繊月海月
まさかの連続投稿!
これが僕の現実逃避能力だ!
今日二度目の車の卒業検定ですからね……
ここで少しだけ僕の話をしよう。
僕は昔からいわれのない悪意をとても受けやすい体質だった。
何をしていても関係なく、全てが僕のせいになる世界。
そんな世界に対して僕がとったのは善行をつみ続けることだけだった。
これには小さい時に死んだおばあちゃんの言葉が深くかかわっていて、「悪いことをすれば巡り巡って自分に帰ってくる。逆に良い事をすれば自分に帰ってくる」というありふれた言葉だが、小学一年生にも満たない年齢だった僕には死に際の言葉を聞かないなんて言う選択肢は存在せず、ただひたすら祖母の言葉に従った。
この頃から既に悪いことが自分に巡ってくる世界だった。だけれども僕は少しでも良くなるようにと頑張って善行をつみ始めた。
ボランティア活動、ゴミ拾い、募金なんていう小さいことだがコツコツと繰り返して行った。
しかしそんなものは一切帰ってこない。
ボランティアをすれば何もしていないうちから『キモチワルイ』『カエレ』なんて言葉を浴びせられる。
ゴミ拾いをしていればゴミを散らかされ、その後始末をしているとゴミを散らかしているといわれて殴る蹴るなどの暴行を受ける。
募金をしてもお前の金なんていらないと言われて募金箱で殴られて頭に大怪我したこともある。まあ、僕の体に怪我がない所も、怪我がない時もないんだけど。
唯一の味方だったおばあちゃんも既にいない僕には家の中にすら居場所がない。だから夜の間は外にある倉庫と家の隙間で寝ていた。ご飯は運がいいと十日に一度くらい残飯を貰えたし、雑草を公園の水道で洗って食べていた。
唯一の救いとしては小、中学校には行かせてくれたことで、一般的な知識を少しだけ身につけることができた。
服は頑張ってゴミ捨て場から拾ったもので賄えたし、水道は公園にあるから洗濯も一応出来た。
中学に入ってからは、おばあちゃんが僕のためにお金を残してくれたと知ってそれが僕だけに分かる場所に置いてくれたから生活はマシになった。
そんな中でもお金に困ってる人がいたりしたら助けたりもしていた。
大抵の人は必ず返すといってか持って行ったが、奪うように持って行った人もいた。どちらにせよ返してくれた人もいなかったから変わらないけれど。まあ、残してくれたお金も中学ですべて無くなってしまった。
高校に入ってからはどんな扱いをしても誰も文句言わない便利な存在として認知されていたのかバイトだけはさせて貰えたので高校には通えた。給料未払いはあまりなかった。半分くらい引かれているのは毎回だったけれど。それでもお金だけは貰えてよかった。
そして最後は人を助けて死ねた。
これだけの努力の対価は――死。こんな人間の精神がまともに育つはずがないと自分でも思う。
そんな狂人が完成したのは、感情を劣化させるという技術とも言えないような術で自分を守っていたからだと思う。
辛いことがあった時だけ感情を劣化させて辛さを抑え込み、何とか普通の人間に戻る。そんな事を小学生のころには繰り返していた。だからこれは僕を表すのにとても適していると思う。
人間としての感情を残したまま、辛い感情は欠けるように、すり減らすように、切り取るように劣化させてきた。
だからまだ壊れずにやってこれた。
感謝してもしきれないほどの大事な術。だからこれが能力になって少し嬉しいとすら思える。
学校の図書室で読んだような主人公が振るうような格好いい能力を期待していた。だけど期待していたような能力ではなくとも、僕は満足だった。
よく考えてみたら生涯を表す能力なんてこれしかないじゃないか。
明確に能力になったからもう少し出来ることも増えているだろう。
だからその術に名前を付けた。
「これからもよろしく――『繊月海月』」




