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決闘

『ったく…。こんな暗い部屋に座って夢中になってたら、絶対に見失うと思うんだが……』



「うるさい。映画に集中できない」



凜はもう正直言って使えない。


え?映画を撮影したりするのは違法?


何を言うかと思えば。


大丈夫。


凜は眼鏡を外し、音は消音モードにして膝において見ているので、俺が見ているのは、凜が映画に夢中になっている顔だけだ。


あと、凜が喋った言葉がわかるのは、俺が読唇術を使うことができ、凜は俺の言葉が聞こえるようにちゃんとなっている。



『本当に…春菜のことを言わなくてもいいのか?』



「〈それはもう少し後で〉」



凜はそう言っていた。


面倒くさい……。


しかも、凜が肘掛けにつけている手に触ろうとしてる破廉恥な輩もいるんだが……。



『凜ちゃん。手、触ろ……』



ダメだ。


完全に集中モードに入った。


映画を見始めて1時間と少し。


そろそろ映画も一番盛り上がるシーンに差し掛かったのだろうか。


映画を見ている凜はともかく、一時間ずっと一人の人間の顔を下からのアングルで見させられる自分は、たまったもんじゃなかった。






『お前の腕とか手とか、肩まで触られてたのに、全然気づいてなかったろ?』



「だって…一生懸命に暗号を解いてるところとか、本当に格好良かったんだもん……」



『いや、まぁ知らないんだけどな……』



映画の内容とか、ただのネタバレじゃないか……。


まぁ、見る予定はないからいいんだが。



『親分に話すっていうことは結局どうなったんだ…?』



「だ・か・ら。そのうち話すから。待ってよ」



「美結。さっきから何ブツブツ言ってるんだよ」



「え…いや……。何も……」



「じゃあ。次はどこに行く?」



「腹減ったから、店に行かねぇ?


そーだ。前に潰した大富豪の土地に建てたデパートにでも行かねぇか?」



潰した?大富豪?


間違いなく、春菜の家のことだ……。



「その大富豪、もしかして、御堂って名字じゃない?」



「………なぜ、お前がそんなこと……」



図星らしい。


親分の目が見開く。


強く、支配力を轟かせて……。



「春菜に聞いた……。あんた、何でそんなことするのよ?」



「あんた?口の聞き方に注意しろよ、美結!!てめぇ……っ!」



「あんたたちが、岡さんと御堂さんに与えた、屈辱と負債は、異常な額で、とても酷いことよね……?」



『どちらも、自己破産していて、負債額がどちらも数千万単位……。


それが故意で行われたとしたら……、明らかに社会的な問題のはずだ』



「なんだ?男の声!?」



「あんたたち………。この罪を認めるつもりはある?


あんたたちがしたことは、明らかに違法で、法律で裁くことも容易よ……。


もっとも、その前に、春菜に犯した、恐喝とかを取り締まることが名目だけどね」



春菜は、怒りを込めた口調で強く言い放つ。


俺からは見えないが、明らかにその顔は殺気だっていることだろう。



「そうか。了解了解。お前、ただじゃ済まんぞ。俺らに戦いを挑んで勝ったやつらなんぞ、今までにいなかったからな。


それも、お前よりも遥かに強そうなやつが、だ。お前みたいに華奢な体の女が勝てるほど、俺らも弱くねぇ。


やっちまえ!てめぇら!!!」



「「「「うおぉぉぉぉぉ!!!」」」」



「とか言いながら、何人がかりで来るのよ。私は華奢な女の子なのに……」



「うがっ!!」



「うげ!!」



「ぐわっ!!」



『華奢な女の子は、自分よりも遥かに強そうな男に、ペンに似せて作ったスタンガンを当てて倒したりはしないけどな』



現在凜が使っているのは、ボールペンを改造した武器だ。


簡単に言えば、ボールペンのペン先から電気が流れる仕組みになっていて、ボールペンで文字を書く要領で、カチっと押すと、電気が流れる。


この電流は人間を気絶させることが出来るくらい強力なため、相当なときでないと使わない。



「さぁ……降参して、あんたたちの親玉を呼んだ方が得策よ?」



「俺たちを倒したところで、そんなことが出来ると?」



「当たり前よ。私たちに隠し事は通用しないわ!!」



「だったら、死ねぇっ!」



ナイフを振り回してきた。


果物を切ったりするものとはほど遠い、歴とした凶器のナイフだ。



「そんなもの、通じると思う?」



「なっ!?」



凜はナイフを瞬時にかわすと、懐に入り込む。



「あんたには、個人的な恨みがあるから」



そういうと、右足の強烈な蹴りを加えた。



「ぐげ……っ!!」



その声と共に、巨体が崩れ落ちた。



「さ〜て。ファーストステージはクリアかな?」



『次は、本物のヤクザだぞ?大丈夫か?』



「やらなくちゃしょうがないでしょ?」



そのときの凜の声は、かなり機嫌がよかったことに、俺は背中が寒くなった。


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