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18- 眷属、高高度降下!

『各員、点呼』

 人一人しか入れない降下ポッドの中で機械音声が木霊する。正面にある空中ホロディスプレイには降下ポッドの形をした画像に1~5の番号が振られ、その上には戦闘機の翼を小さくしたような……宙間戦闘機のシルエット画像がついている。そちらにも1~5の番号が振られている。

『ドレイク1、問題なし』

『ドレイク2、システムオールグリーン』

『ドレイク3、異常なし』

 映像が出る。どれもこれもが人じゃない、いや当たり前だな。爬虫類めいた顔……この場合はワイバーンの顔が出ている。4と5も同じように返答するが、どこか機械的に見える。

『ブルム3、出撃可能』

『ブルム4、準備完了』

 コールサインがブルムに代わり、3番以降の者が返事をしていく。こちらも爬虫類めいた顔だが……手があり、さしずめ「竜人」といった容姿をしている。ワイバーンが手が翼になったタイプの、子供のような小ささに対し、竜人たちはがっしりとしている。我も今はその形で、手を見ると人間の手がゴツゴツとした鱗に覆われたような、そんな感じになっているが……。

『ブルム1、返答どうぞ』

「あ、ああ。ブルム1……大丈夫だ、いつでも行ける。が――

――何故このようなことを我もせねばならぬのだ、リラ!

 我がそう叫ぶとブルム2の映像が開き、拡大され、『なるべくインパクトのある登場を頼むといったのはドライグ様ですよ』と青色の竜人が喋った。我の身体と違い、ウロコに覆われておらず、イルカのようなつるんとした肌になってはいるがそちらも竜人姿だ。なぜ、このようなことになったのか。それは4日前に遡る。


《ドライグ様、眷属とはもしかしてドローンや戦闘用ロボットのことでしょうか?》

 リラがそれを聞いてきたのが、丁度人間モドキにそのことについて、話していた時だった。我は通信だけで『そうだ』と端的に返した。

《現在、ドローン・ロボット共に10機揃っています。全部は過剰戦力かつ、船の守りが疎かになると愚考しますが、如何なされますか?》

 確かに我より劣るとはいえ、今現在で遭遇した全ての敵で勝てる者はおらぬからな。数で圧倒されたら、エネルギー切れが心配になるくらいか。

『とりあえず5機ずつで、ただし――』

 せっかくだ、外見を揃えるとしよう。リラに改造案の提示を行う。今の状態では、戦闘機にロボットと、我には不釣り合いだ。

『これで頼む。生体パーツは今回狩った奴らで補え、不足なら辺りの魔物を狩って構わん』

《武装減及び部品の劣化率が増えることにより、戦力値の減少及びコストの増加が発生しますが問題ありませんか?》

 ほぼノータイムで注意が飛んできた。まぁ、確かに基本的にこれ以外にも固定ミサイルと小口径連射式レーザーがあるからな。それを外す関係上やむを得んか。

『問題ない、直ちに取り掛かれ』

《了解しました、作業に4日ほど頂きます》

 我はこの時軽い気持ちで『それと、降りてくる際にはなるべくインパクトを高めに頼む』と言って通信を切った。しばらく虚空を眺めていたようになっていたのが気になったのか、それと同時に銀髪モドキが声をかける。

「眷属って、あ――ドラゴン様にもいらっしゃるのですか? 確かに位の高いドラゴンには居ると聞きますが……」

 なるほど、位の高いドラゴンには眷属がおるのか。なら、誤魔化しも効くな。我はそのまま、銀髪の人間モドキに得意満面な顔で少し鼻を鳴らしながら返事する。

「当然だ。我を誰だと思うておる。……とはいえ、離れた地に置いておるから、集まるまで少し時間がかかるがな」

 それまでは、我が散歩がてら太陽が昇る時と沈む時に見回るとしよう。人間もどきはそれでも半目で「ホントに居るの……?」みたいな顔をしていたみたいだが、インパクトを求めたからきっと度肝を抜くことができるだろう。その間に、ポールと呼ばれている人族が他の村人を率いて肉を持ってきた。

