エピソード3「デュアル・ゴア」(12)
拳がガイアブレードに当たる瞬間、
「そこまでにしてもらおうか!」
声と共に、二人の足元に一本の短い鎌が突き刺さった。
「何者だ」
アトスは鎌が投擲された方を睨むが、一方のガイアブレードが片膝を地面に付けて畏まる。
「デルテ・アルベルト・イズン様!」
ガイアブレードは姿勢を落としながら、そう告げる。
「……貴方がガイアブレードの召還者か」
咄嗟に悟ったアトスは身に纏ったオーラを霧散させてから、イーゴンを庇うような歩き方をしつつも召還者と名乗る男を見る。
男は階段の上に立ち、悠然と構えていた。
デルテ・アルベルト・イズンは見かけからすると20は越えていないようだが、ミラカナ達を上回る身分と言うこともあり、相応の貫禄を持っていた。
お供を連れていないというのは不思議ではあったが、それだけガイアブレード、或いは自身の能力に絶対の信頼があるという事なのだろうか。
「……ガイアブレードが失礼した。私はレティウス次期席次二番、デルテ・アルベルト・イズン」
男は名乗りながら、ゆっくりと階段を降りてくる。
「披召還者が何人かいるのもそうだが、何分気になっていたというのはある。特にアトス、君のような完全な人間は少ないのでね」
デルテは床に刺さった鎌を回収し、折りたたむと懐に仕舞い込む。見たことの無い武器だ。折りたたみ式の鎌であったのか。
「ガイアブレード」
「はっ」
「戦力を測るのはご苦労であった。だが、彼らはミラカナと共に今任務を行っているはずだ。暇な時ならばともかく、他人の忙しいときに仕掛けるのは品が無い、以後気をつけておけ」
「承知しました」
ガイアブレードは頷く。
「下がっていいぞ、ガイアブレード」
「了解です」
ガイアブレードが背を向け、去っていく。
「うちの相棒が迷惑を掛けた。アトス、イーゴン、失礼した」
デルテはそう謝罪すると、ふと何かに気付いた素振りを見せる。
「ミラカナ、レイブレッド。君達も覗いていないで出てきなさい」
そしてそう、近くの茂みに向かい声をかける。
「何」
イーゴンが茂みを見ると、二人が茂みから隠れて覗いていた。
「レイブレッド」
「近くに来たら音がしたから来たんですよ。まさかデルテさんの召還した方と争うとは思わずひやひやしていました」
取り繕うレイブレッドと、ばつの悪そうなミラカナ。それにしてもこの二人の接近を気付かせなかったとは。ガイアブレードの戦闘力の高さというか、周囲への気配りを忘れさせるだけの威力に内心アトスは恐怖を覚える。
「まぁいい、私にも捜査で協力出来ることがあればしてやるし、便宜は取ろう。仕事に戻るといい」
そんなアトスの心を知ってか知らずか、デルテは中庭からゆっくりと出て行った。




