迎撃するんじゃない。歓迎するんだ
冒険者も毎日挑んで来るわけではない。
特に装備を奪われた冒険者はすぐに挑めない。
最悪、別の街に移動して銭を稼ぐことになるだろう。
おそらく今、近くにいる街の冒険者は全て倒してしまった。
逆に他の都や街の冒険者がすぐさまこのダンジョンへやってくるかというとそうでもない。
このダンジョンがある地域は、都から遠く、都市同士を結ぶ幹線からも離れている。
元が初級ダンジョンしかないような僻地だ。上級や超上級冒険者は滅多に来ない。
仮に遠くからわざわざ来るとしても十日はかかるだろう。
この前やってきたのは例外中の例外だ。
何が言いたいかと言うと、新たな冒険者が来るまで時間があるということである。
俺がこのダンジョン全体を知り、最低限の戦術をアンデッド共に与える程度の時間が担保されている。
「ご覧ください。みなが活気づいております。王の作戦練習を楽しんでいるのです。実に良い眺めではないですか」
訓練を指揮していた俺の横で骸骨が喋った。
未だに名前がついていないのは、このよく喋る骸骨だけである。
他の骸骨やその他アンデッドは全員名前が判明した。
「生前の名前は、自分の本当の名前ではない。魂の名で呼んでくれ」とかいう変な奴もいたが、とにかく名前はわかった。
で、この骸骨だ。勝手に名前を付けるのはあれなので、単に骸骨と呼ぶことにしている。
他の奴らは骸骨だ。
ちなみに、他の古株に聞いたところでは、この骸骨はここに霊園ができる前からいたらしい。
ここがダンジョンになったのは、霊園ができたあとなので、元ははぐれモンスターといったところだろう。
気づけば、彼らのまとめ役になっていたとか。あまりうまくまとめてはいないが。
こうして日々戦術を各園でたたき込んで日々を過ごした。
俺自身も闇魔法の研鑽に力を注ぐ、以前よりも闇魔法の出力が上がりづらいと気づいた。
おそらく、いただいた首飾りの効果だろう。
出力がなかなか上がらない代わりに、以前よりもかなり落ち着いて戦えるようになっている。
「惜しいですなぁ」
「何がだ?」
「臣は、王が闇を纏い、苛烈に戦うときの――まるで踊っている様が好きだったのですが」
俺自身も闇魔法を使っていたときの高揚感が薄れていることは感じている。
それでもまだ出力を上げきっていない。本気で上げようと思えば上げられるだろう。
強敵が現れたときは、おそらく出力を上げて戦うことになろう。
問題はやはり低位魔法になる。
他は、中遠距離に合わせて変えていってるが、低位だけはどうしようもない。
「闇でございますな」
「ああ」
本当に闇。
目の前でふわふわ浮く闇をつつく。
闇はぷにゅっと押され、ぶるぶる震えて消えてしまった。
「わかりませんな」
「ほんとにな」
「全員が訓練を楽しんでおります。早く実践の場が欲しいとも言っております」
「そうか。俺もだ。……待て、全員? お前が訓練に参加しているところを俺は見たことがないぞ」
「ははは、これは手厳しい」
骸骨は笑って地面に逃げていった。
けっきょく最後まで訓練には参加せず、思い出したように現れては俺の横でだべっていた。
こんな日々がしばらく続き、ようやく実践の舞台が訪れた。
「王よ。冒険者です。数は五」
「ついに来たか」
十日は来ないと思っていたが、まさか二十日も来ないとは思っていなかった。
だが、ありがたい。訓練は形になりつつある。
「奴らにみせてやるとしよう。俺たちの訓練の成果を。俺たちの目指す夢を――」
時は真昼時、夜じゃないのは残念だが、言っても変えようが無い。
アンデッドの弱まる昼に来ることは、冒険者にとっては定石だ。日が雲に覆われているだけ良しとしよう。
さあ、冒険者達を歓迎しようじゃないか。




