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何者にもなれなかったとある男の異世界転生  作者: いたたたっ


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六十八 魔物討伐?

 信用できる兵士が、今の間は、まさか? いやいや、ないない。というような顔をしてから、その表情を隠そうとするかのように、ちょっと、顔を引き攣らせつつ、微笑んだ。


「魔物は、俺がなんとかする。あんたは仲間の所に戻ってくれ」


「いや。そうはいかない。俺が頼んだんだ。少年だけでは行かせられない」


「それは良い心がけなんだわん。ついて来ると良いんだわん」


 柴犬が、とっても偉そうな顔をして、とっても偉そうに言う。


「おい。柴犬。ついて来て何かあったらどうするんだ?」


「主様がいれば心配ないんだんわん。そんな事よりも、とっとと行ってちゃちゃっとやっつけちゃうんだわん」


 柴犬が、くるりと体の向きを変えると、魔物達のいるであろう方向に向かって、歩き出した。


「お、おい。待て待て」


「なんだわん? 早く行かないと、兵士達に危険が及ぶかも知れないんだわん」


「まったく。口が達者な奴だな。そんなふうに言われたら、行くしかないじゃないか」


 町中一は、そこで一度言葉を切る。


「兵士さん。くれぐれも気を付けてついて来てくれ」


 町中一は、兵士の目をじっと見つめて、気を引き締めると、真剣な口調で言った。


「少年。ありがとう。気を付けるようする。それにしても、君は不思議な子だな。そんなに幼いのに、そんな顔でそんな言い方をして」


 兵士が、今度は顔を引き攣らせずに微笑んだが、その瞳の奥には、何やら言い知れぬ感情や思いが、宿っているようだった。

  

「それは、えっと。あれだ。あれ。こう見えて、苦労が多いんだ」


 町中一は言ってから、わざと、柴犬の方を見る。


「そうか。そういう物かも、知れないな」


「またそんなふうに横道にそれてわん。早く行くわんよ」


「すまん。でも、柴犬。俺の魔法を忘れていないか?」


 町中一は言って、前世で、一時期、かなりハマっていたハクスラゲームのように、自分達にバフをかけるようなつもりになって、自身とその仲間達に、防御力を高める魔法等をかけてから、魔物達の動きを封じる魔法を使い、それから、魔物達のいる場所まで、魔法を使って瞬間移動した。


「おいおいおいおい。これは、どういう事だ?」


 大きな魔物四匹の目の前に瞬間移動して、魔物の姿をいきなり目の当たりにした信用できる兵士が、叫ぶように言う。


「大丈夫だ。こいつらは俺の魔法で動けない」


「いや、でも、少年。これでは、気を付けるも何もない」


「確かにそうだ。それはすまない。だが、問題ない。柴犬。こいつらはどんな魔物なんだ?」


「この魔物達は、グッレッタームファハーハーンなんだわん。集団戦を得意としてて、ドラゴンなんかも倒してしまう、危険な奴らなんだわん」


「少年。本当に大丈夫なのか? グッレッタームファハーハーンはかなり強いぞ。こいつらの群れを一人で倒せる人間なんて、王都でも王騎士十傑の連中しかいないと言われてるのに」


 信用できる兵士が、魔物を見上げている目に、恐怖の色を浮かべながら、声を震わせて言った。

 

「この、グッターンファファムーンってのはそんなに強いのか?」


「主様違うんだわん。グッレッタームファハーハーンなんだわん」


「え? 間違っていたか? えっと、グッレッーアーアハハーンだっけ?」


「少年。違うぞ。グッレッタームファハーハーンだ」


「えっと、グッターフファファーンムー?」


「主様。そういうのはもう良いだわん。とっと倒しちゃうんだわん」


「お、おう。そうだな。何度言ってもちゃんと言える気がしない名前だしな」


「少年。それで、これからどうやって戦うつもりなんだ?」


 町中一は、ちょっと待ってくれ。と言ってから、四匹いる大きな魔物の姿を、矯めつ眇めつした。


「それにしても凄い姿をしているな。頭は何かしらの凶暴な鳥っぽくって、背中には亀の甲羅みたいなのがあって。手足は、昔飼っていたハムスターに似ている形をしているだなんて」


 ふいー。魔法が使えて良かった。もしも、魔法が使えるようになってなかったら、とても、こんなふうな冷静な気持ちで、ここに立ってはいられなかっただろうな。今更ながらにちょっとだけ怖くなって来た。と町中一は、言いながら思う。


「少年。ハムなんとかは良く分からないが、そんな事を言ってる場合じゃない。早く倒した方が良い。いくら魔法が効いてるからって、油断し過ぎだ」


「けど、どうするか。殺すのはかわいそうだしな」


「主様。緊張感がなさ過ぎなんだわん。でも、この状況でその態度は良いと思うんだわん。堂々としてて、格好良いんだわん」


 町中一は、柴犬の言葉を聞いて、ちょっとテンションが上がってしまった。


「え? そ、そうか? それは、嬉しいな」


 町中一は、だらしなく微笑んでしまう。


「少年。頼むって。頼むからちゃんとやってくれ」


「おっと。そうだったそうだった。じゃあ」


 さてさてどうしようか? 取り敢えず、こいつらが何を考えているのか知ってからかな。とはいえ、言葉を話すようにしちゃうと、兵士さん達もいるし、色々と面倒な事になっちゃうかも知れない。ここは……。こいつらの考えを読んでみる事にしてみようか? 町中一は、そう思うと、そんなふうな文言で魔法を使ってみた。   


「ハラヘッター」


「モウマエニイツメシヲクッタノカオボエテナイ」


「ニンゲンナンテホネバッカデマズイケドコドモタチノコトモアル」


「メシーメシー」


 町中一の頭の中に、魔物達の考えであろう物が、ばばばっと、広がった。

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