ノルド・シュトルム(6)
「確かに、アイラ様のいう事はわかる。でも」
「口答えする気?」
そこまで言ったところで言葉を遮られる。いつにない、威圧的な言葉。アイラは余程の覚悟のようだ。
「ーーあぁ」
だが、僕は頷いた。
アトス、ミクモ。力を貸してくれ。
大きく息を、吸い込む。
「ーーそうか。君は昔の君でなくなってしまったのだな」
僕は一息吐き、言葉を繋げる。
「何が? 私は私だよ」
アイラは平気な顔をした。
「どうだか。少なくとも君はこの国に居たあのアイラではない」
「へぇ、笑っちゃうね」
そう軽くいなしてきたので、
「ーー可哀想だが、殺す。君の事は他のレティウス13人衆には伝えない」
僕はーー本気に、なった。
瞬間、アイラの顔が、強張る。
「それが自分に、出来るとでも?」
「出来るんじゃない、やるんだ。僕はレティウス13人衆の一人として、貴女の背任行為を罰する。13人衆のアイラではなく、人としての道を外れた貴女を討つ。この罰からは逃れられない」
僕は銃を構えた。
「ーーそれは反乱のつもり?」
「生憎と貴女が反乱分子だ。……どう言い訳しようと。オーレやジョイスの残した物を無断で吸収したとあれば、罪に問う」
僕は目を尖らせる。此処は男が、退くところじゃない。
「あの二人は私より遥かに席次が下。だからどうしようと罪には問われるものじゃない。ーーしかし、私と来てくれれば、ノルドシュトルムを滅ぼして生き延びられるのに何故そういうの?」
「貴女の知ったことではない。僕は僕の命を使うだけ。貴女の私情が挟む余地はない。僕は国家保安区特殊課第二室長ミラカナだ、この国を維持するのが使命だ」
「そのつまらないプライドは、諦めてはくれないの?」
「生き方を否定はされない」
「断ると言ったらこの場を皆殺しにするとしても?」
「尚更だ」
なるほど、こいつは分かりはしないか。最早、上司でもなんでもない。
僕は覚悟と共に狙いを絞り、引き金を引いた。
だが、銃弾がアイラの肩口に当たるかといった瞬間カスピエルが身を挺して防ぐ。
「ーーそう」
内心は驚いているようだったが、アイラはやがて、ふぅと溜息を付く。
「貴方は無価値になってしまったようね。正直昔からその任務に対しての誠実さは買ってたんだけど」
「僕は僕の未来の為に戦うだけ。13人衆の一人のミラカナで充分だ」
「その傲慢さが反吐が出る。貴方など生まれが悪ければ終わりよ」
「僕は間違ってない、貴女が間違っている」
「ーーカスピエル、退くわ」
「ーー・ ・・ー ・ー・・ ・ー 」
何語か分からないことをカスピエルは発し、空間を開く。
「決着を付けたければ、私の屋敷にいらっしゃい。罠を沢山用意して待っているから」
アイラは闇にまぎれて、その姿を消したーー。




