異世界といえば…
ノーマから提案された共存共栄計画をレントに共有した所、レントのテンションが爆上がりした。どうやら国軍の攻略が進まず、彼等のDPが一向に溜まらない事に苛立っていたらしい。
「手始めに領主を拐ぅてきてダンジョンへ放り込んだるわ。ワイらは一層で待機して奴が排出される度に放りなおしたら良ぇやろ♪何度でも何度でもなあ〜w」
めっちゃ嬉しそうに鬼畜な案を提示するレントには、ノーマも私もちょっと引いたよ… けど、その前に準備しなきゃいけない事があった。
「流石にそれは、やりすぎじゃねぇか?心が壊れちまったら進化しても使い物にならないぜ?」
「私は良いと思うよ?どうせレントが【隠し】て連れてくるつもりなんでしょ?それよりも、先にロンさん達ハーフリングの進化をしちゃいたいんだけど…」
「あ、こら!【影】を省略すなっ! けどロンさん達まだダンジョン攻略始めてへんやん。どうすんねん?伯爵と一緒に放り込むんけ?」
「な、なんちゅう事を…ここに仲間にも一切容赦しない鬼畜が居ますよ!? ノーマさん、言っておやんなさい!」
「茨城出身の偉人を出すなよ分かりにくい…レント、どうしてこんなに早くダンジョンポイントが貯まったか分かるか?」
「へ?そら毎日毎日、ロンさん達ハーフリングが…魔核を…ああ!そうや半年間、毎日毎日300個近い魔核が納品されてたんやもんな…そらカンストするわな」
「な?ロンさん達のDPは既に一人平均10,000ポイント近く貯まってるんだよなw 種族進化に必要なポイントは3000〜5000ポイントだぜ?好きな種族が選べて、ジョブも自由に選択出来る数字だ」
「ふっふーん♪どうよ、レント。私達の頑張りのお陰じゃない?…獣人が現れるかもしれないんだよ?凄くないっ!?前に"オワタ"さんにお願いしたら断られたのにね〜…」
「おまっ…マジでそんな事、お願いしたん?」
「当然でしょう?モフモフこそ異世界。モフれない異世界なんて異世界と認めないよ!モフりリストの私が断言します!」
「なんや "モフりリスト"て、アホか…けど進化したかて、どのくらい強化されるかまだ分からへんしな…ロンさん達に頼んで早速、実践してもらおか♪」
「なら最初に私がやる!私ならゲームの時のステータスが分かるから検証しやすいじゃん?」
「そうだな、ロンさん達じゃ基準になるステータスが分からないもんな。とりあえず、明日の朝一で皆この管理室に集まってもらってくれよ」
「了解したであります!」
「「キキリさんの真似は止めて」」
2人が何だか疲れた顔してたよ…
◆
──翌朝
私はハーフリングの皆と一緒にノーマとレントの待つ管理室に入る。管理室の隣りが最奥の100層になっていて、現在100層にボスは配置されて居ない。だってドラゴンがまだ見つからないんだもん…
「ねぇねぇ、ヨーダちゃん、その進化?ってやつをやれば私達もヨーダちゃんみたいに ぴょんぴょん飛び跳ねたり出来るようになるのかい?」
カカルさんが不安げに私の顔を見る。
「ん〜…まだちょっと何ともハッキリした事は言えないんですよね、皆は先に私の進化を見届けてから、どうするか決めてくれて大丈夫ですからね?」
「ワクワクするような、けど不安なような…不思議な気持ちさね。ガラにも無く落ち着かないよw」
「私は心配していません。ヨーダさん達と出会ってからこれまで一度も悪かった事なんて有りませんでしたからね。フフフ、今日も期待していますよ」
「うん。毎日ご飯、嬉しい♪」
「そうです!毎日働いて、毎日ご飯を食べれているでありますよ♪これ以上の幸せは知らないのであります!」
「か〜…夢が無いねぇ〜、酒も毎日飲めなけりゃ人生損するぜ?やっぱ酒だよ酒!」
「そうだな〜、街のゴミ箱を漁ってた頃に比べりゃ天国にいるような心持ちだな〜♪」
