最終章ーアナザー・ゼット・ストライカーH゛ー(3)
俺は幾度かの攻撃を与え続けるが、潰せない。
奴めーー劣勢と見せかけてこちらの消耗と体力切れを狙ってやがる。だがーー!
「士亜!」
俺は背後に声を飛ばす。
「ーーっ、俺?」
肩で息をしながら困惑する、過去の俺。
「ブラッド・タブレットをーー寄越せ! 奴を倒しきる!」
自前の物は、後少しだ。此処は一気にーー強襲して破壊する!
「何故、それをーー」
「俺に託せ! 俺の力は、お前のものだ!」
「あぁーー!」
背後の俺が、投げてくれる。
それをキャッチする、俺。
ーー瞬間的に変身を解除し、胃の中に、もう一度あの忌まわしき力を流し込むーー。
ーーぞくりと、背筋が冷える。
「ーーっぐっ!」
凄まじい、胃痛がくる。膝を付く。
身体が破壊されそうな痛みが現れる。
ーーだが、やってやる。やってやらねば!
悪魔の力が、自分を満たす。
【fill up】
再度アーマーを纏うと、視界の傍、アサルトモードのさらに下に新たなアイコンが出現している。俺の力量がさらなる力の発現のレベルまできたか。
「永劫・モード!」
復唱する。
「七生断罰ーー何度でも俺を殺し続け、俺の力を引き出せッ!」
アサルトモードの鎧に、ヒビが入る。
そして、亀裂が割れて真のアーマーの力が覚醒するーー!
鎧が魔力により再構築され、全身に纏われる。
同時に凄まじい魔力排出が始まる。ーー冗談じゃない、このペースで減っていくと変身維持は10秒以下じゃないか!
ーータマチルツルギを出す。鞘を握った瞬間、剣の形が変わった。
【ソード・ビヘッド!】
ええい、ままよ! やってやる!
思い切り投げ剣を投げる。
油断した奴などにーー負けぬ!
「届けぇぇぇぇ!」
剣を投擲し、奴に当てる。刀身を掴もうとしたフランベルグだが、受け止めようとした瞬間剣が発光し、そのまま腕と首ごと切り離された。
「!?」
奴は驚いた顔のまま、首を地面に落とす。
だがーー奴は、再生能力があるーー!
アトスは、敵を睨む。
ーー身体に反動が回ってくる。
「士亜! 剣をこちらにくれ!」
「お、おう!」
もう一本の彼の持っていたタマチルツルギを貰い、地面に落ちたフランベルグの顔を見る。
「ーーやるじゃないか。今日は僕の負けとしよう」
フランベルグが見栄を張る。
「ーー今日?」
「僕は群体だよ。今僕を殺したところで、君の得られるものは僅かさ」
フランベルグが笑い、俺はその顔に剣を突き立てる。
「ーーそう、か。俺はここまでやっても、まだ倒し足りなかったかーー」
身体から力が抜けて行く。
「ーーお、おい!」
横に居た士亜が、こちらに向かってきた。
ーー俺の顔をした、士亜。
あの頃の、俺、か。ーーいいだろう。
「士亜」
俺は、士亜に告げる。
「ーーな、何だよ? あんた」
「俺を受け継いでーーくれるか」
士亜の手をとる。
「何の事だーー」
「ーー俺は、分かったんだ。俺がフランベルグを一度退けた後、俺に話しかけた存在が」
俺は誰にともなく言った。
「はぁ?」
「ーーそうだよ。先代のーー士亜だ」
心の中に、声は聞こえない。でも、多分そういう事なのだろう。
以前フランベルグに殺されたか、俺と同じような無念を辿りーーそして一度撃退まで持ち込んだ俺に本当の復讐のチャンスをくれたんだ。
アトスは口を開く。
「俺は死ぬ。だから、君がーーアトスになって、次の士亜を守ってやってくれ」
ブラッド・タブレットを相殺する力を得ている俺ならーーこいつに魂を融合させてもいけるはずだ。
「どういう事だよ」
「ーー分かるさ、君なら」
ーー自分の身体の崩壊が始まる。
一度は俺自身によって再生されたあの身体だがーー彼ならいけるはずだ。ミラカナ達とーー約束を果たすためにも。
【禁断魔術ーーポリミライゼーション……】
自分の身体を光の粒子に溶かし、士亜に能力を与える。あとは俺はーー魂のみに、なるだけだ。奴のようにーー。
「お、おいーー!」
士亜が急に膝をつく。
だが、少ししてーー。
「ーー俺、だったのか」
俺の記憶がリンクした事により、そう分かってくれた。
「ーーどうする、アトス」
俺は、そう新しいアトスに向かってそう話し掛ける。
俺は既に肉体を持たない、魂だけの存在だ。
「ーー便宜上不便だ。先代、とよばせて貰おう」
新しいアトスは俺に向かって、そう言ってくる。
「ーー先代の出来た事はーー俺には今出来るのか?」
そう、質問がある。
「あぁーーでは、どうする? もう俺は、お前に強制はしない」
「俺はーーまた違う士亜を救いたい。そいつの力になりたい。俺や先代とは違った道を歩んだ士亜をーー」
アトスが言った。
(ーーならば、行くか)
俺は言い、空間を開く。
ーー魂だけになる事により、世界を観測できる量ーーそして、アクセス出来る情報が増える。
それにより俺自身の先代のような力が、俺には身についていた。
次の世界ーー新しいアトスの命を、楽しみにしている。
俺は次のアトスの肩に手を置くと、次のアトスは笑い返してくれた。
「それじゃ、次の士亜を探しに行くぞ」
「あぁ!」
ーー俺達の旅が、始まった。




