続く死闘
今回も主人公不在なので3人称です主人公ェ
トトが戦っている横では、エリアルとナイフが大槌を持った盗賊と戦っていた
と言っても、両隣が死闘を切り広げているのに対して、こちらはひどく静かな戦いだった
エリアルとナイフが仕掛けて、槌を持った男がその武器を払い、距離を取らせる
お互いに致命となる一撃どころか、深い傷一つつけることなく戦いは推移していた
「随分とやる気がないっすね」その盗賊の態度に違和感を覚えたのか、ナイフが問いかける
確かに武器の相性では自分達が勝っているがここまで容易に動きを封じられるとは思っていなかったし、実際相手は余裕をもってこちらと対峙していると感じたが故の違和感だった
「俺に言わせりゃこんな状況で傷を負ってまで戦ってる両隣が馬鹿なだけだ」
やれやれと呆れを多く含んだ溜息をついてから、タマモと盗賊の首領が戦う方を見る
「もう少しすれば、うちのお頭があの女を無力化してこっちに合流する、そうすりゃお前等に勝ち目はねえ
、それを待てばいいだけだってのに、わざわざ敵に隙を見せてぶん殴られるなんて馬鹿の所業だ」
その言葉の直後に「ガハッ」と言う男のくぐもった声が響く
ナイフがその音がした方向を確認すると、銀弧が対峙ている盗賊を殴り飛ばした所だった
「あの嬢ちゃん達もつええみてえだが、頭に勝てるほどじゃない、つまり、時間がないのはお前達の方なのさ、あの女が頭に負ける前に合流して頭に挑まないといけねえんだからな」
だから、俺はこうやって時間を稼ぐだけでいい、それだけでお前たちの負けは決まるのだから、という盗賊の男に、エリアルは余裕たっぷりと言った態度で反論する
「それはどうかな、むしろ、君達の頭が負ける可能性の方が高いと私は思っているがね」
「それは身内贔屓ってやつだ、あの女が頭に勝てる訳がない、挑発にしてももう少しまともな事を言うんだな」
エリアルの発言を鼻で笑い、やる気なさそうに大槌を構えなおすと
「まぁ、頭が勝つ前は遊んでやるよ」と言い、ナイフとエリアルに向き直るのだった
時は僅かに遡り、銀弧と金弧は長剣を持った盗賊と戦い始めたばかりの時点へと巻き戻る
頭を除いた中でもっともLVが高いのは彼女達が戦っている長剣を持った男だった、その為、銀弧と金弧の二人がこの男に対峙していたのだが
「金弧、この人弱いね」「そうだね、銀弧、さっき一人で向かってきた盗賊の方が強いね」
その高いLVに反して男の技量は高いとは言えなかった
長剣の男のLVは15で頭の男に次いで高い、にも関わらず、銀弧には他の3組の戦闘を眺める余裕すらあった
トト、十色組が対峙している相手はLVと技量は同じ位で、その為、立ち回りでトト達が上回り圧倒とまでは言わないが、余裕をもって対処できていた
エリアル、ナイフ組の相手は最初から相性の悪さを理解し、時間稼ぎに徹するつもりのようだ、と言っても、もし油断するようなら、トト組が戦っている盗賊と入れ替わろうとしているので、油断はできないが
トトが優位に立っている点は相手が短剣を使っているからという点が大きい
短剣では、盾越しにダメージを与える事は難しいが、もし、大槌使いが相手ならこんなに余裕をもって戦う事はできなかっただろうし、同じ短剣使いが相手なら、エリアルももっと傷が多くなっていたはずだ
つまり、この二組の優勢は一歩間違えばすぐに劣勢に変わってもおかしくないのだ
対して銀弧が対峙している相手はというと、LV任せと言った戦い方だった
モンスター相手にするかのように、全力で武器を振るうだけだ、フェイント等と言った技術を使う事はほとんどないし、使ったとしてもあまりにも幼稚だった
そんな相手を今だに銀弧が倒しきれないのは、ステータスのずれが原因だった
彼女の本体のLVは520、分け身とは本体の戦闘経験を元に作られるために、この低LVの肉体と、元の知識、さらに身長やリーチの違い等に大きなギャップを感じていた
普段なら届く距離で攻撃が当たらない、普段なら痛打になる距離での攻撃が浅く入る、普段なら回避できる攻撃が回避しきれない
その誤差が自分よりもLVの高い相手と戦っている現在攻めきれないという形で表れていた
また金弧にしても、タマモと合流する前に戦った盗賊との戦いでMPを多く使ってしまい、現在十分な援護ができるというほどのMPの余裕はなかった
「「なさけない」」幼い少女が出すには不似合いな落胆したような声を上げる
この言葉は彼女達が自分自身に対して上げた声だったが、対峙している相手はそうは思わなかった
「んだと、クソガキ、調子に乗ってんじゃねえぞ」
二人と対峙している男は、この盗賊の頭の弟だった
優れた兄といつも比較され、また盗賊団の仲間達にも影で舐められ、馬鹿にされている事は知っていた
その為、人が吐いた言葉を全て自分に対する、言葉だと勘違いしている部分があった、それが悪い意味を持つ言葉であればなおさらだ
「ぶっ殺す!」それまでも単純だった動きを直線的にして、ただ、相手を殺すために体重を乗せて剣を振るう
一瞬、金弧と銀弧は何故激高したのかはわからなかったが、そんな隙を逃すほどこの二人は甘くはなかった
振り下ろされた剣をよけると、県はガギンという音を立てて洞窟の地面を叩いた
その時に腕の筋でも痛めたのか、苦悶の声を上げると、自分の懐へと入り込んでいる銀弧に気付き、慌ててガードをしようとするも
「やああ!」と言う声とともに放たれた銀弧の拳によってその心臓を撃ち抜かれる
声にできない苦悶の声を上げて吹っ飛ぶ盗賊の手からは元々地面を殴ったときに握りの甘かった剣が手放され、そのまま意識を失った
「よし、これで!」「他の人の手助けにいけます!」
銀弧と金弧が隣で戦っているエリアル達を助けようとすると、少し離れた所でどさりと何かが倒れる音がして
「なんじゃ、わらわよりも早く倒せたのか、やるではないか」と傷一つ負っていないタマモが現れるのだった
次回、タマモVS盗賊頭戦