皆、今の暮らしには満足しているみたいで、表情は明るい。まだまだ街中で不遇をかこつハーフリングの仲間達のためにと、毎日命懸けで魔物を討伐し、目を皿のようにして血眼で魔核を探し、狩りや採取に勤しんできたんだもん。報われなきゃ嘘だよね…
「おっはよーッ♪」
転移門から管理室の扉を開けるとノーマとレントは立上がって私達を迎えてくれた。
「皆さん、おはようございます。皆さんのお陰でこうしてダンジョンのレベルを最大にする事が出来ました。先にお礼を言わせて下さい。 「ありがとうございました!」」
レントとノーマが並んでロンさん達に頭を下げるとハーフリングの皆は照れくさそうにモジモジしている。ホンさん以外はね… けど、私は知っている。ホンさんは照れくさい時ほど無表情になるのだ♪仕方のない奴www
「ではでは、行ってきます!ノーマお願い」
「おう、任された」
「緊張して屁ぇこくなよ?」
「こくかっ!アホ、レント!」
「ヨーダちゃん、頑張って〜…」
カカルさんの声援に応えて右拳を突き上げてみた。何だか世紀末なコブシの王様気分で扉を開く。
管理室から最奥100層へ入り中心部に在る金色に光るサークルの中に進む。100層は体育館程度の広さに設定してあるので、何だか学校の卒業式に出席してる気分になった。一瞬、母の顔が脳裏を過る…涙が溢れそうになったけどグッと堪えた。
サークルの中心部に立ち、天井に向かって顔を上げてから目を閉じた。
「準備良いよ、お願い!」
閉じた瞼を透過してくる金色の光りが私を包んだ…瞼の裏に自分のステータスが表示された。
名前:ヨーダ (Account:Maki Iyota)
種族:ハーフリング(♀)
職業:ダンジョンメイカー
:(継職:罠師Lv99)
HP :1000(max!)
MP :333
STR :33(max!)
DEF :72
INT : 81
DEX :99(max!)
LUK :10
【スキル】
ダンジョンマスター
【継承スキル】
縄術ロープワークLv10
投擲Lv10
属性魔法(土)Lv10
ボマーLv10
《種族進化が可能です。進化しますか?Y/N》
頭の中に声が響く…これ"オワタ"さんじゃん… ちょっとガッカリしながらも "Y" のYesに意識を向けた。
《現種族ハーフリング → 進化先選択》
:(S)pirit HalfRing
:(D)warf
ハーフリングって二択らしい。骨格などが全く違う種族は選択肢にも上がらないんだね〜…ん~?スピリットハーフリング?って何や?ドワーフはあのお髭モジャモジャ、筋肉盛り盛りチビマッチョ?だからパス!…ん~、女は度胸じゃ!〈S〉!スピリットハーフリングじゃあ!!!
──ピコッ!
《受託しました。進化しました》
「え?…終わり?は?…超アッサリだな…とりあえずステータスオープン!」
名前:ヨーダ (Account:Maki Iyota)
種族:スピリットハーフリング(♀)
職業:ダンジョンメイカー(継職:罠師Lv99)
HP)1000 → 3,000
MP)333 → 9,999
STR: 33 → 99
DEF : 72 → 99
INT:81 → 99
DEX : 99 → 99
LUK:10 → 10
【スキル】 ダンジョンマスター
スピリット(ノーム属)
【継承スキル】 縄術ロープワークLv10
投擲Lv10
精霊魔法(ノーム属)
ボマーLv10
「おおおっ、HPは3倍、MPは…えっ、30倍!?、その他のステータスは軒並みカンストしてるし… んん〜?何じゃこりゃあ?スピリット?ノーム属って何?あ、属性魔法も精霊魔法に変わってる…レベルは無いんだ?」
『おい、後が閊えてんねんぞ。
終わったら早う戻らんかアホ』
レントの声がマイク越しに響く。情緒もヘッタクレも無いな…何だかションボリと歩いて扉へ近付いて行くと、視界の済にチラチラと蛍のような仄かな光りが映った。
「え?ホタル…じゃないっ!わあ、妖精さんだ〜…
あれ? どっかで見たような顔してる…」
──バチンッ!
