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見せたくなかったもの

「な……何……あの腕……」


 ハーゼはシュウの右腕を見て、驚愕していた。今思うと、シュウはずっと上に何かを羽織っていた。今の季節はそれなりに熱いのだが、それでもシュウは服を羽織っていた。それは、その傷を隠しているためだと。


「つっ……あまり見せたくないな……」


「何だその傷は……お前、その傷で戦って……」


 シュウは驚いて隙だらけのヴァローナに向け、銃を放った。ヴァローナは後ろに下がりつつも、動揺を抑えようとしていた。


「……仕方ない。いくら坊主が傷を負おうと、始末する相手には変わりない」


 ヴァローナは剣を構えなおし、シュウに向かって行った。


「斬り刻む」


「そうはさせません‼」


 その時、クリムの声と共に氷の槍がヴァローナを襲った。


「先輩‼無事ですか!?」


 ルヴォを倒したクリムが、シュウの援護に来たのだ。クリムは上半身裸になったシュウを見て、うろたえていた。


「まさか……あの傷を……」


「見られたよ」


「……この状況だと、着替えが出来ません……それでも……」


「戦う。クリムと一緒にな」


 その後、クリムはシュウの横に立ち、杖を構えた。氷の槍を喰らったヴァローナは立ち上がり、クリムを睨んだ。


「あいつが賢者か……」


 クリムから発する魔力を感じ、ヴァローナはクリムが賢者であることを確信した。そして、上にいるルヴォの魔力が感じないことを知り、クリムがルヴォを倒したことも知った。


 ヴァローナは剣を構え、クリムに向かって走って行った。だが、クリムの後ろにいるシュウが銃を撃ち、攻撃の邪魔をした。


「クッ‼」


 剣を盾代わりにし、シュウが撃つ弾丸を防御していたのだが、クリムは地面魔法を使い、ヴァローナの足元を変形させた。


「何!?」


「上の奴と戦って私がばてたと思ったんですか? あの程度の敵じゃあ私は倒れませんよ」


「まだ……戦えるというわけか……」


「はい」


 その後、クリムは指から小さな光の光線を発し、ヴァローナに攻撃した。


「グフッ‼」


 小さな光の光線はヴァローナの左足の太ももに命中した。続けて、シュウが銃を撃ってヴァローナの両手を打ち抜いた。


「これで、戦うことは出来ませんね」


「俺達と一緒に来てもらおうか」


 もう戦うことは出来ない。そう察したヴァローナは観念し、二人の言う事に従った。




 その後、シュウとクリムはカラスの爪のアジトで戦ったヴァローナとルヴォ、そして二人が倒れたことを察した下っ端が外から出てきた。外にはすでにラックとシュガーが待機しており、下っ端はラックとシュガーに掴まった。


「シュウさん……あの……」


 ハーゼはタオルを羽織っているシュウに近付き、何かを聞こうとした。だが、何も言えず去って行った。シュガーはシュウに近付き、右腕を見た。


「戦っている最中にスッポンポンになったんだね」


「そう言う事言わないでください……」


 呆れたラックが、シュガーにこう言った。その時、クリムはラックとシュガーにこう聞いた。


「二人とも、先輩の腕の傷の事を知ってたんですか?」


「うん。一緒に依頼で戦ってた時にね」


「初めて見た時は驚いたよ。何であんな傷があるんだって思った」


 クリムはラックとシュガーの話を聞き、そうですかと小さく呟いた。一方では、ハーゼがシュウをずっと見ていた。それに気付いたシュウが上着を着て、ハーゼに近付いた。


「どうかしました?」


「えと……あなたの傷の事が……」


「これの事? 気にしないでください。子供の頃の傷跡なんで」


「子供の頃!? 一体何をしたんですか?」


「……何十年前の事だ、クリムがモンスターに襲われてね、俺がかばって傷を受けたんだ」


「それで……」


 会話の中、クリムがシュウの名を呼んだ。


「ごめんね、クリムが呼んでるから」


 そう言ってシュウは立ち上がり、クリムの元へ向かって走って行った。しばらくし、ハーゼは夜空の月を見ながら小さく呟いた。


「叶わなかったな……私の初恋」




 翌日。スリラータは自分の家で、ヴァローナからの連絡を待っていた。しかし、いくら待っても連絡はなかった。


「全く、何をしてるんだあいつらは……昨日の夜にハーゼを連れ去ったと下っ端からの連絡を受けて以来、何もしてこないじゃないか」


 呟きながら、口の中の飴玉をがりがり噛んでいた。しばらくし、自身が持つ携帯の着信音が響いた。急いで携帯を取り出したが、相手の電話番号は表示されなかった。無視しようとしたのだが、いくら待っても着信音は鳴りやまなかった。仕方ないと思いつつ、スリラータは電話に出た。


「もしもし?」


『コエッリオ家の屋敷へ来い。お前に伝えたいことがある』


 相手の声は聞いたことのない声だった。誰だとスリラータは聞いたのだが、相手は何も答えずに電話を切ってしまった。


「ったく……何なのだ……」


 いう事を聞かず、このまま待っていようかと思った。しかし、今の相手がハーゼ暗殺に何か関することを察しているのかと思うと、スリラータは不安になってきた。


 数分後、ハーゼは運転手に命じ、大急ぎでコエッリオ家の屋敷へ向かった。

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