異世界特有のご都合環境③
二人の守衛さんと手を振って別れ、俺とディアナはベロニカへと足を踏み入れた。
彼らの話していた大通りとやらは、本当に『大きな通り』だった。
日本の道路で言えば十車線くらいはありそうな道幅に沿って、ずらりと様々な店舗が看板を並べている。石畳の上をそれなりに多くの人が行きかっているにもかかわらず、ゴミゴミとした印象を受けないのは、ひとえに道幅の広さによるものだろう。
大通りは左手に緩やかなカーブを描いており、カーブの先には噴水広場とやらが見えた。広場の向こうに進めば海へと行けるようだ。
結構な数の人通りがあるせいか、日本の制服姿の俺や、浮世離れした美貌のディアナが歩いてもあまり目立たないようだ。人々は皆、思い思いに買い物をしたり、店先で話し込んだりしている。
そんな異世界にして日本でも見られそうな光景を横目に、俺たちは早々に噴水広場に到着した。
適度な間隔でベンチが据えられていたり、元気に走り回る子供たちの姿があったり、ここはベロニカに暮らす人たちの憩いの場のようだ。
「なんだか、トレイユとは違ってのんびりした国だな、ここは」
「と、申しますと?」
「いや、トレイユで会った奴らって人の話を聞かなかったり、強引に話を進める奴が多かったから」
終始尊大な態度だった女王や、軽薄な物腰で胡散臭い魔術師の顔が脳裏に思い起こされる。
そんな俺のぼやきにディアナは、ぱっと見ただけでは気付かないほどに小さく小首を傾げて答えた。
「おそらくそれは、マスターのお会いした方々だけかと」
「え、そうかな……そうかもな」
そういえば、トレイユには丸二日も居なかったものな。その間会った人間といえば城の人間ばかりだし、街に行ってみれば、今目の前に広がっている光景が実はあったのかもしれない。
「ええ、そうです。第一、私はそれほど強引ではありませんですし」
彼女がほんの少し憤慨した様子で発したその一言に、俺は思わずぱちくりと目を瞬かせた。
気にしてたのディアナさん。
ちょっと口調が変ですよディアナさん。
「……そうかな」
「そうです」
「……ソウカモナ」
「なぜ棒読みなのですか」
「キノセイダヨ」
ディアナさん、初めて会った時、あなたも結構強引でしたよ。
じろりと睨めつけてくる少女をHAHAHA、と英国風の笑顔でいなし、城への分かれ道に向かった時だった。
「みんなー! 今日も私の舞台に集まってくれてありがとーっ!」
広場の中央から、場違いな大声が聞こえてきた。




