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10月3日 夕方

「ってりょうちゃん、あたしのことシンデレラって登録してんの?」


 ちらっと俺のスマホ画面を見たあさみが言った。

 そういえば、4月にあさみん家(ち)でシンデレラの絵本を見たとき、ライムのあさみのニックネームをシンデレラに変えたんだった。

 もう見慣れてしまっているから特に気にせず画面を開いてしまった。


「あ、まぁ、そう。」


 なんでもないことのように肯定してさらっと流す。

 そしてすぐに話題を戻す。


「これって解答例はないの?」

「あるにはあるけど、誰かとかぶったらマズいかと思って見てないよ。自分の言葉で書いた方が安全じゃない?」

「ふむ、それもそうか。出席で6割とか言ってたよな?」

「言ってた。」


 あさみは特にこだわることもなく話に戻った。

 なんとか誤魔化せたようだ。


 大学に入って、サークルに入って、初めてあさみと会ったとき、お姫様みたいだと思った。

 映画のシンデレラのような大人な感じの女性とはちょっと違う。もう少し幼くて、イメージとしてはプリンセスって言葉の方がしっくりくる感じだ。

 外見に惹(ひ)かれて、話してみて中身にも惹(ひ)かれた。

 そして好きになった。


 あの日、シンデレラの話をした時、あさみが『シンデレラは生まれながらにお姫様じゃない』と言っていて、たまらなく愛しいと感じた。

 こみ上げるような感情で、はっきりとした理由は自分でもわからないけど。

 だからライム上のニックネームをシンデレラに変えた。

 …けど、そんなこと言えるわけもない。


「それで、シンデレラってどういうことかな?」


 が、唐突に問いが返された。

 誤魔化せていなかったらしい。


「いやー…よく思い出したな。」

「今さっきのことだからね。ほら、話をそらさない。」


 正直に答えるのは恥ずかしい。


「や、前にさ、絵本あったじゃん。」

「ウチに?」

「うん。そんときに変えてそのままなんだよねー。」

「え、なんで?」

「なんでって…なんとなく。」

「なんとなく?」

「そう、なんとなく。」

「……」


 ジト目で見られる。


「そんな目で見るなって。本当、大した意味はないから。」


 今日はそれで通した。


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