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異世界特有のご都合環境②

「……そこで止まりなさい。入国希望かね?」


国壁の一部に大きくアーチを描いて空いている検問所には、守衛の兵士が二人詰めていた。そのうちの、妙齢の兵士が、穏やかな口調ながらも警戒を緩めない様子で声をかけてくる。


こくりと頷き、鞄に下げた銀色のエンブレムを兵士に持ち上げた。


「ふむ……トレイユの銀国紋で間違いない。君が、魔晶回収の任を負った召喚者だね」


「はい、そうです」


任を負うっていうか、押し付けられたが正しいんだけどなあ。そんなことを無関係の守衛さんに行っても仕方がないし、ここはそういうことにしておこう。


妙齢の守衛さん――どうやらベテランの上司らしい――は、もう一人の新人と見える年若の守衛に、入国を記録するよう指示を出した後、俺とディアナを壁の奥へと(いざな)った。


「遠いところをご苦労だったね。我が国ベロニカへようこそ。まずは城に向かって、王に特異点の話を聞くといい」


「ありがとうございます」


ベテラン兵士さんの話によると、壁を抜けると海まで続く大通りが伸びており、道中の噴水広場にある分かれ道から城へ向かえるそうだ。


「大通りは商業的な主要通りでもあって、いろいろな店舗が出ている。朝の賑わいはこの国の見どころの一つだね。他のお勧めは、港かな。毎日漁に向かう船がずらりと並ぶさまは壮観だ。一度見ておいて損はないよ」


「あ、主要通りなら、一本裏に行ったところにイイ感じの茶屋がありますよ! 甘いものも、軽食も美味しいので、よろしければ滞在中に立ち寄ってみてください!」


「はあ……?」


あと一歩で入国、といったところで守衛さん二人の“我が国プレゼン”が始まってしまった。


先日ディアナに聞いた話の通りなら、この世界の国々はお互いの交流などがほとんど無く、ほぼ完全に独立して回っているらしいから、入国者自体が物珍しいのだろう。


だけど、それにしても観光寄りのプレゼン内容なのはなんでだ?


正直、城での話もそこそこに特異点に向かって、さっさと出国するつもりなんだけど。


……今までの召喚者が観光しまくったのかな。

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