番外編:後編
「今日も、た、たまんねぇ⋯⋯じゅる⋯⋯」
私はそんな情景をまた見たくて、ゲオルグから離れられなくなってしまった。そしてその時の女の子がゲオルグの婚約者であるロゼリン様だと知った。
だからどんどんゲオルグに近づいて、ロゼリン様から『浮気男!』 と怒鳴られ、制裁を加えられる様な状況を積極的に作っていった。そして彼がボコられる姿は逃さず目に焼き付けていた。
「てめぇ粗〇ンのくせに浮気とはいい根性だな! 制裁としてケツにこの太い剣をブッ刺してやんよ~」
「や、止めてくれ~!! ガあああああああ!!!!」
「ハハハハ~! どうだ、開通祝いにその剣プレゼントしてやんよ~」
「う⋯⋯うぅ」
そんな様子を物陰から見て興奮する私たち。
「ハァハァ⋯⋯ロゼリン様⋯⋯今日も無慈悲だわ! なんて素敵なの! ハァハァ⋯⋯!」
「分かりますわ! 滾りますわよね⋯⋯じゅる⋯⋯失礼、お口から欲望の汁を漏らしてしまいましたわ」
「気持ちのいい一突きでしたわ⋯⋯あぁ?! 剣をグリグリ回転させておりますわよ!」
「きゃあ! 時計回りに10回転よ!」 「鬼畜ですわ! でも好い!」 「これから皆でお茶をしましょう!」 「この感動を語り合うわよ!」
アンジュにはいつの間にか謎の仲間が出来ていた。ベール王国は男尊女卑が残る国なので、強い女性が男性をけちょんけちょんにする様子が爽快だったのかもしれない。
王立学園の学年度末のパーティーで、まさかあのボケ・ゲオルグが皆の前で婚約解消をするなんて本当に予想外だった。
私は焦った。だってロゼリン様との婚約が無くなってしまえば、もうあの熱い制裁が見られなくなってしまう⋯⋯ !
だけれど私とロゼリン様ファンの願いは叶わず、ゲオルグとのロゼリン様との婚約は破棄され、私はゲオルグの婚約者となってしまった。
そしてすぐにロゼリン様が居なくなってしまった。⋯⋯もうあの胸アツが見られないなんて⋯⋯
謎の友人集団はいつの間にか解散してしまった。あの楽しかったお茶会は過去の物となった。
私はゲオルグの妻として、公爵家で何一つ足りない物のない生活を送っているのに、常に満たされない感じがしていた。そんな生活を何年か過ごしたある日⋯⋯
「今度の週末にベール王国とトラム王国の騎士団が合同練習を行うらしい」
「へぇ~そうですか」
夕食の時間にゲオルグが騎士団の合同練習の見学に行かないかと誘ってきた。正直あまり興味はなかったけど、ふとロゼリン様とゲオルグの熱い剣の稽古を思い出し、もしかしたら何か滾る一面が見られるかもしれないと思い、出かけてみる事にした。
「凄い観客ですね」
「俺たちは一番いい場所で見られるから心配ないよ」
「一番いい場所⋯⋯流石は公爵家⋯⋯」
一応お口がじゅるじゅるしてもいいようにハンカチは五枚ほど持ってきたから大丈夫。でも使う機会なんて無いのだろうな⋯⋯と、あの時は思っていた。
そして⋯⋯ベール王国の騎士団が入場し、次にトラム王国の騎士団が入場をした、その時。
「?!」
トラム王国の騎士団にあのお方が⋯⋯?!
「ロゼリン様?!」 「え?! えぇ?」 「どうしてトラムに?!」 「騎士姿が素敵⋯⋯」 「ロ、ロゼリンが騎士に?!」 「剣強かったもんな~」
まさか本物?!
「これから合同練習を始める! これはベール王国とトラム王国の騎士団が――――」
きちんと並んでいる騎士達の中にやっぱりロゼリン様がいる。ロゼリン様が隣に並ぶベール王国の騎士の尻を、木の棒で突いて遊んでいる⋯⋯!
「正しくロゼリン様!」 「⋯⋯じゅる⋯⋯これよ、この気持ち⋯⋯じゅる⋯⋯」 「キター!!」 「き、今日はどんな場面を見せてくれるのかしらね⋯⋯じゅる⋯⋯!」 「来て良かった⋯⋯!」
ベール王国側の観客席から異様な熱気が溢れてキタ――!!
その後はベール王国対トラム王国の模擬戦が行われた。
ロゼリン様以外の試合は淡々と見学され、ロゼリン様の時は⋯⋯
「きゃあ!」 「無慈悲下さい!」 「今日再会できたのは神のお導き!」 「男共をボコボコにしてぇ~!」 「あの感動を再び!!」 「尻! 尻!」 「制裁を!」
「お~? 皆元気? 久しぶりだね~」
昔と変わらず下町のノリで手を振るロゼリン様がここに⋯⋯!
もちろん試合は⋯⋯
「ガあああぁぁぁ!!!」
「フェリックス!! 普通の試合をしろ! この馬鹿者が!」
「剣がたまたま、玉に当たっちゃいました~。しかもたまたま~尻にアイス・バレットが刺さったみたいです~たまたまですから」
「公衆の面前で何度もたまたま言うな!」
「出たぁぁぁぁ!!」 「痛そう~!」 「その男いつも偉そうで嫌だったのよ! ありがとう!」 「ホームラン!」 「ホールインワンよ!」
じゅる⋯⋯これだわ。これを私は待っていたの⋯⋯! !
「どうしたアンジュ?」
「じゅる⋯⋯失礼。ゲオルグ様、ロゼリン様はトラム王国にいらっしゃるのかしら?」
「⋯⋯多分な。トラムの騎士ならそうだろう」
「私、トラム王国に参ります!」
もうこのパッションからは離れられない! じゅる⋯⋯
「国外旅行かい? まぁたまにはいいかもな」
――合同練習終了後――
「ロゼリン! この馬鹿娘! お前がどうしてトラム王国の騎士をしているんだ?!」
まだ沢山の見学者が会場に残っている中で、大きな声を出して叫ぶロゼリン様の父、マルセル侯爵。皆が侯爵とロゼリン様に注目している。
「あ、ジジイだ。今日はトラム王国騎士団とベール王国騎士団の合同練習があるからベール王国に来たんだよ」
「か、勝手な事ばかりして! 騎士など辞めて帰ってこい! 結婚しろ!」
「はぁ? もう結婚してるぞ? ほら、あそこに息子もいる。お~い! ここに爺がいるぞ~お金もらえるから来てみな~」
な?! もう結婚している?! 息子?! 会場内が一気に驚きに包まれた。
そしてトラム王国側の見学席から歩いて来る可愛い男の子が一人⋯⋯
「は~い」
「は?! な、何だと?! へ? 孫?! この子が⋯⋯?」
「じいさん、よわそうだね。へんなの」
「ガハァ!!」
な、なんと⋯⋯
「きゃああ!!」 「小さいのにすでにロゼリン様だわ!」 「爺に蜂の一刺し!」 「将来に期待しかない⋯⋯!」 「天使で悪魔!」 「才能あり過ぎ~」 「たった三単語だけで爺を倒した!」
「か、可愛い。そして好い⋯⋯じゅるるる⋯⋯」
「⋯⋯アンジュ?」
ロゼリン様ファンの淑女達は、またお茶会で集い、定期的にトラム王国に遠征し、欲を満たしたそうな。その中でもアンジュは熱心にトラム王国に行きまくったとさ。
―― END――




