ノルド・シュトルム(4)
屯所の中に二人で戻ると、うちの侍女であるヒビネが居た。
「無事だったのか?」
「はい、レイブレッド様の部下がこちらまで護衛してくださりました」
……でかしたぞ、レイブレッド。
「ーーそちらの方は」
「アトスの友人でソレイユという」
ソレイユが自己紹介すると、
「ヒビネと申します」
ヒビネは少し目を合わせてから、素直に頭を下げた。
「ーーでは、僕は少し仕事をするので。ヒビネ、皆を頼むよ」
僕はヒビネにそう言いつけると、オベレノの使っていた空き部屋を漁る事とした。
もちろん、情報収集の為だ。立場を盾に入れるのならば、やっておかねばならんだろう。
オベレノの部屋に入り、早速資料を漁る。
公文書、兵士の訓練日誌、以前の殺人事件捜査の進捗……。
彼は、あのゾゴイという男が犯人だとは、まだ気付いていないようだった。
捜査の段階は、此方の方が上だったという事か。
僕は椅子に座り、上への提案書の方に目を通す。
武器発注の為の申請書、か。最近倹約だの軍縮だのと言っていたから、彼らも辛かったろうに。
そう感想を抱きつつも、どんどんと読み進めていくーー。
ーー半刻くらいしただろうか。カツンカツンと、部屋のノックがされた。
「ーーはい」
僕は立ち上がり、ドアの前へ行く。この部屋には僕のほかには誰も居ない。なんなのだろう。オベレノ自身はまだ起き上がれないと聞く、そうすれば誰なのかーー。
ドアを開ける。とすると、しわの入った手が、僕の腕を突然掴んだ。
「っ!?」
「かわぇぇなぁ……童。麻呂のものにならんか?」
ーーなんだ、こいつは!?
得体の知れない恐怖。変な汗が、額を伝うのを感じた。




