第1話 初めての相棒
その日、村は滅びた。モンスターが大量に攻め込んできたからだ。その村には、屈強な戦士が何人も居たのだが、モンスターの数が多すぎた。
この世界にはモンスターが多数存在する。スライム種から最強と呼ばれるドラゴン種まで様々だ。そのモンスターを狩る冒険者や騎士団も存在する。そのほとんどが特殊な能力を持っていて、モンスター討伐をしている。ドラゴンを狩れる冒険者や騎士団はほぼ存在しないが、昔は居たという。
青年の名前はエルク。16歳で、辺境の村で産まれ育ち、何不自由無く育ってきた。かなりのんびりとした性格をしていて、少し怒りっぽいところがあるが、基本的には温厚である。そして滅びた村の生き残りだ。
なぜ生きているのかというと両親と喧嘩し、森に行っていたからである。森にはモンスターが沢山居るが、なぜかエルクに近づいて来ることは無かった。そのおかげで何日も森で過ごすことができたが、村が滅びたことをエルクはまだ知らない。
村が滅びてから数日。
モンスターが周辺の村に散ったことにより、多くのモンスターが狩られたがついにエルクの前にモンスターが現れる。
エルクは人間の中でも弱いが、珍しい能力を持っている。
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エルク 16歳 人間
レベル:2
HP :20/20
MP :15/15
攻撃力:10
守備力:5
素早さ:7
魔法 テイム
能力 憤怒 強心 植物鑑定 魔物鑑定
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憤怒 七つの大罪の内の一つ。全ステータスを何倍にも増加させる。しかし、強い精神力を持っていなければ理性を失い暴走に至る。
強心 様々な状態異常の抵抗力を高める。
植物鑑定 果物や薬草など植物を識別することができる。
魔物鑑定 動物やモンスターなどを識別することができる。
テイム魔法 特定の条件をクリアするとモンスター、動物を仲間にすることができる。
珍しい能力である「憤怒」。発動条件がいまいち分からず、発動しても暴走してしまうことがほとんどだが、エルクの持つ「強心」の能力によって暴走することはない。
「おわあああああああ!」
エルクは叫ぶ
そう、目の前に獲物を銜えたモンスターが居るからだ。
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ウルフ モンスター
レベル:1
HP :200/200
MP :50 /50
攻撃力:100
守備力:78
素早さ:200
魔法 風
能力 強脚 統率 自己治癒
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強脚 自身の脚力を1.5倍にする。
統率 周りとの連携が取りやすくなる。
自己治癒 自然に傷が治りHPが徐々に回復する。
モンスターは強い。
人間と同じように個体差があるが、基本的に人間よりも強い。そしてエルクの前に現れたウルフは同じウルフの中でも特に強い個体であることが、エルクには感覚的に分かっていた。
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1年前エルクが両親と喧嘩をし、森に逃げ込んだときのことであった。
エルクは走っているうちに森の奥まで進んでしまって、目の前には瀕死のレッサーウルフが3匹居た。エルクは2匹を狩った。なぜ逃げなかったのか。それはエルクが「憤怒」により暴走していたからだ。
3匹の内2匹狩ったところで、暴走が治まり正気に戻ったエルクは目の前の光景に驚いていた。レッサーウルフが2匹死んでいた。心臓の部分から血が溢れ出している。その傷は自分がやったことであると、そしてまた驚くことになる。
3匹目が動き始めたのだ。
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レッサーウルフ モンスター
レベル:2
HP :8/20
MP :5/5
攻撃力:8
守備力:5
素早さ:12
魔法 無
能力 自己治癒
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瀕死になっていたはずのレッサーウルフは傷が治り、徐々に体力が回復しているように思えた。エルクは逃げ出した。村へ向かってできるだけ早く逃げ出した。持っていた荷物を捨てて逃げた。一目散に逃げた。逃げているうちに家へ着き、倒れるように眠った。
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そして目の前に、今までの人生で最大の恐怖がいる。こいつからはどうあがいても、逃げられない。エルクは死を覚悟した。
そのときウルフは意外な行動をした。
レッサーラビットをエルクの目の前に置いたのだ。
「なんだ・・・これ・・・」
ウルフはそのまま村のある場所の反対側の森の中へ消えていった。
「俺にくれたのか・・・?」
エルクは理解ができなかった。
「とにかくここを離れよう」
エルクはまたあのウルフに遭遇しないためにレッサーラビットを置いて村に向かって走り出した。
しかし、また出会ってしまった。ウルフだ。村とは反対に行ったはずなのに、村の方からウルフはやってきた。
「なんで・・・」
回り込まれた。監視されている。逃げられない。
エルクは混乱した。
ウルフはまた意外な行動をする。レッサーラビットをまたエルクの目の前に置いた。
エルクはこのウルフの行動によってあることを思いつく。
「テイム」だ。人間に懐くモンスターはテイムしやすいとお爺ちゃんが言っていた。
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昔、お爺ちゃんと一緒に森へ行った際にお爺ちゃんが使った魔法
