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エピソード2 『切断されたロープ』
ミクモ=ヒチリキはヒルトライの貴族街にあるホテルにいた。
ーー彼の目の前には、既に死んでから半日以上経ったと推定される議員の死体が一つある。
「ーーでは、死因は撲殺と」
「えぇ。しかしこの階は見ての通り11階。ほかの客にも怪しいところはまずなく、フロントもまた、離脱者を確認していません」
衛兵が答える。
「そもそもこの議員には、予定があったのか?」
「いえ……ですが、この様子では、接待かと。物を盗られたような形跡はないのですが……」
僅かに口ごもりつつある衛兵。
「女か。……腐っているな。この議員の資金の流れも漁っておこう。そこから怨恨の筋があるかもしれない」
ミクモはうんざりしたかのような溜息を吐くと、手帳に僅かに書き込む。
「わざわざお手数を掛けました」
「いや、こちらこそすまない。本来私の仕事ではなかったが、議員に関する事となれば管轄になるからな。ミラカナ様に話をあげておこう」
衛兵に会釈して、ミクモはホテルの死体のあった部屋から出た。