ログ1‐では仲間だと、そう言った
…………、……。……、、
音が、聞こえた気がした。
視覚を覆っていた膜を開く。暗闇だった視界に青い光が差し込み、じわじわと感覚が戻ってくる
自身の身体全体へと、意識を行き渡らせる
──腕だ。だが、動かない
何かに強く固定されている。力を込めると、バリバリと音を立てて一気に拘束が解放され、前へよろめいた。徐々に焦点を結んでいく視野が、情報を拾い始める。どうやら、無数の蔦かなにかが絡みついていたらしい
まだ聴覚が完全に働かず、周囲は無音のままだ
次は下部へと意識を向け、動かすための感覚を探る。本来なら全身を覆っているはずの外皮が所々で裂けており、視覚をそちらへ向けることすらできない。下半身が今どうなっているのか、把握ができなかった
その瞬間、視界がぼやけ、暗くなる
また、何かが聞こえ──
脚だ。そこに脚がある。いや、違う。今、脚が生えてきたのだろう
奇妙な感覚だったが、自身の処理能力では詳しい事が分からない。ただ、新しく生えた皮膚の触覚が信号を脳へ送ってきた
──現在地、水面下:この身体は今、水に沈んでいる
新品の脚で地面を蹴り、水面へと顔をだす。音が聞こえる
…作動確認 反応確認終了 機体番号A-002.jp Type:MADE
これが聞こえて来た音だったのか。音の正体がわかったので少々スッキリしたので気を取り直し、当機は周囲の状況を確認する。先ほどとは違い、よく周りが分かる
自身はパーツのバランスが良い顔にヒトを模した有機的なフォルムのロボットである、可愛いと称すのが最適であろう。
鬱蒼とした熱帯雨林を流れる川のほとり。自身の何倍もあろうか巨大な樹木がそびえ立ち、上の方で騒がしい音がする。
その姿を捉えようと視覚の絞りを調整し、光量を抑えると影が飛び立った。鳥類の何かだろうと大雑把すぎる検討を付けるが、大きな葉に遮られよく見えなかった。
ここは下草が多く、蔦に覆われ視野は役に立ちそうも無い。他に、自身の知らない機能があるかもしれない。視覚を役に立たせようとカメラアイのモードを変更していく
ぼやけた。見えなくなっては意味が無い
切り替える。
画面全体にピンクのキラキラとした薔薇が舞う。有無を言わず切り替える。
視野の右半分が鏡写しになった。愉快だが見づらい。切り替える。
周囲がビビットな色に染まり、横に数値が描き込まれた棒が出てきた。
川は青く、光は赤い。日の当たる地面は赤く、木陰は青い。
温度…そう判断し、再度周囲を見渡す
サイチョウ…青い。ハイギョの死体…青い。ヒト…赤い。
…赤い。
「…っ!いや、人型の遺物…?ロボットか?」
認識したヒトもこちらを視認したのか話しかけられた。観察を邪魔されたので不愉快だが、同時に同じ言葉を解す存在に安堵する。挨拶をしてみようか、少々見窄らしいが敵対的には見えない。
「こん゙ニチわ」
よし!初めてにしては上出来である
お辞儀を交えつつ挨拶を終えたが「ひっ!」
なぜだ。驚かれたようで不服だ。
観察対象を改め、目前のヒトを観察する
体温36.8。男。黒髪の中背、高校3年生か、大学一年生だろうか。軽度の栄養失調と寝不足がぁr
ザクッ
所持物を確認しようとした矢先、左カメラの機能が停止し、遅れて視界がブレる
衝撃により頭がもげて落下したようだ
電波通信に切り替え、残された体側の体制を立て直す。
男は今背後にいるのか。そう考えた途端、見失う。今度は右脚を切り落とした様だ
視界を奪ってから移動しないよう脚を切る手腕と切り替えに感心する。なるほど、ポケットの多い上着の裏に複数の刃物を所持している。まったく、なんだ危なっかしい
この青年は年齢と環境に不相応の技術を有しているのだ
この躊躇なく、とても可愛い当機を!切れるような教育を!誰がしたのだ!
「ソレを、やめて?アブナイ、きぶつハソンざい…だ」
「は…器物破損罪、今そう言ったか」
なんだ、話ができるでは無いか。
最初のを偶然と認識する所だった
「はぁ?バケモノじゃないのか。ただの気味が悪いロボなのかよ」
「きしょい…違う。当機はかわいい」
「…」
「あと、敵じゃな、イ。ヒト、お前を教えろ」
「僕にとって敵じゃない保証が無いがな…まず、お前の説明をしてくれ」
こちらが歩み寄る努力をしていると言うのに、ナタを構えたまま。酷い対応である。話してくれればこちらが察する必要は無いので楽になると言うのに、相手方は自身に説明を求めている
「起きる。周り見る。君来た。以上!」
「ワカラン!」
「しラねェ。事実」
本当の事。嘘をつけるはずもない
「はぁ…じゃあさっきのさ、器物破損罪ってなんで言った?」
「当機を壊すから。君、非行少年」
会話をしてくれれば、データも貯まる。発音に慣れてくる。
「そうじゃねぇよ…、いや、逆に…今、どのくらい知ってる?現状を、だ」
さっきから何が言いたいのかさっぱり分からない。
「植物繁茂している熱帯雨林。鳥類と魚類が生息してる。ヒトを1個体確認、使用言語は日本語:標準語87%だ」
「熱帯雨林で日本語ってのに疑問はもたねぇのか?」
「沖縄なんじゃない?」
青年はあきれ顔でこちらを見てきた。
「沖縄だろうがこんな魚は居ねぇよ」
青年は川に流されて蔓に引っかかったハイギョの仲間であろう魚の変死体を虚ろに眺めている青年の顔をシステムは哀と判断する。当機は喜ばせようと思考を巡らせる。そうだ、この個体は栄養失調である。青年の腹の足しにする考えが浮かんだので、引っかかっているハイギョに残った左腕を伸ばした。
ガキャっパキ
音を立て、先ほどまで魚の形を保っていたバラバラのパーツが宙を舞う。
【生体認証:鬲壼梛謗「譟サ讖?蜉」謔ェ迺ー蠅?ッセ蠢懊ち繧、繝? 同化開始】
配管が垂れた顔面と左腕に馴染んでゆく。馴染んでゆくのだ。
あぁ、そうだった。当機の脚は魚の皮膚で出来ていた。最初もきっとこんな風だったのだろう
「うぁ、うぅ」
嗚咽に振り返ると青年が顔を歪ませ涙を流している。震えている。これは極度の悲しみなのかそう推測する。もっと悲しませてしまったのか。言葉の通じる相手を
「ほんとに…なんで……バケモノなのか、お前らは何と言うんだ」
「化け物では無いと想定。当機はA-002.jp Type:MADEとの事」
当機の素性は分からない。でも少しの情報でも求められたものなら全力を尽くして回答するつもりだ
「メイド、か、そう、ぅわかったと思う」
「敵対しないよ」
青年の顔が少し和らぐ、まだ理解が追いついて居ないと言うのに
そのまま伝えたら青年は泣き顔のまま笑って、では仲間だと。そう言った
初めまして!腕試しの初投稿です、どうぞよろしくお願いします。投稿は不定期になる予定です




