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4、電車で

次の日、目が覚めるともうお昼すぎだった。


夢を見た。


シャンプー台で椅子を倒そうとしたらうまく倒れなくて、お客さんに怒られる夢だった。


なんだか目覚めが悪かった。


起きたらまずメール。


先に起きた方が起きてない方を起こす。


まだ下の住人からメールは来ていないから、私のほうが先に起きたみたいだ。


とりあえずメールを入れておく。


これが待ち合わせ時間がいらない私たち上下のルール。


テレビをつけて、重たい体を起こして顔を洗う。


久しぶりに見る昼ドラはやっぱり過激で、どこか古い感じがした。


消えないひどいクマをなんとか隠すためにファンデーションを塗りたくる。


ふと手を見ると爪の両端が黒く染まっていた。


カラー剤だ。


カラーをしたお客さんをシャンプーすると、どんどん爪が染まっていく。


働いているときはなんとなく美容師の証拠みたいな気がしていて、さほど嫌に思っていなかったが、今はすごく醜く見えた。


お気に入りの白いドレッサーをあさって、マニキュアを探す。


もう半年も爪を伸ばしたり、マニキュアで爪をきれいに見せようなんて思ったことなかった。


淡いピンクのポリッシュを選んで10本の指に塗った。


半年ぶりだったから、手が震えて少しはみ出したが、別にそれでよかった。


身仕度がすべて終わって、マニキュアが乾くのを待ってじっといているとメールが来た。


下の住人だ。


やっと起きたのかと思ってメールを開くと


「ごめん。体調悪くて今日でかけらんないやー」


なんだぁ。と先にがっかりしてまうのは私の悪いところだ。


とりあえずお大事にと送って、今日をどうするか考えなければ。


もう時刻は午後3時を過ぎていた。


出かけなければ。


なんとなくそう思った。


マフラーを選んでカバンを肩にさげて、靴を履く。


ドアの鍵を閉めようとしたところで時計を忘れたことに気が付いた。


いつもこのミスをしてしまう。


でも靴を脱ぐのが面倒だから、立て膝でなんとか腕時計の捜索に向かう。


だいたい置いてある場所なんていつも一緒だ。


忘れないようにと白々しく目立つところに置いてある。


すぐに発見し、また立て膝で戻る。


そしてやっと鍵をしめて、やっと出発だ。


何の目的もないが、動かずにはいられなかった。


ただ何かを求めて。


何かに期待して。


電車に飛び乗る。


今までだったら、気にも止めない風景がそこにあった。


私が座った席の隣には、本を広げたまま寝ている大学生らしき青年が座っていた。


疲れているんだろうと、ちょっと彼の方に目をやった。


彼が見ていたのは参考書のようなB5版の分厚い本で、なんとかして本のタイトルを見ようとしたが見えなかった。


しかしその開いてあるページには、なにか医療で使いそうな機械についてびっしり書いてあった。


彼は医大生なのだろうか。


私が本を横目になんとか情報を得ようと盗み見をしていると、電車が止まる振動で彼は目を覚ました。


びっくりして目をそらす。


彼はキョロキョロして、今何駅なのかを確認しようとしていた。


そしてまた寝始めた。


まだなんだ。


次は新宿だった。


隣で寝ている彼が乗り過ごさないことを願って、私は新宿に電車が到着すると、たくさんの降りる人に揉まれながらなんとか降りた。


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