九十八 一緒一緒
周囲にいる仲間達の事など、まったく意に返さない様子で、町中一は、魔王と、肉奴隷とそのご主人様といった体の内容の、イチャコラを、これでもかとし始めた。
 
魔王が気絶した時に、その体から離れて、融合を解いていたスライム親子が、そんな二人の仲に混ざろうと隙を伺い出す。
 
チーちゃんが、でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ~を、入れるタイミングを狙い始め、己の欲望剝き出しの行動を、取る者達が、町中一の敗北が、作り出した、混沌とした状況を、更なる混沌へと堕として行く。
 
町中一の様子を見ていた女神様は、酷く落ち込んでしまって行っていて、柴犬が、ああでもないこうでもないと、町中一を救うためのアイディアを出していたが、柴犬のそんな言葉の数々を、聞いているのか聞いていないのか、分からないような、曖昧な返事をするばかりだった。
 
「そうだ。皆、家に帰ろう」
 
町中一が、ついっと、何かを思い出したような顔をすると、そんな事を言い出す。
 
「正気に戻ったのですか?」
 
脊髄反射のような素早さで、女神様が、町中一の頭の中に、声をかける。
 
「またそうやって話しかける。まったく困った人だ。やめてくれって言ったはずです」
 
町中一が、冷たい言葉を返し、女神様を、わざと傷付けようとするかのように、魔王の肩を抱いた。
 
「そんな。私の事は、嫌いになったんですか?」
 
「そういう事です。貴方は、俺の願いを聞き入れてくれない。俺は、すぐにでも、貴方の元に行きたかった。それなのに、俺を、こんな世界に、送り込んで。俺は、もう、疲れました」
 
「一緒」
 
「うん。一緒。さあ。俺達の愛の巣に帰ろう」
 
「一緒」
 
魔王と町中一は、笑顔で見つめ合う。
 
「柴犬ちゃん。こんなの。こんな展開って」
 
「完全な敗北ですわん。こうなってしまっては、もう、諦めるしか、ないのかも知れないですわん」
 
「柴犬ちゃん。そんな」
 
「女神様に、打つ手がない以上、これ達には、もう何もできないんだわん。もちろん。これだって、こんな終わり方は嫌なんだわん。主様が肉奴隷になってしまうなんてわん。どうせこんなふうになるのなら、これが、主様を、肉奴隷すれば良かったんだわん」
 
柴犬が、言葉を切って、くぅーん。と、寂しそうに鳴いてから、町中一の傍に行く。
 
「主様。主様は、これの事をどう思ってるんだわん? もう、これの事が必要ないのなら、そう言って欲しいんだわん。これは、主様に愛されなければ、存在価値がないんだわん」
 
柴犬が、町中一の目を、とってもかわいい円らな瞳で、じじじじいーっと見つめた。
 
「柴犬。お前の事は、愛しているぞ。魔王ちゃんと柴犬に向ける愛は別だからな。ほら、もっと、こっちにおいで」
 
町中一が、しゃがんで、柴犬をわしゃわしゃする。
 
「一緒?」
 
「うん。一緒だ」
 
「一緒」
 
魔王もしゃがんで、町中一と一緒に、柴犬をわしゃわしゃし始めた。
 
「むふぅーん。魔王。まだまだだわん。もっと、主様の手付きを真似るんだわん。そんなわしゃわしゃじゃ、これは、二人の仲を、絶対に、許さないんだわんんんん」
 
柴犬が、娘を嫁に貰いに来た娘の彼氏に対して、娘はそう簡単にはやらん系の父親が、言うような事を言い出す。
 
「もう。スラ恵達も混ぜなさいよ」
 
「そうよ。そうよ」
 
結局、隙を見つける事ができなかったのか、なんなのか、今まで、何もせずに、町中一と魔王を見ていた、スライム親子が、そんな事を言いながら、融合して、町中一に襲いかかった。
 
「一緒?」
 
「一緒一緒」
 
「皆一緒よ」
 
「一緒」
 
魔王と、スライム親子が、言葉を交わし、魔王が、町中一を飲み込んでいるスライム親子に向かって、両手を広げた。
「一緒?」
魔王が、ななさんの方を見て言うと、ななさんが体育座りをやめて立ち上がる。
「魔王ちゃん? あんたん。どうしてぇん?」
「一緒」
「あああ~ん。そうねぇん。一緒よねぇん」
ななさんが、スライム親子によって、接着されている、魔王と町中一に抱き着いた。
「でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ~?」
「一緒?」
「でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ~?」
「一緒」
「でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ~」
魔王とチーちゃんが、そんな言葉だけで、意思疎通を図れたのか、チーちゃんの片方の足が立ったままの町中一のお股に触れて、でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ~が放たれた。
「いいいいいい、つつっっっっ、しょしょしょしょ」
「一緒」
町中一と魔王が、またも、笑顔で見つめ合う。
かくして、魔王は、一緒という言葉だけで、町中一ファミリーを、その手中に収めてしまったのだった。
おしまい。
「終わりません。ちょっと、ちょっと。この話を書いている人。どういう事ですか? こんな終わり方は酷過ぎます。こんな終わり方は認めません」
「★▲✕◯●■◯★」
「貴方の言葉は、まだ、魔法をかけていませんから、文字化けしちゃっているみたいです」
「★*☆▲■◯●」
「嫌です。こんな話にしてしまう人の言葉を訳すなんて。というか、そんな事よりも、話を修正して下さい。こんな終わり方をしたら、これは、もう、途中で書くのをやめたのと同じ事ですからね」
「……」
「一緒?」
「★▲✕◯★▲?」
「一緒」
「◯◯●●●●」
かくして、作者も魔王に取り込まれ、この世界が、魔王の肉奴隷になったのだった。
本当におしまい?