私は咄嗟に蚊を退治する時のように両手の平を激しく叩いて妖精を捕まえてみた。蛍火のように身体から仄かな光りを発しながら目を回している妖精の頬を指で挟んでグニグニと回していたら思い出したよ。
「ッ!……これって現世の私じゃんか!」
『ええから、早う戻れ、アホヨーダ!』
「あわわっ、めんご、めんご、(汗)」
レントに怒られちゃった、私は妖精を右手で掴んだままブラブラしながら扉から管理室に戻る。
「見て見て〜、妖精さん捕ったどーっ!♪」
管理室に居た皆に見せびらかすように胴体を鷲掴みにして妖精を前に出したら皆が何故か私を見て引いているよ?
「あれ?妖精だよ?珍しくない?」
「「………」」
ノーマが頭を抱え、レントは残念な子を見るような目で私を見ている。ちょっとムカつく…
「何よ。その目は、皆もどうしたの?そんな痛々しい目を私に向けてさ……」
カカルさんが私に近付いてきて、私の手に握られて目を回してる妖精を指差す。
「ヨーダちゃん…その妖精ね、あんたの頭から出てきたんだよ…ポンッて感じに飛び出してきたよ?あんたは何も感じなかったのかい?」
「ふぇっ?じゃあこれ、私の……脳みそ?」
「アホ、恐い事言うなや!皆がビビっとるやろが!
それより、どんな感じやった?進化したんやろ」
「あっ、そうそう、ステータスは全てカンストしててさ、HPは3倍、MPはなんと30倍になったよ!あとね、【スピリット】っていう新しいスキルが生えてた。後、土属性魔法が精霊魔法ノーム属?ってのに変わってたよ」
「スピリット?って…もしかしてお前が今手に持ってる精霊の事じゃね?確かスピリットって、精霊とか妖精の事だぞ?ノームは土の精霊じゃなかったかな」
ノーマが呆れたように私の手に握られ力無くダランとしてる妖精を指差す。
「え?これが…妖精?─ぶはっ!ちょ、止めてよ!アハハハハハハハ、ほら、これ見て?生前の私とそっくりだよ?…妖精って柄じゃないでしょーッ?w
アハハハハハハハハハハハハハ……」
「「「「………」」」」
「うん、進まないな…次、誰が行きますか?ロンさん?カカルさん?とりあえず害は無い事は確認出来ましたから、安心して進化してきて下さい」
「「「「「……は〜い 」」」」」
そしてハーフリングの皆は順番に進化を果たした。
選択した種族とジョブはこんな感じ…
ロン・ハグブライト> ドワーフ(Crafter)
カン・ハグブライト> ドワーフ(Farmer)
キキリ・ハグブライト>ドワーフ(Fighter)
チン・ハグブライト> (Archer)
スピリットハーフリング(Sylph属)
カカル・ハグブライト>(Crafter)
スピリットハーフリング(Undine属)
ホン・ハグブライト> (Mage)
スピリットハーフリング(Ifrit属)
一番意外だったのはホンさんかな。まさかの精霊魔法使いでイフリート属だって、カッコ良!
ロンさんがクラフト職なのは、たぶん私がみっちり罠の仕掛けや爆弾製造を仕込んじゃったからかな?
