懐かしそうにこう呟いていた。それをみて、キャニーは呆れてため息を吐いていた。


「全く、昔を思い出すためにここに来たわけじゃないのよ?」


「知ってるって。いいじゃないの、昔を思い出すくらい。あ、ここは確か私が魔法で穴を開けた場所だー。うまくごまかしてあるじゃん」


 フィアットはそう言いながら、壁の一部をつついていた。その時であった。後ろから大きな足音が響いたのだ。


「何ですかこの音?」


「足音みたいだけど」


 シュウが音のした方を振り向くと、女生徒の黄色い声が響き渡った。


「きゃああああああああああ‼ シュウく~~~~~~~ん‼」


「やだぁ、テレビで見たことあるけど生で見るともっとかっこいいじゃないのぉ」


「付き合ってください‼」


 女生徒は皆、花束やプレゼントを持ってシュウに向かって走って来た。


「一体いつの間にプレゼントを用意したんだろ?」


「そんな事言ってる場合じゃありません……」


 クリムは魔力を開放し、シュウの前に立った。それを見た女生徒達は、クリムの魔力にも負けぬ勢いでシュウに突っ込んで来た。


「あなた達‼先輩は私と付き合ってるんです‼ 迷惑なことは止めてください‼」


「何だとー!?」


「このちんちくりん賢者がぁ‼」


「貴様を天に返してやろう‼」


 そう言って出てきたのは、世紀末の覇者っぽい女生徒だった。あまりにも慎重さがあるのだが、クリムはそれに負けず魔法を放った。それを見て、その女生徒は悲鳴を上げて逃げて行った。


「いや~ん。やっぱり私こわ~~~い」


「あんたの方が怖いわよ」


 去っていく覇者っぽい女生徒を見て、フィアットは小さく呟いた。その後も女生徒達はシュウを見るたびにアタックしてくるのだが、ことごとくクリムがそれを阻止していた。


「全く……このくらい元気があれば誘拐されても大丈夫なんじゃないですかねぇ?」


「クリムさん、物騒なことを言わないでください‼」


 賢者にあるまじき言葉を放ったクリムに対し、キャニーはツッコミを入れた。そんな中、ボロボロになったタルトがシュウ達と合流した。


「父さん!? 何でこんなことに!?」


「最近の女子の力を甘く見ていた……やばいよあれ……」


「それよりタルトさん、仕事は出来ますか?」


「ああ、問題ない」


 キャニーにこう答えると、タルトはゆっくりと立ち上がった。




 校舎の周りにて、少し離れている壁の裏に一台の白い車が止まっていた。


「チッ、ギルドの奴らを呼んで来たか」


「当たり前だな。誘拐事件が多発してるもんな」


 車内にいる男二人がこう会話をしていた。その時、携帯の着信音が鳴り響いた。


「ちょっと待てよ……はいボス‼ 何かありましたか?」


 と、男の一人はボスと呼ばれた男の電話をとった。電話の向こうにいるボスは、男に向かってこう言った。


「今日の仕事は中止だ。今すぐに戻って来い」


「分かりました」


 返事をし、通話が切れるのを待った。その後、男は相方に先ほどの言葉を伝えた。相方の男は分かったと返事をし、エンジンを付けた。


「しっかし、ボスもこの事を耳にしてたんだなー」


「当たり前だろ。いつギルドの奴らが来てもいいように、あの学校の事を調べてたんだからさ」


「だけどどうするんだ? これから俺達、ギルドの奴らと戦うのか? それ程の戦力はないだろ」


「それはボスに聞くさ」


 そんな会話をしながら、彼らはどこかへ去ってしまった。

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