脳も筋肉も足りない婚約者
「おい、フェリックス返事をしてくれ!」
よかった。お前が無事で。親友を庇って死ねるなんてさぁ、最後の在り方として、俺ってカッコよくない?
「直ぐに治療してもらうからな! もう少しだけ待ってくれ!」
あぁどうせ死ぬのなら言っちゃえばよかったかな⋯⋯でもな⋯⋯気持ち悪いって思われたくなかったし、もし軽蔑でもされたら俺は生きてはいけなかったよ。結局もうすぐ死ぬけどさ⋯⋯
「おい! 返事をしろよ?! 頼むからっ!」
「あ⋯⋯ぃ⋯⋯」
愛してたよ親友。同性の親友であるお前にこんな気持ちを持ってごめんな。俺が女だったら素直に伝えられたのかな。 もしまた会えたらその時は――――
「ロゼリン・マルセル侯爵令嬢! 貴様は私の幼馴染であるアンジュ嬢に対して酷い嫌がらせをしているそうじゃないか! その様な悪行に走る者を私の婚約者としてを許す訳にはいかない!」
「ゲオルグ様、私は大丈夫ですわ。ゴホゴホ⋯⋯」
「アンジュ大丈夫か? こんなにも細く、か弱い其方を守れるのは私だけ――――」
「ゲオルグ様、あなたのその細腕で何ができるのです? 戦闘にでもなったら五分も持ちませんよ」
本日はここ、ベール王国にある王立学園では学年度末のパーティーが華やかに行われている。この学園の全校生徒である13歳から18歳までの貴族子息、子女達が華やかな衣装を纏って揃い、またその初々しい姿を見守る父兄達も招かれている大きなパーティーであった。
まだ年若い生徒達が参加する為、午後五時から始まった会場には開始早々沢山の人々が集い、談笑に花を咲かせている。そんな和やかな時にいきなり始まった断罪劇⋯⋯ロゼリンは冷めた目で産まれた時から定められていた自身の婚約者である阿呆なゲオルグを見つめていた。
「戦闘とは何だ?! 今は平和な時代だぞ! 貴様のそういうガサツな発言が気に入らぬ! 婚約は解消だ!」
「婚約解消? これはあなたの浮気が原因の破棄でしょう? どうみてもあなたの有罪です。はぁ~全くケチ臭いですね、慰謝料くらいパパっと払いなさいよ」
「なっ?! 元はと言えば貴様のアンジュに対する仕打ちが原因だ! こっちが解消にしてやると言っているのに!」
「私はそのアンジュさんとやらには何もしておりませんよ? むしろそうおっしゃっているゲオルグ様こそが率先して無体を働いているではありませんか。昨日だって体の弱いアンジュさんの服を肌寒い図書保管庫でむしり取って凍えさせたり、日夜寝台でパンパンと打撃を与えたり――――」
「な、何を言っておるのだ!! 婚約は解消だぁ!!」
「慰謝料もパンパンと払って下さいね~。即ですよ? ゲオルグ様くらい早くですよ? いつもアンジュさん相手に10秒も持たな――――」
「だ、黙れぇ!!」
私、ロゼリン・マルセル侯爵令嬢18歳は本日を持って婚約破棄となったのだった。
あぁすっきりした。だがもちろん⋯⋯




