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2月2日 夕方

 やっと家に帰って来れた。

 今日は他人の揉め事に巻き込まれてとても嫌な想いをした。

 これでやっと一息つける、と思ってソファに身体をあずけると、スマホが鳴りだした。

 この音はライムの無料通話だ。誰だよ。

 …あさみちゃんからだ。


「はーい。」


 気分は真っ暗だが、明るい声をひねり出す。


「また浮気されたんだけどー!」


 叫ぶような声。


「おおう、今度はどうしたの?」

「どうもこうもないよー…りょうちゃん今暇?」


 飲みの誘いだ。気疲れが吹き飛ぶ。

 即行(ソッコー)でシャワー浴びて、着替えして髪型作って行こう。


「うん、20分くらいで出れるかな。」

「じゃあ…んと、行きたい店ってある?」

「いや特にないけど…」

「けど?」

「あ、ごめん別に続きがあるわけじゃないんだ。」

「そっかー…」


 そうだ、このあいだサークルの飲み会場の候補になってた店はどうだろうか。

 写真では北欧系のおしゃれな内装で、料理の盛り付けも見栄えが良かった。

 たしか名前は、ポーラーベア。


「あ、ポーラーベアは?」

「なにそれ?」

「オシャレ的なカフェ的な飲み屋。女子向けの。行ったことないけど。」


 言っててずいぶん雑な紹介だと気づき、笑ってしまう。


「あははは、『的な』ばっかじゃん。…っふふ、場所は?」

「んー、大和書店の交差点わかる?」

「うん。」

「そっから西にホテルあるじゃん。」

「西ってどっちかわかんないけど、緑色のホテル?」


 緑色…?

 白いホテルだと思うけど…ああ、看板のネオンが派手な緑色だからそれか。


「そうそう、その手前にあるちっさいビルの2階。」

「ん、わかったー。でも待ち合わせはビル前でいい?」

「おう。」


 愚痴聞きが目的とはいえ、浮気話なんて10分で終わる。俺にとっては好きな娘(こ)との飲み会だ。昼間下がった気分もこれで帳消しにできそうだな。



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