副業:アイドルの魔法少女⑤
突然の命令口調にしばし呆然とする俺。何かの冗談や聞き間違いかとも思ったが、命じてきた本人の視線はいたって真剣そのものだ。
「アタシはアイリス・サンフィールド。このベロニカの、いいえ、エーテルリンクにおいて、唯一にして至高のアイドルよ。アンタたちは?」
「……篠崎悠葉」
「ディアナ、と申します」
突発命令に引き続き、随分と意識高い自己紹介をしてきた彼女に、依然警戒しつつも応じる。
自身でもアイリスと名乗った金髪の少女は、「ユーハに、ディアナね」と俺たちの名を頷きながら繰り返した。
「アタシはこの世界の唯一にして最高のアイドルなんだけど、もう広場での活動を開始してずいぶん経つっていうのに、未だにファンが付かない状態なの。エーテルリンクには馴染みのないモノってこともあって、最近だと舞台を始めてもすぐに追い出されちゃうし……」
……自分で二回言ったよ。この人。オンリーワンとナンバーワンを併せ持つとは贅沢だな。
それにしても、いやいや、兵士に追っかけまわされてるのは周囲の理解がないからじゃないぞ。
お前さんの災害級の歌声のせいだぞ。そう思いつつも口には出さず、様子を見る俺。
というのも、なんかこいつのキャラが全然違うからだ。広場でアイドルアイドルしてた時と。
噴水広場でボエ声とMCを披露してた時は、キリっとしてキツそうに見えつつも、爽やかで馴染みやすそうな印象だったのに、今はキツイ感じしかしない。
その事実を訝しく感じた俺の表情を読み取ったのか、アイリスは「ああアレ? 外向けのキャラよ」と何のことも無しに言い放った。
じゃあこっちの性格が素かー。呆れるを通り越し、外面ではおくびにも本性を露わにしなかったことにいっそ感心する。
自室にいるためか、本来のキャラを隠そうともしない様子のアイリスが不満をぶちまけた。
「そもそもアイドルについての資料が絶対的に少ないのよ! 資料どころか、もはや国庫の遺物レベルのものを何とか解読して、作詞作曲から衣装まで自作してんのよ!? アタシすごくない!? 褒めてもらってもいいと思うんだけど!」
え、それが事実ならちょっと本気で凄いな。
曲や衣装なんかを作るアイドルは地球でも珍しくは無いだろうが、それをすべて自分一人でこなしているとなると、その数は激減するだろう。
セルフプロデュースアイドルってやつなんだなこの人は。




