副業:アイドルの魔法少女⑥
「そ・こ・で!」
ほー、と腕組みして感心する俺に、アイリスがピシッと人差し指を突きつけた。
「覚えてるわよ。アンタたち二人、今日のアタシのライブ見てたでしょ」
「……よく覚えてるな」
確かにその通りではあるが、俺とディアナがいたのは、彼女から二〇メートルくらいは離れていたところだったのに。まあ、俺たち以外の人は全員それ以上に離れたところにいたけどな。
「アタシを誰だと思ってるの? 客席のファン全員を見逃さないよう、常に視力は最高のレベルに保ってるわ。あの噴水広場であれば全員の顔を覚えてられるくらいにね」
アイドルのアピールポイントとしては方向性が違うような気もするが、今は置いておこう。
「今、正直、壁にぶち当たっている状況なの。アイドルとしてファンを獲得するために、これ以上どうしたらいいのかアタシには分からない。でも、アンタたちは……特にユーハ、アンタはチキュウでのアイドルを知る人間と見たわ! そうでなきゃ、アタシのライブを立ち止まって見たりしないでしょう」
「なるほど、それで、地球のアイドルについて、ひいては今後の自分のアイドル活動についてサポートしろと……」
「その通りよ!」
自身の言いたいことが余すところなく伝わったことに満足げな表情を見せるアイリス。
一方、彼女の主張を十二分に把握した俺は、目を閉じて一瞬思慮し……彼女に返答する。
「ムリです」
「返事が早い!? もう少し検討しなさいよ! アンタ、アイドル好きなんでしょ!?」
うーん、そこがまず認識の違いだな。
俺は『アイドル全般が好き』なんじゃなくて、『白風瑠奈というアイドルが好き』なのであって。
必然、俺の知るアイドルについての知識や情報はルナちゃんがらみのものになるし、逆に、それ以外のアイドルについてはほとんど何も知らない。
訓練された熟練のオタクであれば、ライバルとなり得るアイドルについてリサーチしたりするのかもしれないが、俺はルナちゃんの応援だけで手いっぱいだ。
なので、ルナちゃんの活動やこれまでの軌跡について語ることはできるが……アイドルとして今後どうすればよいのか、なんて専門的なアドバイスはとても出来やしないんだ。
ということを、知りもしないだろうルナちゃんの個人名には触れずに、アイリスにも伝わるように話す。
「そもそもですが、我々には魔晶回収の任がありますので。そういった、貴女様につきっきりになる可能性もある要望にはお答えしかねます」
俺の回答にディアナが補足する。
ああ、そうだったな。それもある。
荒天島の嵐を突破できない以上、もうルナちゃんのライブに間に合いそうもないから、あんまり気にしてなかった。




