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急展開です

ユーリ達が国王執務室に入ると、なぜか室内の空気はピリピリとしていた。

事情を知らない子供たちは揃って首を傾げる。

気まずい雰囲気を破るように口を開いたのはアロルドだった。


「先ほど、屋敷から火急の知らせがあった。その事で陛下から話しがある」


ギルロイはギョッとした。

まさか自分に話しを振られるとは思っていなかったからだ。

執務室内にいた全員の視線がギルロイに集まる。

ギルロイは覚悟を決めて話し出す。


「・・・先ほどハーバリー公爵家に、エルフリード王子からユーリ宛に贈り物が届けられたそうだ。王子の使者はわが国の貴族家の使者達の前で、隣国の名と王子からだと言って届けにきたそうだ」


ユーリ以外の子供たちはハッと息を呑む。

エドワードは顔色も悪くなってしまっていた。

ユーリとの間にあった誤解は解けたものの、王太子妃候補に復帰する事を承諾してもらっていないからだ。


「ユーリよ。昨夜、アロルドから王太子妃候補へ復帰して欲しいと話しがあったと思うが・・・その話しを受けてはもらえぬか?」


あまりの急展開にユーリは目に見えて動揺していた。

それもそうだろう。

屋敷に縁談の申し入れの使者が殺到している最中に、昨日初めて会った人物からの贈り物。

王宮にいる間は、その人物と会わないようにと細心の注意を払っていたのに、外堀から攻められている状態である。

自分の気持ちも定かではない状態で、自分の周りが目まぐるしく変化している。


「えっと・・・なぜ急にそんなお話しになるのでしょうか?」


ユーリは何とか言葉を発した。

すると、今度は母であるセリスが口を開く。


「エルフリード王子が自身の名を出して、あなたに贈り物を贈ってきている。貴族家の使者達はそれを、王子からの求婚と判断するでしょう。この国に王女はいません。王妹である私の娘で、公爵令嬢であるあなたは他国の王子との婚姻が可能です。カルディール王国から正式に婚姻の申し入れが届いた場合、お兄様は国王として判断しなければなりません。アロルド様がどんなに嫌がっても、私が反対しても、議会でユーリを隣国へ嫁がせるべきと判断されたら、あなたは隣国へと嫁がなければならなくなります。しかし、エドワードの婚約者となればお断りする事が可能なのですよ。」


ユーリ以外のメンツは、ユーリが『全能者』である事を知っている。

そのため、何としても国内に留めておきたい。

特に、親達は他の貴族家へユーリを嫁がせる訳にはいかなかった。


「・・・お返事は明日までお待ちいただけませんか?あまりにも急な事ですぐにお返事できません・・・」


ユーリは、そう口にするのが精一杯だった。

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