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エピソード1『3つ目のバトンタッチ』(12)

「ヒビネ、ただいま」

 アトスを連れて帰宅すると、沈痛な面持ちのヒビネが待っていた。

 どうやら物言いを見るに、大広場での情報は既に知っていたようだ。

「……お帰りなさいませ。ジョイス様の事は、本当に残念でした」

 声をかける前に、頭を下げてくる。

「……あぁ。明日は休みを取るつもりだ、学校もな」

 僕は返事する。職場でも我慢をしていたがーーやはりあいつの死というのは、今になっても信じられない。

 次期13人衆という立場でノルドシュトルムと対抗するのに、自分や身の回りが傷付いたり死んだりするのに多少は覚悟だってあったがーーこんなにも早い死が訪れるだなんて、思いもしなかった。

 ーーそして、自分に腹も立つ。自分の無力さ加減。あんな奴のせいで、僕が……いや、俺が選びたかった世界を破壊されてしまっただなんて。

 少なくとも、俺にとっての大事な友人、ジョイス・デルタ・ジャスパーは死んでしまったのだ。

 思わず声が出そうになった時、ヒビネがまた口を開いた。

「えぇと。こちらはーー」

 ヒビネがアトスに視線を向ける。

「あぁ、召還儀式で呼んだ友人だ。これから大切にもてなすから、仲良くしてくれ。僕の頼みだ」

「失礼しました。宜しくお願いします。私、この屋敷で雇われているヒビネと申します」

「アトスです……お世話になります」

 両人は礼を交わし、僕はアトスに空いている部屋を案内するといい引き連れた。


「……相当な金持ちなのだな。家の設備、燈台ひとつとっても相当な出来だ」

 階段を登っている最中にアトスが関心した声を出す。

「そうですか?」

「手先は多少覚えがあるが、技法も興味深い。図書館とやらに入れるようになったら工芸系の知識も溜めたいな。時間があればでいいが……街の鍛冶屋も見学させて頂ける許可は取れないだろうか?」

 心底興味深そうな声を出すアトス。僕はそれに、頷く。

「……一応申請はだしておきますよ。こちらがアトス、キミの部屋だ。僕はこの上の階の突き当たりにいる、屋敷の中で尋ねられたらミラカナに召還されたと言われればいいからね。風呂は使用人に聞けば案内してくれるだろう」

「数々の親切、痛み入るな。あぁーーそうだ。それとーー」

 アトスは其処で、声を止める。

「それと?」


「戦いに怯えるなよ、ミラカナ。俺がお前だけは……殺させないからな」

 突然熱を持つ瞳で、アトスはそうとだけ言ってきた。

 研ぎ澄まされたような声色が、決意を物語っているかのようだ。

「ーー分かった、ありがとう」

 僕はアトスに手を振り、自室に戻ったーー。

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