研究所へ殴り込め
シュウ達は車から降り、森の中を歩いて行った。目的のクルーガーがいる研究所はこの森の奥に存在するのだという。
「確か研究所の近くに車を止めて歩くって言ったよな? もう十分は歩いてるぞー」
ティラが欠伸をしながらこう聞くと、キャニーは足を止めた。シュウ達の目の前に、古ぼけた館が見えてきた。
「あそこが目的地です。あの廃墟に奴がいます」
「こんな森の中の廃墟を使って、何を作ってんだか」
「それを調べに行くんじゃありませんか」
クリムがティラにこう言うと、シュウは左手に拳銃を装備した。キャニーも両手に、拳銃を握っていた。
「変な感じがしたんですね」
「ええ。あそこから魔力を感じます。何かしているのは間違いないです」
「昨日のマフィアより恐ろしいかもしれんぜこりゃ……」
シュウは冷や汗をかいてクリムにこう答えた。キャニーもより一層真剣なまなざしとなったため、それほど危険な物だとクリムは感じた。
「先輩、昨日みたいに一気に攻め込むのは止めましょう。何を作ってるか分からない以上、変に動いたら周囲に被害が及びます」
「だな。ドカンと一発って考えてたんだけど。変に被害が拡大したら大問題だしな」
「慎重に行きましょう」
会話後、シュウ達は廃墟の近くまで隠れながら移動した。廃墟の壁はボロボロになっていて、崩れた壁から館の中が見えていた。
「ただの廃墟じゃないな……」
シュウは望遠鏡をのぞいてこう言った。廃墟の至る所に監視カメラらしきものがあり、ところどころ変に違和感を感じる家具が置いてあった。
「あの変な家具は罠と見て考えてもいいでしょう」
クリムも望遠鏡をのぞき、シュウにこう言った。話を聞いたティラは、アサルトライフルを構えてシュウ達にこう言った。
「ここでずっと座ってたら先に進まない。一気に攻め込むぞ」
「待ってください。何か作戦を考えましょう」
「作戦? こんな状況でか?」
ティラの言葉を聞き、シュウ達は辺りを見回した。そこには白い防護服を着た人物が数名立っていた。
「森のどこかにカメラがあったんですね」
「私でも察知できなかったよ。物を隠すのが得意なんだな、お前ら」
「つまらんことを言うな」
「貴様たちを始末する」
防護服の集団はそう言うと、一斉に銃と魔法をシュウ達に向かって撃ちこんで来た。しかし、クリムがバリアを張って攻撃を防御した。
「攻撃が沈み次第バリアを解除します。その直後に攻撃をお願いします‼」
クリムがバリアを解いた瞬間、シュウ達は一斉に攻撃を仕掛けた。逆にシュウ達が放った銃弾を喰らった防護服の集団は、悲鳴を上げながらその場に倒れて行った。
「こうなった以上、攻め込むしかありませんね」
「だろ? 最初からこうしてればよかったんだよ」
ティラはキャニーにこう言った後、一気に廃墟へ向かって行った。
廃墟の地下にて。クルーガーはこの地下を改造し、研究室を作り出していた。その部屋には、モンスターらしき動物が入った液体カプセルや、変なケーブルでつながれたモンスター、更には肉切り包丁という物騒な品物が置いてあった。
「クルーガーさん、不審者が現れました」
「そうか、分かったぞミルチ」
研究中のクルーガーは、状況を伝えてきたミルチに返事をした後、再び研究に戻った。
「逃げないのですか?」
「逃げはしない。逆にいい機会だ。私が開発したキマイラモンスターがどれだけ強いか、調べる事が出来る」
そう言うと、クルーガーは奥の部屋へ向かった。部屋へ入り、クルーガーは壁にあるスイッチを押して、笑いながら呟いた。
「さぁ、思う存分に暴れろ……我がキマイラモンスターよ‼」
その直後、部屋中にモンスターの咆哮が響き渡り、壁や天井を壊す音が響いた。その音を聞いて驚いたミルチは部屋に入り、荒れ果てた部屋を見て驚いていた。
「これは一体……」
「試作品を出したところだ。これほど暴れるとは予想外だったが……まぁ、研究の一つと思えば部屋の一つ二つ、崩壊しても気にはしない」
「そう……ですか」
「では戻るぞ、研究の再開だ」
「はい」
その後、二人は研究室へ戻って行った。
廃墟に入ったシュウ達は、あちらこちらから襲ってくる罠を破壊しながら、先へ進んでいった。
「全く、どれだけ罠があるんですかね」
「本当だよもう‼」
シュウはレーザー銃が装備されている罠を破壊した後、後ろから飛んでくる弾丸をかわした。
「先輩‼」
クリムはすぐに氷柱を発し、罠を破壊した。ティラは両手にライフルを持ち、周囲の罠を破壊していった。その横では、キャニーが二丁の拳銃で次々と罠を破壊していった。
「やるじゃねーか嬢ちゃん」
「これでもエイトガーディアンの一員です。そこらのガンナーよりも腕は上です」
「そりゃそーかい‼」
ティラはキャニーに襲ってくる罠を破壊し、茫然とするキャニーにこう言った。
「けど、あまり過剰な自信は持たない方がいいよ。かえって邪魔だ」
「……分かりました」
しばらく廃墟内で罠を相手に戦っていると、クリムが違和感がある壁を見つけた。
「ここだけ崩れてないですね」
「……もしかして」
シュウは壁に近付き、ホコリを払った。すると、壁に数字ボタンが現れた。
「ここが入口か。こんな小細工しやがって……クリム、でかいのを頼むよ」
「はい」
クリムはティラにこう答えた後、巨大な火の玉を発し、大爆発を起こした。
「さーて、ここからが本番だよ。気合入れていくよ」
現れた入口を見て、ティラは笑いながらシュウ達にこう言った。




