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シナリオ時代劇 千鳥鉄の女  作者: カキヒト・シラズ


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10/11

第十場(岩槻城・屋外)

登場人物

 蘭

 忍者1=三郎

 十兵衛

*****

 近習侍1~4


〇中奥

 フェードイン。

 柿色の忍者装束の蘭、天井から床に飛び降りる。

 蘭、松五郎の死体に近づき、首から流れる血を触ってみる。

 

 蘭「(つぶやくように)まだ暖かいわ。敵はまだ遠くへは行ってないはず」


 蘭、うつ伏せになり、畳に耳を当てる。


 蘭「足落がするわ。屋根の上かしら」


 乱暴に襖ふすまを開け、数人の近習侍が抜刀して入ってくる。


 近習侍1「曲者、出会え」


 蘭、飛び上がって天井裏に身を隠す。


〇屋根の上

 月明りの中、蘭、屋根の上を走る。

 能面をかぶった忍者、三郎が前方を走っている。

 蘭、千鳥鉄の分銅を振り回し、投げる。

 分銅鎖が三郎の足にからみつく。


 三郎「クワー」


 三郎、屋根から転倒して中庭に落ちる。


〇中庭

 三郎、起き上がると千鳥鉄の分銅を振り回した蘭が対峙している。

 蘭、分銅を投げる。

 三郎の能面が割れ、三郎の顔が現れる。


 蘭「まだ子供?」


 三郎、懐から吹矢を取り出し、矢を吹く。

 蘭、矢が飛んできたので顔をわずかに傾けるが、口を覆っていた黒い六尺手ぬぐいが二つに切れて地面に落ちる。

 蘭の顔が露わになる。


 三郎「(吹矢をくわえたまま、くぐもった声で)お前は......あのときのクノイチか」


 三郎、口に吹矢をくわえたまま、背中の刀を抜く。

 蘭、分銅を投げ、刀に鎖を絡ませ、鎖を引く。

 すると三郎は刀を離さず、跳躍して刀と一緒に蘭の方へ飛んで来る。 

 三郎、蘭の体に飛びつく。

 蘭は仰向けに倒れ、その上に三郎が馬乗りになる。

 三郎は両手で蘭の両手首を抑える。口には吹矢をくわえている。

 

 三郎「(吹矢をくわえたまま、くぐもった声で)死んでもらうぞ」


 蘭、眼をつぶる。

 しばらくして、吹矢が蘭の顔に落ち、蘭は眼を開ける。

 三郎の顔がクローズアップ。額に手裏剣が刺さり、血が垂れている。

 蘭が体を起こそうとすると、三郎の死体はゆっくり横に崩れ落ちる。


 (十兵衛の声)「この程度の忍者にやられるとは、お前もまだまだ修行が足りぬ」


 蘭、気が付くと灰色の忍者装束に身を包んだ十兵衛がそばに佇んでいる。

 蘭はやおら立ち上がり、千鳥鉄を急いで拾って十兵衛に身構える。


 十兵衛「待て、お蘭。(灰色の頭巾を取りながら)俺だ。十兵衛だ」

 蘭「兄上、どうしてここへ」

 十兵衛「能面党は必ず裏切り者の松五郎を殺しに来る。それを見込んで松五郎を泳がせておいたのだ」

 蘭「じゃあ能面党の忍者は、これで全部始末したの?」

 十兵衛「いや、松五郎の話によれば、能面党の忍者は全国にまだたくさんいる。われら柳生家と能面党の戦いはこれからが本番だ」

 蘭「これからが本番?」

 十兵衛「そうだ。お蘭、ここでお別れだ。これから武者修行者に扮して諸国行脚の旅に出る。みなによろしく言ってくれ」

 蘭「兄上、待って」


 十兵衛、獣のような身のこなしで壁を登り、屋根伝いに走り去って行く。

 満月を背景に十兵衛が空中回転するシルエット。


(つづく)

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