義母兄竜
暴力・流血表現がございます。苦手な方はご注意ください。
皆で私の家にやってきた。
ここまで歩いている間に、起きている人に会わなくて静まり返っていた。不気味に思いながら玄関のドアノブに手を伸ばす。
「……敵がいたり、しないよね」
「ティナ」
エディが私の肩を押してドアを開ける。
──ギィ
薄暗い屋敷、絵画や壺が割れて床に散乱していた。それに──。
「ッ……」
壁に獣の爪痕が刻まれていた。明らかに荒らされている様子に言葉が出ない。
怖い。これは獣人の仕業だ。
「ティナ……」
私に伸ばされて触れる直前で止まるエディの手を右手で握りしめる。
「大丈夫。エディたちは優しい獣人だもの」
人間にも優しい人間と平気で人を傷付ける人間がいる。獣人も同じだ。
エディの手を握りながら進んでリビングルームに入るとそこは更に酷い有り様だった。
壁に飛び散る血を見て呟く。
「父たちは殺された……?」
「いえ、殺されてはいませんよ」
セントス様が答える。
「無事とは言えないでしょうけどね。あなたが暮らしていた屋根裏に行きましょう」
なんでセントス様がそれを知っているのかと思わなくもなかったけどそれより早くここから離れたい。
皆を屋根裏部屋に連れていく。
「ティナ、大丈夫か?」
エディはずっと手を握っていてくれた。少し落ち着いてきた私は答える。
「大丈夫よ。それより屋根裏部屋が狭く感じるわね。さすがに大の男が4人もいたら」
「では私は妖精の姿になりますね」
そう言うとセントス様に妖精の姿で宙に浮く。
「主、また子供の姿になったらいかがです?」
「ネイツ、そなた命が惜しくないようだな」
「お可愛らしかったですよ」
「ふん」
「サイネスも気が小さいからちっちゃくなったら良いわよー」
「なれるか!!」
「えっと、多分もう大丈夫ですよ」
私たちは部屋の中で円になるように座る。
「それで、セントス、何があったんだ」
「はい、ご説明します。昨日ティナさんが国外追放を言い渡されたあとからの出来事を」
セントス様は話し始めた。
──────
「ははっ、これであの邪魔者がいなくなったな」
「そうですわね!!マルクス様!!」
「ではナンシー、お父様とお母様は家に帰るからな」
「はいお父様!!」
王宮でティナに国外追放を言い渡したあと、夫妻はすぐに自宅へと帰った。
王宮内に戻り国王にティナを追い出したことを報告しに玉座の間に入ったマルクスの目に入ったのは倒れる国王の姿だった。
「父上!?」
「聖女は追い出したようだな」
玉座に座り国王の頭を足で踏みつけている銀髪の男に駆け寄るナンシー。
「ナンシー!?お、お前誰だ!!」
「ロイド様ー!!私やりましたわぁ!!」
「ああ、よくやった」
「きゃー!!」
「ナ、ナンシー……?」
呆気に囚われるマルクス。
「さて、愚かな人間ども、今この時を以てこの国は私のものになる。せいぜい私のために身を粉にして働くが良い」
「な、何をふざけたことを!!父上から離れろ!!」
ロイドに掴みかかるマルクスの首をロイドの手が掴む。
「私に命令するな。愚かな人間」
「……ヴぁぁ……化け物……」
ロイドの手は獣のもの。自らの首にかかる鋭い爪に怯えるマルクスを床に叩きつける。
「人間は弱い。明らかに劣る生き物と同等に共に生きるなど馬鹿らしいことだ。そのような人間は私の奴隷となるしか生きる意味はないというのに……。ナンシー、そなたはよく働いてくれた。そなたは特別に私のそばにいることを許す」
「はい、ロイド様ぁ!!私嬉しいです!!」
「せいぜい私の役に立つのだぞ」
「はい!!」
王宮内はすぐにロイドによって占拠された。
その後ロイドはナンシーに案内させ家に行きティナが育てた植物を探させた。
その際に騒ぎ立てた夫婦はついでのように払いのけた。
両親を助けるように請うナンシーにロイドは笑いかけて夫妻をゴミを見るような目で見る。
「愚かな人間よ、私の役に立つのなら生かしてやろう」
「な、何を!?ナンシー、どういうことだ!!」
「お願いお父様、お母様、私この美しい方のお妃様になりたいの!!」
反抗しようとする夫妻を切り割いたロイド。
「ナンシー、どうする?」
「私のお願いを聞いてくれないお父様たちなんていらないわ。ごめんなさいロイド様、やっぱり殺して良いですわ」
夫妻にトドメをさそうとしたその時妻が叫んだ。
「お願い!!あの娘が育てた薬草なら持ってるわ!!」
「……ほう?」
「ひ、一つだけ、だけど、美容に良いらしくて……」
「持ってこい」
血を吐きながら妻が持ってきた薬草を見たロイド。
「ふむ、確かに山猫一族の力を感じる。女、命拾いしたな」
「は、はいぃ」
「ではそいつだけ殺すか」
「お、お待ちください!!あの娘に関するものをご所望ですか!?」
「そうだ」
今度は夫の方が血を吐きながらどこかに行き戻ってきた。その手には髪の毛の束が握られていた。
「あの娘の髪の毛です」
「ほう……良かろう」
そうして他の獣人が夫妻を王宮へ連れていった。
──────
セトスの話を聞いた私たちはしばらく黙り込んでいた。
「か、髪の毛……私の髪の毛って何に使うの!?っていうかなんで持ってたの!?」
「落ち着いてくださいティナさん」
セントス様が私の目の前でぷかぷか浮いて宥めようとしてくれるけど私は気持ち悪くなる。
「獣人の能力は微量ですが体そのものにも備わっています。絶滅した山猫一族の力でしか育たない薬草は王宮の畑に山猫一族の獣人の骨を埋めて育てています」
「し、知りたくなかった」
ガタガタ震える私の肩をエディが抱く。
「安心しろ。ロイドは我が殺す」
「髪の毛も取り返して燃やして」
「わかった」
「ティナー大丈夫ー?」
心配してくれるルルを手のひらに乗せる。
「全然大丈夫じゃないわ。こわっ」
「怖いねー」
うん、ホラーだ。エディの義兄の残忍さを恐ろしく思いつつ、私のことを虐待していた父が私の髪を保管してたのも恐ろしく感じた。




