16_入学式
「わー、オープニングと同じだ!」
真新しい制服身を包んだサーシャは校門を前に歓声を上げる。
その様子を同じ新入生達が訝し気に見ながら横を通り過ぎていった。
入寮時に貰った資料を手に、サーシャはきょろきょろと周り見ながら校内に入る。
王立学園は一つの都市となっており、一般寮、高位貴族向けの寮は学校の外の街中にある。
周囲には学園の職員向けの建物や住人向けのお店などがあり、保護者や見学者向けの宿もあった。
学園は周囲を塀で囲み、特待クラスの寮はその中で一般クラスでは入れない場所と建てられている。
入り口も別だ。
「寮はゲーム画面で見たとおりだったけど・・・
エリスとアリサは居なかったな。
ポリーは居たのに何でだろう。」
伯爵家出身のセツは元々高位貴族向けの寮で仲良くなると遊びに行ける。
ゲームで高位貴族寮に入る唯一の方法だった。
※このゲームではヒロインがヒーローの部屋に行くことは無い。
ナウシカアの部屋は特待クラスなので同じ特待クラスになるまで部屋に行くことは出来なかった。
ゲームで見たナウシカアの豪勢な部屋を思い出しこっちも同じなのかなと考える。
さて、エリスとアリサだが、一般寮は広いし3学年共通なので人数も多い。
単に時間がずれて会わなかっただけかもしれないと思って講堂に向かう。
クラス分けは講堂入場時に受けとる資料に書いてあると知らされていた。
講堂前の淑女科の受付前に行って名前を名乗り、証明書を見せる。
「サーシャ・ネロさんですね。淑女科2組です。座る場所は・・・」
講堂に入ると騎士科の席でポリーとクレスが一緒に居るのが見えた。
近くにスティーブンの姿もある。
「騎士科は問題ない・・・」
文官科の前を移動する。
「文官科は・・・セツは居る、ボアも居る・・・エリスとトレイシーは居ない・・・何で。」
淑女科の席にやってきた。
「やっぱり、アリサは居ない・・・どういうこと?」
サーシャは周囲をきょろきょろ見回し講堂内をうろうろしていたところ、係員に席に付くように言われた。
入学式の開始時間は近付いてきている。
アリサ、エリス、トレイシーの姿を見つけることは出来なかった。
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入学式の三日前、特待クラスの寮にやってきたエリスはラウンジを見て固まった。
ナウシカアが居るのは分かるけど何でアリサが居るの?
アリサの方も気が付いた。
一瞬驚いたものの、にこやかに声を掛けてくる。
「初めまして、私はアリサ・マイルズ、お名前を伺っても?」
エリスは慌てて礼をした。
「初めましてマイルズ嬢、エリス・ファティマと申します。」
隣に居たナウシカアも名乗る。
「初めまして、ファティマ嬢、私はナウシカア・ジ・ドロテアですわ。」
「よろしかったら一緒にお茶でも如何」
と言われてエリスは二人の座るテーブルに腰を下ろした。
特待クラスは男子率が高く女子は少ない。
また、同世代で特待クラスに来そうな子は会ったことは無くても名前位は知っている。
そういう意味でエリスがナウシカアやアリサのことを知っていてもおかしくはなく、二人もエリスのことを知っていた。
その席には他の特待クラスの女子が集まって自己紹介を始めた。
暫く会話してお互い名前で呼び合う許可を貰う。
どうやら今年の女子は6人らしい。
特待クラスは1学年で一クラス、30人なので女子は2割といったところか。
サーシャは居ないので特待クラスにはなれなかったのだろう。
子爵家出身はエリスとアリサの二人のみ、残りは伯爵家1人、侯爵家3人、公爵家、辺境伯家はいない。
会話の終わり、侯爵家の娘が爆弾を落とした。
「そうそう、新入生代表は今年も王族ですわ。」
「えっ?」
エリスの様子にナウシカアが口を開いた。
「第二王子のアーサー様ですわ。」
「あの、外国に留学していらっしゃいませんでした?」
ああと残りの者が納得したように頷いた。
「エリス様は地方の子爵家の方でしたね。先日戻って来られたのですよ。」
「アーサー様が留学していたことを知っているなんて、流石学問で知られるファティマ家の方ですね。」
食事の時間になり、食堂に向かう際、アリサは言った。
「エリス様。よろしかった食後に部屋に来ませんか。」
「あら」と言って同席したそうなナウシカアに同じ子爵家ですからアリサは笑って断った。
エリスはアリサが何を話そうとしているのか分かった気がした。
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特待クラスは高位貴族が多く、人数も少ないこともあって1階ではなく2階に席が用意される。
そこから1階を眺めて周囲をキョロキョロと眺めてうろつくサーシャの姿が見えた。
「サーシャさんも同じみたいですね。」
王国内にある学園はここだけではない。
そもそもこの学園都市にある学校は、王立学園だけではない。
執事や侍女を教育ずる学校があるし、騎士や兵士を教育する学校もある。
地方を見れば、領主となるものが通う総合学校や騎士学校、従者向け、淑女向けの学校が東西南北に必ず一つはある。
なかには専門性の高い商売をする人向けの学校はアリサの住むの街の近くにある。
音楽や様々な技術を学ぶ学校はそれが盛んな街の近くある。
そんな中でわざわざこの王立学園を選ぶのは王宮勤めの騎士や文官になりたいものか高位貴族の子女である。
男爵家のそれも跡取りではない令嬢が通う学校ではない。
その上、見たところ座る席は淑女科。
まずますあり得ない。
そこで学ぶ知識は男爵家の令嬢が必要とするものではないからだ。
「多分特待クラスに入るには教養が足りないから選んだんだろうけど。」
「クラスで間違いなく浮くわ。」
「そうね。」
淑女科は高位貴族の女性が結婚先で女主人として家を切り盛りするための知識を学ぶ場。
伯爵家に嫁ぐこともある子爵家ならまだしも男爵家はまず縁が無い。
生きていくうえで必要のない知識を学ぶなどと言うことが許されるのはゲームの中だけ。
どうすると目線でアリサに問い掛ける。
「彼女自身が選んだ道よ。私達が何かいう事ではないわ。」
「そうね」と頷いて自分の席に戻る。
入学式が始まった。
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入学式では第2王子のアーサーが抱負を語り、在校生代表として第1王子のピエールが答辞を返す。
雛段には第4王女のマリアが座っている。
サーシャはその様子に一人首を捻り、声に出さずに呟いた。
「なんで、アーサーがこっちにいるの?
確か、外国に留学していたんじゃなかったけ?
それにあのお姫様は誰?」
ゲームでは答辞を述べたピエールの隣にはイーダが座っていた。
が、彼女とは色彩が違う。
「何か変だ。ここ、本当に「大樹の元に」の世界?」
入学式が終わって講堂を出るサーシャの呟きは誰の耳にも聞かれることなく、消えていった。
閲覧、有難うございます。
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サーシャは騎士科や文官科ならそこまで目立つことはありません。
彼女の基本ステータスを知るエリスやアリサからすればあり得ない・・・です。
なお、エリスやアリサは知っていましたがサーシャの暮らしていたネロ領では第一王子の誕生パーティでの出来事も第3王女追放の話も伝わってません。




