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社畜監査官だった俺、貧乏第八王子に転生したので王宮の無駄手順を全部“昼寝できる仕組み”に変えます  作者: 花守りつ


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祝灯式の教材台は、帰っていない子の保護札を足にできません

北塔の端に、小机の脚が一本だけ戻った。


机にはならない。板も足りないし、椅子もない。それでもノエルは、石床に布を敷き、その脚を横に寝かせた。


「これで、札を床に置かずに読める」


ミナが朝粥椀を三つ、脚のそばへ並べた。食べるための椀ではない。サラ、ピム、そしてまだ字が読めない空白の子の札が、冷たい床に直接置かれないための重しだった。


テオは入口灯を扉の内側へ寄せる。


「帰ってきたら、ここが明るいって分かる」


ルカは帳面を開き、西保管棟から持ち帰った薄い札を読み上げた。


「祝灯式準備課・付属物再配分予定。第八王子小机部材一、保護教材札三、教材台足部へ流用可。理由、教育的展示効果あり」


教育的展示。


前世の監査机で、その言葉を見た時は、たいてい現場の椅子が一つ消えていた。


「教材台って何を教える台?」


整理係の使いが、北塔の入口で鼻を鳴らした。


「帰還不能児童の保護例を、祝灯式で説明するための台です。殿下の小机は低くて見やすい。保護札も並べれば、来賓に分かりやすいでしょう」


「分かりやすいのは、帰っていない子が読まれないことだけだ」


ノエルは小机の脚を指で押さえた。


「ルカ。四条件」


「はい。保護札を動かす前の生活到着条件。本人名を呼べること。入口灯が点いていること。朝粥椀が本人前にあること。本人が読める、または読める人に頼める席があること」


「展示台の足は?」


「どれも満たしません」


ミナが椀の一つに、湯気の残る粥を半分だけ注いだ。


「サラの札を見本にするなら、先にサラが食べる場所を残してください。食べる人がいない粥を、見本にしないでください」


テオは二枚目の札を入口灯の下へ置いた。


「ピムの札は、呼ぶまで閉じません。教材じゃなくて、入口で待つ名前です」


三枚目の空白札だけは、誰も名前を読めない。


使いはそれを見て笑った。


「名前が読めないなら、展示にはちょうどいい。匿名例として――」


「匿名例じゃない」


ノエルは、小さな手で空白札の角を押さえた。


「読めるまで待つ子だ。読めないから台にするんじゃない。読めないから、床より高い場所へ置く」


エリネが北塔生活窓口の板切れを持ってきた。まだ正式な机ではない。昨日まで薪台の横板だったものだ。


「脚一本と横板一枚なら、読む台になります。展示台には足りませんが、本人札を床から上げるには足ります」


「それでいい」


ノエルは青い保留札を書いた。


保護教材札三枚、教材台流用不可。本人到着・入口灯・朝粥・読める席、未完了。


ルカがその文を、祝灯式準備課の薄い札の上に写した。ミナが粥椀を一つ、台の下に置く。テオが入口灯の火を少し強くした。


小机の脚一本と、古い横板一枚。


それだけの高さで、三枚の札は床から離れた。


誰も帰ってきていない。誰の問題も解決していない。けれど、帰っていない子を見せ物の足にする処理だけは、いま止まった。


その時、横板の裏から、古い朱印が浮いた。


ルカが息をのむ。


「殿下。この横板、北塔の板ではありません。『保護者確認印箱・仮置台』の焼き印があります。七年前、殿下の保護者欄を読む時にも、同じ台が使われています」


ノエルは眠気の残る目で、三枚の札と横板を見た。


子どもの札を床から上げる台が、昔は自分の保護者欄を勝手に読む台だった。


「じゃあ次は、その台が誰の目の高さに合わせて作られたかを読む」


祝灯式より先に、読める高さを取り戻す。


北塔の小さな台は、まだ机ではない。


でも、誰かを材料にしないための席にはなった。

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