カンさんはスピリットハーフリングになるのかと勝手に思ってたんだけど種族はドワーフで職業はファーマーを選んだ、農業がやりたかったって言ってたしね。
キキリさんは人柄そのまんまだねw 進化して一番喜んでたのは彼女だったりする。
カカルさんは職業はクラフターで属性はウンディーネだ、水商売をにはもってこいかも。
案の定、ロンさん、カンさんは髭がモジャモジャっと生えてきた。キキリさんは少し筋肉が増えてガッシリした程度で然程の変化はない。髭も生えなかった、良かった…
ドワーフは元々土精の眷属だから土魔法に加護があるらしい。火の神様の加護も有るらしいから火を扱っても火傷一つしなくなったと喜んでいる。
カンさんに自分のステータスを見てもらったら、力強さを表すSTRの値はLv 1 の時点で56も有った。キキリさんは、STR 65 だって…化け物かよ…ゲームだとドラゴンのSTR が55 に設定されてたんだよね…そのまんまの設定だったら、キキリさんは現時点でドラゴンが討伐できる事になる。カンさんもドラゴンと戦える農夫だね…
皆の進化が無事に終わった後、呑めや歌えや踊れやのドンちゃん騒ぎ、ノーマ、レントと私の未成年組は早々に退散した。皆、翌朝まで酒飲んでいたらしい…
◆
──翌日
「領主を人外にする前にさ、ビッグフットを探しに行かない?私まだビッグフットを見た事無いのよ」
ノーマ、レントと私の3人で管理室に集まり、作戦を練っている。ハイドシャイニー地方の領主はクラウド・ハイド伯爵。領都はダンジョン傍に有るハイドシャイニー市。
本来なら奴隷階級の亜人種を難民として受け入れたりはしないのが、この国の常識らしい。 そんなお国柄なのにハイド伯爵は亜人種を奴隷として扱ってはいても切り捨てたりはしていなかった。
売れ残った奴隷にも最低限の食事を取らせるように法を作って保護しているとか…日本人的には奴隷扱いしてるだけでアウトだけど、この国の中ではかなり人情派だと思われる。
「ああ、ビッグフットなぁ〜…あれはダメじゃねぇか?なあ、レントはどう思うよ?」
「そうやな〜…ちと難しいかもしれへんな…」
2人は腕組みして苦笑いしている。
「どうして?だって皆2mを軽く超えちゃうような大きさの人達なんでしょう?力も強いってロンさん達も言ってたよ?」
「ええかヨーダ。そんな力も強くて大きな人種がやで、何故人間なんかの奴隷になっとったり、小さなハーフリング達と仲良ぅ出来たと思う?」
「え?……それは……なんでかな?実は力が無いとか、もしかして身長が大きいだけでヒョロっとしてるとか?」
「いんにゃ、力は熊並み、ガタイは筋肉だけ大きゅうなった関取以上や。ただなぁ〜…」
レントがノーマを見ると、ノーマも肩を竦めた。
「優しいんだよ…それはもう、信じられないくらい優しいんだ。 いわゆる"虫も殺せない" のを体現してるような優しい種族なんだよなぁ…」
「せや。それこそ犬にションベン架けられても、鳥に糞を落とされても、子供らにバカにされても笑っとるだけや。誰一人、怒った所を見たことがないらしいんやで? そんな優しい人らを魔物と戦わせるんは気の毒やで…だいたい、どうやってダンジョンポイント稼がせるか…………あ」
「だよね?」
「魔核を拾ってもらえば良いのか。そうだったな。
明日、街の奴隷市に行って競り落としに行くか?」
「せやな!異世界=奴隷ハーレムやん!♪
忘れとったわ〜…あ!、わ、ワスレトッタワ〜…」
「あちゃ〜…言わないようにしてたのに……アホが」
レントが私のジト目に気付いて目を逸らす。
「本当、男子って下の事ばっかりね…サイッテー…」
ノーマも顔に手を当てて私の方を見ない…ふんっ、しょーもない奴らやで、ホンマに……明日は絶対にビッグフットの男性奴隷を競り落としてやるもんね! そう心に誓った朝でした…




