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スナイパーの戦い

 腕を撃たれたデアは、心の中で自分の事を罵倒していた。自分はシェラールのギルドの戦士、遠くにいるスナイパーにどうして気付かなかったと何度も行っていた。その行為を察したのか、ティラは治療をしながらこう言った。


「あんまり自分を責めるな。あんな距離から撃たれるなんて、誰だって思ってねーだろうし」


「しかし……私はシェラールのギルドの戦士、この程度で倒れてしまっては……」


「誇りなんてどうでもいいだろうが。一番大事なのはどれだけ悪党や暴れまくる凶暴なモンスターをぶっ倒す事じゃねーか」


「……ティラさん。あなたは一番何が大事なんですか?」


 デアにこう言われ、ティラはにやっと笑って返事をした。


「仲間と自分の命と、酒だ。うし、治療は終わったが、あまり無茶すんなよ。また傷が開くから」


「は……はぁ」


「じゃー行ってくる。狙われたくなかったら隠れてろ」


 ティラはライフルを背負い、去って行った。




 リアハは耳を澄まし、足音を聞こうとしていた。先ほど、デアを撃ったのは彼女である。遠くから足音などの音、それに気配を頼りに彼女は銃を撃ったのだ。


「一人は倒した……けど、まだいる」


 近付いてくる気配を感じ、リアハはまだ敵がいることを察していた。ライフルを構えて数分が経過したが、気配は近付いてくる気配はなかった。


 まさか、同じスナイパーか?


 リアハは心の中でこう思った。同じスナイパーなら、自分がどうやってデアに攻撃したのか悟られてしまう。リアハは相手にスナイパーがいるとは思っていなかった。


 予想が外れた。そう思い、一気に勝負を終わらそうとリアハは考えた。後ろの窓から部屋に飛び入り、周囲を見回した。この部屋は部下の寝室であるが、机やタンスなどが乱雑に置かれている。部下達は滅多に掃除や片づけを行わないのだ。だがしかし、これがかえってリアハにとっては好都合なのである。倒れたタンスやベッドは壁になり、布団などに潜って移動すれば、相手に悟られることもない。


 リアハはこの部屋を中心に、敵の位置を探ろうと考えた。数分後、ライフルを構えたリアハの緊張感は徐々に高まって行った。あれから、敵の気配を感じることは出来なかったのだ。探しに行こうと考えたが、逆に撃たれてしまうのではと思い、何度も踏みとどまっている。


 敵はどこだ? どこにいる!?


 心の中で、何度もそう叫んだ。その叫びとは裏腹に、敵の姿は見えてこない。まさか、自分の事を無視してどこかへ行ってしまったのではないか?リアハはそう思い、足音を出さずに移動しようとした。しかし、銃声が聞こえた。その数秒後、リアハの頬をかすめるように弾丸が着弾した。着弾の直後、リアハはすぐに弾丸が飛んできた方向にライフルを向けて構えた。


「おーい、こっちだよー」


 その時、どこからか声が聞こえた。すると、後ろから物音が聞こえた。


「そこか!」


 後ろを振り向き、リアハは発砲した。しばらくして、バスンと音が聞こえた。やったか?そう思って近づいて調べたが、命中したのは枕だった。


「枕……」


「ほーい、チェックメイト」


 頭に何かが当たる感覚がした。恐る恐る後ろを見ると、そこにはライフルを持ったティラが立っていた。


「……何故分かった?」


「隠れてるようだけど、殺意がむんむんと湧いてるようだよ。おかげですぐに場所が分かった」


「殺意……」


「そ。平たく言えば、人がいる感覚。自分で分からないの?呼吸の音とかすごい聞こえてたよ」


 ティラは笑いながらこう言った。しかし、彼女から感じる恐ろしいオーラがリアハを包み込んでいた。


「跳弾を使うほどのテクニシャンだけど、まだまだ甘いね」


「……撃て。私の負けだ」


 ティラの言葉を聞き、ヘヘっとティラは笑ってライフルの引き金を引いた。




 発砲音が聞こえた。隠れているデアは勝負がついたと判断した。しばらくすると、白目をむいて泡を吹いているリアハを抱えたティラが戻ってきた。


「お待たせー。終わった終わった」


「この人が私を……」


「跳弾を使うテクニシャンだったよ。ま、腕はすごいけど心は弱かったみたいだね」


 ティラはリアハを地面に下ろし、彼女のポケットから銃弾を手にした。


「跳弾用に細工した弾丸か。何か役に立つと思うし貰っとく?」


「いえ、結構です。それに、私はライフルを使えないので」


「覚えておいた方がいいよー。今の時代、剣でチャンバラよりか銃や魔法で遠くからドンパチやってた方が便利だし」


「はぁ……」


 その後、ティラはリアハの装備を全て没収し、デアに向けてこう言った。


「デア、お前はこの女を連れて先戻ってろ」


「え?」


「怪我してるけど、女一人は連れて戻れる体力はあるだろ?」


「ありますが……ティラさんはどうするんですか?」


「弟子の様子を見てくる。ちーっと不安だしなー」


 ティラはそう言って、階段を登ろうとした。その時、デアが声を出してティラを止めた。


「何だー?」


「無事に戻ってきてください」


「あいよー」


 ティラはそう返事をし、階段を上った。ティラの姿が見えなくなった後、デアはリアハを背負って下の階へ降りて行った。

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