二度あったことを三度はさせない④
「いやぁ、ユーハ君おかえりおかえり! 水臭いじゃあないか! 帰って来ていたのなら顔を見せてくれてもいいものを、こっちの方から出向いてしまったよ――って痛い! なにするんだい!?」
うっるさいわ! ノックも無しに客間の扉を開け放った軽薄な笑顔を見た途端、思わずヤクザキックを叩き込んでしまった。
数時間ぶりに再会する、ムカつくほどに顔のいい魔術師サンファを、遠慮なく客間の外へと追いやる。
次いで部屋を出ようとする俺へと、すぐさま口を開こうとするサンファに対し、ピンと立てた人差し指を口許に当てて、沈黙を強めに主張する。
眉を顰める魔術師に、客間内に唯一あるベッドで眠りこけるディアナの姿を示した。
「彼女は……」
「ずっと気を張ってたんだろ」
思えばディアナは、俺と出会って目を覚ましてからすぐに命がけの戦闘を行っていたのだ。巻き込まれての急展開感は俺にも劣るまい。それで疲れないはずもないというものだ。
サンファが来るまでにもいろいろと話を聞いていたしな。
あまりのんびりとはできないが、少しでもゆっくり休ませてやりたい。
そんなわけで、あんたみたいな歩く騒音の元は遠ざけておくに限る。
サンファを城の廊下へと追いやった後に自分も続き、ゆっくりと客間の扉を閉める。
そこいらに給仕の女性や見回りの兵士がいたが、サンファの姿を見るや否やぎょっとした顔つきになり、皆足早にその場を去っていった。じわじわと辺りが静かになる。
サンファはしばらく無言を貫き、静寂を待っていたかのように口を開いた。
「まあ、何はともあれ、一つ目の魔晶回収お疲れ様。とはいえ、まだ君の旅は始まったばかりさ! 残る特異点は他にあと――」
「知ってる。あと三つあるんだろ」
さっきディアナに聞いた。
この世界に唯一存在する大陸は、細長いごぼうのような形をしており、北東から南西にかけて曲がりくねった陸地を形成している。気候は全土で温暖から亜熱帯程度で、その大部分は山や森といった手つかずの自然が占める。
大陸にぽつりぽつりと点在する国々を街道が結んでいるが、自然の中には魔物が生息しているうえ、基本的にはそれぞれの国内で人々の生活が収束するため、国の外へ出る者はほとんどいない。
俺を召喚したこの国トレイユは大陸南西の最短にある大国で、残る特異点は北東方面にある三つの他国の領域にあり、それぞれの国が管理しているのだという。
そして、最後に向かう祭壇がある、最果ての地は大陸北東の端っこにある、と。