「テイムなんて簡単じゃ! 仲良くするだけじゃ!」
「どうやって仲良くするのさ~」
「テキトーじゃ! 後はこうするだけじゃ!」
そう言ってお爺ちゃんは手のひらをモンスターに向け
「ほぉおりゃ~」
と言いながら、手のひらから白いレーザーのようなビームのような光線を放った。当たったモンスターは動きを止めた。少しするとモンスターはお爺ちゃんになついているかのように、お爺ちゃんの周りをうろうろとし始めた。
「成功じゃな!」
「どうなったの?」
「儂の仲間になったんじゃ」
「なにそれ! すごい!! 教えて!!!」
「な~に簡単じゃ」
それから少しだけお爺ちゃんにテイム魔法を教えてもらう事になった。
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ぎこちないができるようになったテイム魔法を今、目の前のウルフに放つ。
ウルフは動きを止めた。
そして
『なんだ今のは・・・』
「え?」
エルクは確かに声を聞いた。しかし、周りに人は居ない。
『おい!』
「え?」
エルクは声のする方向を向いた。そうウルフだ。
『何をした!』
「声が・・・聞こえる!?」
『なに? 言葉が分かるだと?』
「これが・・・テイム魔法か・・・!!」
『ふむ、確かにお主と何か繋がりを感じるな』
「これからよろしく! ウル!」
『ぬ!? 力が湧いてきたぞ?』
「え?」
エルクは改めて鑑定してみた。
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ウル 従魔 銀狼
主 :エルク
レベル:1
HP :3200/3200
MP :1200/1200
攻撃力:1500
守備力:900
素早さ:2000
魔法 風 光 闇
能力 感知 威嚇 威圧 覇気 連携 怪力 強脚 統率 自己治癒
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「ええええ!!」
『どうした!?』
「めちゃくちゃ強くなってるよ!! 体格もさっきと変わってるし!!」
『ふむ。これは面白いな!』
「あ! これがお爺ちゃんが言ってたやつか!」
『ぬ? なんだ?』
「仲間になったモンスターに名前を付けると良いことがあるって」
『なるほどな。お主のおかげで強くなったということか。ウルという名、貰っておこう。とりあえず、それを食うといい。』
「僕の名前はエルクだよ! お主じゃないよ!!」
『すまなかったな。とりあえずエルクよ、そのウサギを食うといい美味だぞ!』
「やっぱり、僕にくれようとしてたんだね。どうしてそんなことを?」
『エルクには恩があったからな、それを返そうと思ってな。』
「恩? 何のこと?」
『忘れたのか?! 昔助けられたのだがな』
「え? あ!! もしかして! 瀕死で倒れてたレッサーウルフ!?」
『覚えておったか、同属喰いと争っていてな、流石に1対2はきつくて無理かと思った時にエルクが助けてくれたのだ。あの時は助かったぞ!もっていた袋の中の水を飲んだらすぐに体力が回復してな!』
「あ~ポーション入れてたかもな~」
『それからエルクに恩を返そうと狩りをしながらずっと待っておったのだがな。なかなか見つからなくてな。今になってやっと見つけたと思ってウサギを置いてやったというのに、持ち帰りもせずその場に置いていくとはな。』
「襲われると思ったからね~」
『恩を仇で返すと思うか!!』
「そんなの分からないよ!」
『ぬ!? まぁいいとりあえず食うと良い』
「生肉は食べられないよ。今から僕の村に帰るから一緒に行こ~う!」
そう、まだエルクは知らない。
もう既に村は滅びている。
『行かぬほうが良いぞ』
「ん? そろそろ帰らないと父さんに怒られちゃうよ!とにかく行くよ!!」
『ぬぅ』
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そして、森を抜けたエルクは目の前の光景に絶望した。
「なんで・・・なにが・・・」
『モンスターの大移動だ』
エルクでも聞いたことがある。「モンスターの大移動」数多くのモンスターが一斉に棲み処を変えるものだ。極稀に突然起こるそれはいつどこで起こるのか予想ができない。モンスターの大移動で滅びた村は数え切れない。
「父さん! 母さん! お爺ちゃん! どこ!!」
『妙だな』
「ウル!父さん見つけたの!?」
『違う。死体がどこにも無いのだ。それに血も。』
「え・・・? 本当だ。壊れてる家はあるけど、血の匂いもしない。」
『何が起きたのだ?』
「分からない。でも、父さん、母さん、お爺ちゃんは生きてるかもしれない!」
『しかし、この辺に人間の居る気配は全く無いぞ。生きているとしてもどこに行ったか。』
「分からない。でも、生きているかもしれないってことだけでも良かった。」
『ふむ。これからどうする?』
「探しにいこう。ついでに、仲間も増やそう!」
『ほう。面白そうだな。着いていくとしよう』
そして、エルクとウルの旅は始まる。
エルクは気づいていないことが一つあった。
ウルを仲間にしたときに自身の能力が格段に上がったことに。
読んでいただきありがとうございます!
お手数でなければ感想等頂ければ嬉しいです!
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エルク 16歳 人間
レベル:2
HP :250/250
MP :300/300
攻撃力:50
守備力:50
素早さ:70
魔法 テイム
能力 強心 共有 憤怒 連携 魔法抵抗 植物鑑定 魔物鑑定
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「」 この括弧は普通に喋っているときです。
『』 この括弧は声に出さずに会話しているときです。




