異世界召喚はいつも突然だ⑤
「さて! 話はまとまったかな?」
パン! と音のいい拍手を鳴らし、変わらぬ胡散臭さをたたえた魔術師が俺と女王のところに歩み寄ってくる。
こいつ、今までずっと静観してたくせに話の主導権だけは持ってこうとしやがる。まあ関係ない話をしていたから、大筋のところに戻したいんだろうけど。
こういう奴に好きにさせると、相手の要望だけが通るような話で結論付けられかねない。それだけは避けないとな。
「少年、君の考えはわかった。君には君の譲れないものがあり、そのためには万難を排すると見える君の意思もね」
ちょっと違うぞ。その言い方だと『目的のためなら何でもする』みたいに聞こえるぞ。
やらなくていいことはやらないんだからな!
絶対そこも分かってて言ってるだろコイツ……
「無論、不要な障害は避けたいだろう。君の要望を全て叶えるならば、今すぐに元の世界に還す、ということになるのだろうね」
そう! そうだ! なんだ分かってんじゃないか!
という気持ちがそのまま口をついて出そうになった。というか、次の魔術師の言葉を聞いてなきゃ出ていた。
「だがねぇ、果ての祭壇でしか召還魔法は使えないんだよねぇ」
「……は?」
ハテノサイダンデシカショウカンマホウハツカエナイ?
何それどういう意味? おれわかんない。
口をポカンと開けて呆ける俺をよそに、魔術師はペラペラと言葉を紡ぐ。
「いやホラ、召還用の魔法陣、あそこにしか無くてねぇ」
「それに、君を喚んだやつもそうだけど、アレって途方も無い魔力を必要とするんだよね。僕はこれでも、この国で最大の魔力量を誇る神位魔導士なんだけどー……陣を起動するとなると、僕がざっと千人はいないとダメだねぇ」
「他所の国から応援を募る手も無いではないけど、当然すんなりはいかないよねぇ。彼らの生死もかかってるからねぇ」
「あと、なにより時間かかるよねぇ」
「その点、特異点の魔晶を集めて持っていけば全部解決さ! そうだね、余った魔力で世界快復も見込めるくらいかな! まあ、これまでの召喚者は平均して一年くらいかかっていたけど、なぁに、各国の理解を得て応援を募るよりかは早く済むさ!」
「……それつまり、最初から言った通りにするしかねーやつじゃねーか!」
選択肢ねーじゃんクソが!
い、一年!? 一年とか言ったかコイツ!?