「ドラゴン様、次焼けました! ……多少、先ほどの風景のため焦げ目があるのはご了承ください」

 我はそれを手に取りながら「許す、次は気をつけろ」とだけ声を出し、肉に被りついた。あぁ、この香ばしさ。露天で食べる現地の肉、味のあるタレ。特別おいしいというわけではないが……たまらんな。我はそこでリラにインパクトのある方法を指示していなかったのに、気づくことはなかったのだ。


「転送装置ではダメだったのか?」

 そして、今。人間サイズのこの身体は、我の肉体ではない。これは、通信制御によって我が遠隔で動かしているだけだ。動かしている、という感覚は肉体そのものではあるのだが。

『個体名「人間モドキ」が居る以上、装置の設置に手間がかかる上に露見する危険性があります。それに、目の前に突然現れるだけ、といのは指定された「インパクトのある」手段に合致しません』

 それは我ら基準だろうが……。ため息を吐き――といっても息など出ぬから、下を向き、目を瞑って息を吐いている仕草だけになってしまうのだが、気になったことを続けて聞くことにしよう。

「……では、何故我もなのだ?」

『訓練のためです。ドライグ様も、メンテナンスなどで身体が移動できない場合もございますので、そうなった場合の地上活動用の機体に慣れておいてもらう必要があります』

 ……確かに、そんなにないとはいえ、稀にはメンテナンスすることもある。その際に地上用の身体は……アレと元の身体以外にはないが。

「リラだけで対応することは不可能なのか?」

『可能ですが……ドライグ様の「ドラゴンらしい解決法」に合致しない可能性があります。加えて、前のような戦闘時にドライグ様が不在、というのは好まれないでしょう?』

 ……ならば、致し方あるまいか。少し不本意ではあるが。リラはその心情を通信データで察したのか、『ではブリーフィング再開』と言葉を出した。

『本作戦の目標は「敵対存在からの惑星上拠点・及びその人員の防衛」。現在、ドライグ様の支配している地上拠点は二つ』

 画面に地上の地図が出て、二つが拡大される。一つは外見上は洞窟……まぁ、我の住処だな。もう一つは……ハーブル村、と出ている。名前あったのか、あの村。

『この内、ハーブル村には現住民族が居住。しかし、こちらの周辺には現住民族にとって天敵となる存在も多数確認』

 周りに画像が複数浮かぶ。あれは……前のサイクロプスか。肉体データは取れなかったらしいが、我ら以外では脅威かもしれんな。惑星ゼントの巨人なら違うかもだが……あちらは人類の数百倍に及ぶ戦争を経験した上に、同じく科学兵器を扱う猛者だからな。他にはヒュドラや家サイズのイノシシ、といったものもあがっている。

『これらの存在は我々にとってそれほど脅威ではないものの、数で圧される可能性があるので注意。ヒュドラに至っては脅威とは言いにくいものの、未知の能力を所持しており、指揮能力も保有しているため、警戒が必須。ドレイク隊は本揚陸艇が惑星降下直前に本揚陸艇から出撃。Eシールドを展開しつつ大気圏突入。ブルム隊は本揚陸艇が大気圏突入後、降下ポットにてA地点へ降下』

 そのまま、A地点が表示される。これは……ハーブル村の前。この前スタンピードとやらがあった場所だな。確かに、あの辺りは粒子砲と誘導レーザーで荒れている故、それ以上荒れても問題ないか。

『その後、ドレイク1とブルム5は洞窟に向かってもらい、警備任務を担当。残りはハーブル村の担当となるわ。こちらには現地存在の関連で防衛設備がEシールドのみ。そのため、こちらの拠点は現有戦力のみで防衛を行うわ』

 そのまま、リラは『長期作戦になるわ。各員の奮闘に期待するわね』と締めくくった。各機……といってもドレイク隊とリンド3~5までだが、単純に『了解』とだけ返答が来る。

「……我も言うのか?」

『当然です』

 ……やれやれ。とはいえ、転送装置以外ではインパクトはあるのは事実だ。なんせ上空からは6つの火の玉が出てくるわけだからな。そのまま、村の目の前に落ちれば度肝は抜けるだろう。ならば、少々SFチックであるが仕方あるまい。

