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転生人生はマイペースで悠々自適  作者: もにゃむ


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居場所を求めて 1

私の名前が「アリサ」だったことは覚えてる。


でもこ(・)の(・)世(・)界(・)で(・)の(・)私(・)の(・)名(・)前(・)は(・)憶(・)え(・)て(・)な(・)い(・)。


憶えていることの少ない私には、「アリサ」という名前は特別で大切なものなの。


だから私はいつでもどこでも「アリサ」ですって名乗ってたんだけど、人間は誰も私のことを「アリサ」って呼んでくれない。


みんな私のことを「アリーシャ」とか「アリー」って呼ぶの。


「アリサ」と「アリーシャ」……似てはいるけど、この体の名前が「アリーシャ」らしいから、「アリサ」と呼んでもらえないのはしょうがないのかな。


いつの日か、大切な人ができたら、「アリサ」って呼んでくれるかな。




私は転生者だったみたいだ。


自分が転生者だと唐突に理解した時、私は1人だった。

1人で馬車が時々通る、舗(・)装(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)道を歩いてた。


この世界で生きてきた記憶は、かすかにある。

この世界の私は家族を失い、大(・)き(・)な(・)町(・)に住むおじいちゃんとおばあちゃんの庇護を求めるために旅をしてる途中……みたい。


なぜ家族を失ったのか、思い出せない。

お父さんとお母さんのことも、兄弟姉妹がいたかも、思い出せない。


家族を一度に失った悲しみが大きすぎて忘れちゃったのかな?

それとも心が壊れないように、記憶が消えちゃったのかな?


私は中身が半分くらい入っている、自分が抱えてなんとか持って歩ける大きさの粗末な巾着袋だけを肩から下げて、住んでいたところから離れた……らしい。

逃げてきたっぽい

目的地はお母さんのお父さんとお母さんの家みたいなんだけど、私のお父さんとお母さんは結婚を反対されて駆け落ちしたから、おじいちゃんとおばあちゃんとは一切連絡を取っていないって、お母さんに聞いた記憶が……ある気がする。


受け入れてくれる確率は限りなく低いんだろうなと、前世の記憶が朧げにある今なら分かる。

それでも歩き続けていたのは、どこにも居場所がなかったからみたい。

どうして居場所がないのか具体的なことは覚えてないけど、あの場所に残ってちゃダメだったってことは分かってる……みたいなんだよね。


思い出した前世の記憶は、こちらも朧げで断片的なものだった。


前世ではお父さんとお母さん、お姉ちゃん2人とお兄ちゃん1人と私の6人家族だった。

でも自分の「アリサ」って名前以外、苗字も家族の名前も顔も年も覚えてない。

ただ前世の大きいお姉ちゃんとお兄ちゃんが優秀で、小さいお姉ちゃんがみんなが上の2人を褒めるのが気に入らなくて、少しの努力もしようとしないのに比べられることには腹を立てて、何もかもが気に入らないといろいろやらかして嫌われまくっていたことや、末っ子だった私は、そんな小さなお姉ちゃんの鬱憤のはけ口にされていて、辛くて悲しい思いをいっぱいしたことは覚えてる。

覚えてるのは明確な出来事じゃなくて、起こったこととかがなんとなくとそれに対する自分が確かに抱いた感情、心がどれだけ傷つけられたか、だけなんだけど。


大きいお姉ちゃんとお兄ちゃんを教師に、小さいお姉ちゃんを反面教師にして、打たれてしまう出る杭にならないように、普通に平凡に目立たないように立ち回ることを心がけて生きてたことは覚えてる。


学校では目立たないように成績は平均を目指し。


体力測定では思いっきり手を抜き。


部活動は長い学校生活の間ずっと手芸部で、黙々と手を動かし続けた。


その影響なのかな。

この世界の私は小さくて畑仕事や力仕事は手伝えなかったけど、繕い物をしたり、蔦で籠を編んだり、捨てるしかない布類を縫い合わせて小物を作って、行商人のおじさんに食べ物と物々交換してもらっていた、みたい。



過去の記憶を思い出すことに集中してしまい、まわりの音も景色も意識から外れてしまっていた。

すぐ近くで馬車が止まった音がして、我に返った。


(あ、ぼんやりしてて馬車が近づいて来たのに避けなかったから、走行の邪魔になってるんだ)


私は慌てて道の横の草むらに走り込み、馬車に向かって頭を下げた。


「邪魔してごめんなさい!」

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