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隣国に輿入れした王女付きモフモフ侍女ですが、本当の王女は私なんです〜立場と声を奪われましたが、命の危機に晒されているので傍観します〜  作者: 江本マシメサ
第四章 逃亡、そして――!?

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獣人王女エルヴィールは、現状を把握する

 レナータはここ、第八遠征部隊の騎士舎について教えてくれた。

 大きな声では話せないようで、声をひそめて話し始める。


「ここは騎士舎らしくない建物ですが、間違いなく騎士隊が所有している建物なんです」


 なんでもこの部隊は、騎士になりたいと志願する良家の子息が入隊する部隊らしい。


「えーっと、なんと言えばいいのかわからないのですが、その、はっきり言うと騎士になるには相応しくない者達が入隊する部隊なんです」


 剣の才能がなかったり、体力がなかったり、諍いを嫌ったり、騎士になるには気性が大人しかったり。

 騎士になりたいのに適性がない。そんな貴族の子弟達が集められた部隊なのだという。

 そして騎士舎とは思えない豪奢なここの建物は、多大なる寄付で建ったものなのだとか。


「普段、ここにいる騎士達は、えー、そのー、自由に過ごされています」


 つまり、騎士が普段している訓練や任務にあたっていないと言いたいのだろう。

 ヒポグリフォンに襲われそうになった瞬間、騎士はルビーを守れなかった。そのとき、彼は訓練を受けた正規の騎士ではないと思ったのだが。まさか、第八遠征部隊に所属する騎士全員がそうだとは想像もしていなかった。


「普段、仕事をしていないので、国民から怪しまれないように、遠征部隊としているようです」


 遠征部隊というのは、王都より離れた場所での任務を主とする部隊らしい。主に魔物の討伐や災害救助、行方不明者の捜索などを行っているのだという。


「王女殿下は護衛部隊を選ばれるさいに、見目の良い騎士ばかりが揃った第八遠征部隊を選びまして……。その、第八遠征部隊の騎士舎が美しいことから、ここを本拠地とするように決めたようです」


 話を聞きながら、頭を抱え込んでしまう。

 どこの世界に、顔の良さだけで護衛を決める王女がいるというのか。

 彼女の決定は他の騎士達の反感を買っているのではないのかと思ったが、そのとおりだった。


「正直に言いまして、王女殿下と国王陛下の結婚を反対する者も現れているようで」


 挙式は半年後を予定しているようだが、反対派の声も大きい。一方で、一刻も早く結婚したほうがよいと押し進める者達もいるようだ。


「ここだけの話なんですが、結婚推進派は王女殿下から報酬を受け取っているようなのです。私の父も推進派になるように相談が持ちかけられたようなのですが、お金は腐るほどあると言って断ったそうで」


 ちなみに、レナータの父親は中立派に所属しているという。

 そういえば、以前離宮にやってきたパウリーネの父親も、中立派になったと話していた。

 彼女と閣下の結婚は、ルビーのせいで破談となったようだ。

 当時は国内の政治的な問題だと思っていたが、私も無関係ではなかったということになる。


「うちの国、基本的には平和なんですけれど、今回の結婚でちょっと揉めている感じですね」


 アルノルト二世は後ろ盾がなく、野心があるように思えない私を結婚相手として選んだのに、いざやってきたら国内の政治をかき乱す存在となってしまった。さぞかし頭を痛めていることだろう。


 レナータがぐっと接近し、これまで以上にヒソヒソ声で話しかけてくる。


「これ以上王女殿下のもとについていると、なんだか危ない気がするんです。私の勘なんですけれど」


 自信なさげに言っていたが、彼女の勘は正しい。

 ルビーは本物の王女ではないから。

 ファストゥとツークフォーゲルの国交がないので正体が露見していないが、バレるのも時間の問題のように思えてならなかった。


「父に相談したのですが、やはり父も王女殿下を怪しく思っているようで、近いうちに侍女のお役目を辞めようかと考えているのです」


 父親の出世まであと一歩というところらしく、もう少しだけ王女付きの侍女を続けるという。


「ルヴィ様も一緒に辞めたほうがいいと思うのですが」


 私が辞めたらヒポグリフォンはどうなるのか。ちらりと、様子を窺う。朝食を食べてお腹が満たされたのか、心地よさそうに眠っていた。

 酷い扱いをするルビーのもとに、置いて行けるわけがない。


「あ、ヒポグリフォンちゃんは、アルムガルド閣下の幻獣保護局に預かってもらいましょう。そのあと、保護を続けるか、森に帰すかはご判断いただけるでしょうから」


 彼女の言うとおり、私達がお世話をするよりは幻獣保護局に引き渡したほうがいいだろう。そのあとは――何かレナータに仕事を紹介してもらえばいい。


 閣下とは二度と会わない。そう、決めている。

 彼について考えただけで、胸がずきんと痛んだ。

 もう、手紙は届いているだろう。

 裏切り者だと、思われているかもしれない。ヴァイスを連れて行ったので、誘拐犯だと思われている可能性もあった。

 できるならば、笑顔でお別れしたかったのだが……。


 ここを離れるまで、平穏無事な日々が続きますように。

 そう願っていたのだが、まさかの事態となる。

 突然ルビーに呼び出され、思いがけない命令を受けたのだった。


「今晩、仮装仮面パーティーがありますの。あなた達も、参加なさいな」


 なんでも、〝虹色姫と二匹のドブネズミたち〟というタイトルの童話の仮装をしたいらしい。

 もちろん、ルビーは虹色姫の仮装で、二匹のドブネズミたちの仮装をするのはレナータと私というわけである。


「ドブネズミの衣装、とっても可愛らしいので、あなた達にお似合いになるはずですわ」


 とんでもない申し出に、開いた口が塞がらなかった。

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