(我としては転送装置を埋め込んで、魔法陣を投射。その上に光学迷彩をかけた10機が出てくることを想定しておったのだがなぁ)

 まぁ、バレる危険性もある。あの人間モドキの戦力は未知数だ。ならば、こちらの方向性のがいいだろう。降下中の攻撃は……ドレイク隊がいれば問題はないか。

「……リンド1、了解した」

 まったく、何処の降下宙兵隊なんだか。リラは端的に『間もなく作戦領域に入ります』と言葉を入れた。実は、この船そのものもどうかと思う。

(……元々パーツだけ作って、許可後に作ったというのだから恐れ入る)

 実は、ロボットの改装と降下艇の製造を同時進行していたらしい。本来は希少資源の採掘用、らしいがこのような用途にも使えるとのことだ。わずか4日でくみ上げてテストまで済ませていたらしい……どこまで想定していたのだか。確かにリラは地球ではないにせよ、軍で採用されているクラスの最高級品ではあったが。

『ドレイク1、出撃を許可します』

『了解、ドレイク1、出撃』

 ワイバーンが降下艇から出撃し、大気圏突入の準備をするのが見える。そのまま2~5が順々に出撃していく。まぁ、我も大気圏突入からやった口だ、それで地上は大騒ぎだったらしいが……眷属もというのは箔がつくか。

「ただ、リラ……他はロボットなのに、ブリーフィングなど行う必要あったのか?」

『ありました。ドライグ様は、その方が効率が上がる傾向がありますので』

 ……それだけなのだな。我はその身体の肩を落とした。程なくして、降下艇が揺れ始める。まぁ、揺れても被害が出るわけではないのだがな。



 それを聞いたのは、食事のあとだったかしら。謝肉祭レベルの食事が振る舞えてなお、村は盛り上がりきらずに微妙な気分……喜んでいいのか、悲しんでいいのか、そんな半端な状態でのお祭り騒ぎになっていた。……私とあの子以外、みんなヤケ食いしていたともいえるわね。

(……しかし、嵌りすぎね。あの子……)

 金髪の子。名前をメリューヌと言うらしいんだけど、ドラゴンもどきが村に来てからというもの……まるで崇拝する神を見つけたかの如く、ドラゴンもどきを敬っていた。絵姿を描いたり、うっとりしたり……まるで教祖ね。ドラゴンを崇拝する人たちは結構いるけど、その典型的な信者のような様相をしていた。確かあの時は――

「あぁ、なんでこの場には画材がないのかしらっ! すぐにでも絵画にしたいのにっ」

 そういいながらペンを走らせ、木の板に絵を描き続けている。信者の中にはそういう敬愛を絵にしたがる人もいたけど……あの子はまさにそれ。後であのドラゴンもどきが手のひらを返さなきゃいいけど。そんなことを思っていた時だった。

