賢者を襲う足技
クリムは風の魔法を使い、ルヴォに攻撃を仕掛けて行った。だが、ルヴォは横に飛んで風を回避していた。
「その程度か?」
「まだまだ‼」
クリムは両手を合わせ、巨大な魔力を発生させた。
「避けれるものなら避けてみなさい‼」
手を離すと、両手の間に巨大な風の塊が現れた。それを見たルヴォは、口笛を吹いた。
「すげぇ、やるじゃん」
「喰らえぇ‼」
巨大な風の塊は竜巻となり、ルヴォに向かって襲い掛かった。
「すげぇすげぇ。ほいっと」
ルヴォは足に魔力を纏わせ、竜巻を蹴り飛ばした。クリムは魔力を解除し、跳ね返ってきた竜巻を消した。だが、その時にルヴォが迫って来ていた。
「隙ありぃ‼」
ルヴォの足技がクリムに襲い掛かった。クリムは氷の盾を使い、ルヴォの足を防御した。
「これで防御したとでも?」
そう言うと、ルヴォは片方の足でクリムの脇腹を蹴った。
「がっ……」
脇腹を蹴られたクリムはその場でうずくまり、片膝をついた。地面に降りたルヴォは、そのままクリムに蹴り技を浴びせ始めた。
「そのまま蹴り殺してやるよ‼ 貧弱な小娘が、俺に敵うわけねーだろ‼」
しばらく蹴りをつづけ、最後にクリムを壁に向けて蹴り飛ばした。
「雑魚が。そのままくたばっちまえよ」
吹き飛んだクリムに向けて、ルヴォはこう言った。だが、落ちてきた岩がルヴォに向けて飛んできた。ルヴォは腕で岩を防御したが、岩は後から次々と飛んで来ていた。
「何だよこれ!?」
すべて防御できず、ルヴォはダメージを負った。傷だらけで担った腕の痛みを我慢しながら、ルヴォは前を睨んだ。クリムが何かをしたに違いないと、思っているからだ。
「クソガキが……まだ生きているのか」
「この程度で私を倒したと思っているんですか……愚かですね」
クリムは歩きながらルヴォに近付いてきた。この時のクリムの姿を見て、ルヴォはある事を察した。あれほど蹴り技でダメージを与えたのに、その傷がもう癒えていたのだ。
「いつの間に……」
「あの程度のダメージならすぐに回復できます。さ、今度は私の番です」
クリムはそう言うと、ルヴォを弾き飛ばした。ルヴォの目の前に見えないくらいの火の玉を発生させ、爆発を起こしたのだ。何で吹き飛ばされたのか分からないルヴォは、混乱しながら立ち上がった。
「何でだ……何をしやがった畜生‼」
「自分で考えましょうね」
その後、鋭い氷の刃がルヴォを襲った。ルヴォは攻撃を防御しながら、あの時の話を思い出していた。ボスのヴァローナはこう言っていた。ハリアの村の賢者が護衛に入ったから、依頼がきつくなったと。この言葉を思い出し、ルヴォはクリムが賢者であることを察した。
「まさか……あいつが賢者だと……」
あんな子供が賢者なわけがない。そう思ったルヴォだったが、目の前に飛んでくる光と闇の光線を見て、やっぱりあいつが賢者なのかと思った。
「がぁっ‼」
光と闇の光線はかわしたのだが、上から風の塊が落ちてきていた。
「ぎゃああああああああああああああ‼」
風に斬り刻まれ、ルヴォの体は切り傷だらけになってしまった。逃げようとしたのだが、地面が柔らかくなっているせいで、転倒してしまった。地面魔法で地面を柔らかくしたのだと、ルヴォは察した。
「これじゃあ逃げれない……」
「あなた、逃げるつもりだったんですね」
クリムがすぐ近くに来てこう言った。ルヴォは悪あがきで蹴り攻撃しようとしたのだが、クリムが足を凍らせてしまった。
「あっ……」
「不審な動きを見せたら、その足を粉砕します。凍った今なら、簡単に粉砕できますよ?」
「早く魔法を解いてくれ……」
「その前に、捕らえたハーゼ様は今どこにいるかを教えてください」
「そうしたら、魔法を解いてくれるか?」
「あなたの行動次第です」
「分かった、教えてやる。地下だ。この基地の地下に閉じ込めてある」
「教えてくれてありがとうございます」
クリムはそう言って、凍らせたルヴォの足を解凍した。その後、地下へ向かうために、先ほどの落とし穴へ向かっていた。ルヴォはその時、クリムを後ろから襲おうかと思った。しかし、それを察していたのか、振り返ったクリムは不気味な笑みを浮かべていた。きっと、後ろから襲うだろうと、察していたんだろう。そう思ったルヴォは、その場で座り込んだ。
シュウは銃を撃ちながら、ヴァローナからハーゼを遠ざけていた。
「このガキのことを心配しているのか、大丈夫だ。今すぐには始末せん」
「うさんくせーな、そのセリフ‼」
シュウはリロードをし、再び銃を構えた。だが、目の前にはヴァローナはいなかった。シュウは慌てて背を壁にやり、周囲を見回した。その時、背後から殺気を感じた。シュウはとっさに壁から離れたが、後ろにいたヴァローナの斬撃に巻き込まれてしまった。
「グゥッ‼」
「壁があると言っても、要注意だね」
後ろに下がったシュウを追い詰めるため、ヴァローナは前に踏み込んでシュウに斬撃を喰らわせた。シュウは防御をしていたのだが、そのせいで着ていた服がボロボロになってしまった。
「あ‼」
「服が斬られたことがそんなにショックかい?」
ヴァローナはからかい半分でこう言ったが、露になったシュウの右腕を見て驚いていた。シュウの上半身はそれなりに筋肉が付いていたのだが、右腕だけは違っていた。かなり深い傷跡があり、そのせいなのか少し変色していた。そして、左腕と比べ筋肉の量が違っていた。その時の姿を、牢屋にいるハーゼも目撃していた。
「な……何だその傷は……」
その傷を見て、ヴァローナはうろたえていた。




