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二度あったことを三度はさせない③

兵士の方の気も理解できなくはない。現実離れした美少女が現れたら、意図せずして目で追うのが一般的な男というものだ。


が、俺としてはこれまでも、そしてこれからも多大に世話になる予定の相棒に、余計な心的ストレスを与えたくない。彼女の様子を見るに、今まで大勢の人間の目の前に晒された経験が無いのだろう。


なので。


「――というわけで、報告は以上だ。早速客間で休ませてもらう。充分な休息が取れたら自分たちから部屋を出る。それまでは誰も近付かせないように!」


と急ぎ足で強引に話を打ち切る。


まだ何やら追求したかった様子の小隊長に無理やり魔晶を押し付ける。そのまま意図的に目が合わないようにしつつ、背後で縮こまる少女の手を取り、扉の方へ体を向ける。


「ディアナ。行くぞ」


「は、はい。マスター」


手を取った時に一瞬戸惑った様子のディアナだったが、俺の気のせいだったのか、すぐに不安げな表情はかき消え、頬に赤みが増した。繋いだ手をじっと眺めたまま、どこか無機質な足取りで付いてくる。


気にしすぎだっただろうか。まあ、ストレスがないならそれでいいけど。


ついでに、不躾な視線を送ってきていた兵士諸君をじろりと睨みつけてから、俺とディアナは玉座の間を後にした。






「あの、マスター……ありがとうございました」


勧められた客間の扉を閉じたところで、ディアナが控えめな声音で呟いた。


自分のために、俺が報告を早々に切り上げたと気付いているらしい。出会った当初から感じてはいたが、十代になったばかり程の外見に見合わないほど聡明な少女だ。


「いいよ。俺も同じなら気分が悪くなるから」


玉座の間からこの部屋に辿り着くまでも、見回りの衛兵や給仕の侍女など、すれ違う人間全員が彼女を物珍しそうな目で――あるいはいかがわしげな目で見つめてきた。


俺自身も、込められた意図は違えど、悪質で陰険な視線に晒された経験がある。

ああした目で見られることが、見られる人間にとって、決して心休まるものではないことは嫌でも知っている。


俺の返答にディアナは八の字眉で微笑み、窓際の丸椅子に腰かけた。何気なく、机を挟んだ対面側に俺も腰を下ろす。


八畳ほどの広さの客間は、入ってきた扉の正面に窓があり、その窓に沿うようにして俺とディアナが座っているテーブルセットが据えられている。


右手の壁際に、一人用と見える真新しいシーツのベッドが一台あるが、それだけの簡素な内装だった。クローゼットのようなものもなく……人が潜むようなスペースや物陰はない。つまり、今この部屋には俺たち二人きりってことだ。


さて、この機会に聞いておきたい事を聞いておくとしようか。

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