『村の長よ、先ほどの混乱について聞かせてもらおう。何故、あのヒュドラとやらであそこまで恐れおののいたのだ? 我ほどじゃあるまいに』

 村長は「あのヒュドラは――」と語り始める。私も知っている内容ではあったけど、端的にはこうだ。

――曰く、来たのは18年前。その時は今辺境の街として再発展しているソルドムの街が壊滅、ゴラ村、ここハーブル村の二つが支配下に置かれた。

――曰く、支配時に貯蔵庫を根こそぎ取られ食われ、騎士も食われた。

――曰く、一週間に一人の生贄を要求され、ゴラ村に至ってはそれで女子供がいなくなった。

――曰く、機嫌を損ねただけで家屋が壊され、人が戯れに喰われた。

――曰く、配下の魔物もいて、そいつらに何かされても反抗することを許されなかった。例え、その結果死んだとしても。

――曰く、3か月後に200名ほどの騎士団が来て撃退されるまで、莫大な被害を受けた。

 人が減りすぎて、開拓が進められなくなったと聞いているわ。その後の二次募集で私が混ざったわけだし。ゴラ村は村の跡地を利用した新規開拓に等しかったらしいし。

『なるほど。取るに足らぬものだが……矮小なる者はあれらが怖いか』

 その説明で思い出したものもいたのか、何人かはまた震えだしている。さすがに、パニックを起こすほどではなかったみたいだけど。……ま、アレ面倒な能力持ってるし、頭8つって意外と厄介なのよね……魔法が同時に8つ飛んできてもおかしくないし。私は聞く裏でアレの事を思い起こし、目を瞑ってため息を吐く。このドラゴンもどきが頼れなかったら、最悪わたしがアレ相手にしないといけないのよね……。そう、行く先に憂慮していたときのことだった。

「ならば、そのヒュドラに倣って我も眷属を用意するとしよう。安心しろ、我が眷属は何かされない限りは理不尽な真似もせぬし、食糧なども自力で村以外から調達する故、そのヒュドラみたいなことにはならぬ」

 え? 眷属? ドラゴンは確かに眷属はいなくはないけど……基本的には強い魔物を契約によって縛ってるだけよ? 得体のしれない力は持ってるけど……魔素の低いあんたじゃ方法知ってても契約してくれないでしょうに。あれ、魔素を供給してあげるという必要もあるのよ?

「え、ほ、本当にございますか?」

『本当だとも。我も縄張りをあの程度のものに荒らされたくないのでな。臣従するとあれば、ついでに守ってやることも命じてやらんでもない』

 矮小なる者共が我に歯向かう、というのであれば兎も角、な。村長はその言葉に息を呑み、やや青い顔をしていた。……何か利用しようとでも思ってたのかしら。ただ、トムがその様子を見てさらに歯がゆい……それこそ、歯を食いしばり、手を握りつぶさんばかりの目でチラりとドラゴンを見ていたが、そっちはそっちで何考えてたのかしら。その後は、そのヤケ食いの雰囲気かつ、その来るという眷属に戦々恐々としたまま、時間が過ぎていった。


(それで、太陽が3回上ったあと、その次に太陽が昇る際にゴラ村方面をみよ、って言ったのよね)

 それまでは、狩人も村から離れず、いつヒュドラに襲われるか、警戒はしつつ、逃げる用意もしつつといった状態で時が過ぎていた。魔物に襲われたことはあるが――

「あれ、昼前とか見回りの間を狙ってたのにすぐ駆け付けたわねぇ」

 それまではあのドラゴンもどきが蹴散らしていた。光が見えたのも一度や二度じゃない。散歩とはいったけどあれ、張り付いてるわねぇ。そうしている内にドラゴンもどきが来た。

『皆、集まっているようだな。何人か足らぬが……体調不良か。矮小なるものは軟弱よな』

 確かに、隣の家のマリー、仕立て屋のエリザと、狩人のポールがいない。ただ、確か昨日の時点で酷い熱を出していたから動ける状態じゃないでしょうね。エリザは割といつものことだけど……。ドラゴンが皆を一瞥するとそのまま上に視線を移した。

『では、眷属を皆に紹介しよう。空を見るがいい』

 言われるままに空を見るって――何アレ!? 村人は思わず指を差し、空を仰ぐ。見えるのは、火の玉が6つ。5つは小さいけど1つが大きすぎる。多分、あのドラゴンもどきよりも大きい!

『あれらが異なる大地より召喚した、我が眷属である』

 小さい方は翼竜に見える。ただ、雲よりずっと高い……そんなところから降りてきている。そういえば、このドラゴンもどきも同じようにしてきたわね。しかしもう一つ……あれは、何?

(絶対、このドラゴンもどきよりも大きいでしょ!?)

 驚きながらも、あたしは、村の者たちはずっと、その炎の玉を見つめていた。あれが眷属って、眷属はこんな登場の仕方普通しないわよぅ……。ただでさえ、空の上……『黒い空』は生き物を許さない、死の空だというのに。

次回更新は7月7日予定です。よろしければ、感想・評価などお願いします。


7月5日追記

すいません、今週頭から体調を崩しているため、更新を少し伸ばします、更新予定は7月9~11日の辺りとさせてください。申し訳ありません。


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