第9話 助けたい
間もなく夏休みと言う暑い朝、コカゲが横断歩道を渡ろうと思ったら向こうからヒナタが歩いてくるのに気がついた。
なんだかヒナ、暗いな。コカゲはヒナタの鬱を察知した。コカゲは横断歩道を渡らず、そのままヒナタが渡って来るのを待った。
「おはよう、ヒナどうしたん?暗いけど」
「ああ、コカゲか。コカゲんちなら余裕かもな。犬飼える?」
いきなりヒナタは切り出した。
「犬?どうしたん?子犬でも拾ったん?」
「ううん、この頃団地にシベリアンハスキーがうろうろしててな、きれいな水色の目で賢そうな子で、オーロラって呼んでるねん。野良犬やから管理人さんが網持って追いかけてるねんけど、段々弱ってきて捕まりそうなんよ。捕まったら保健所やろ。飼ってあげたいんやけど団地は飼ったらあかんし、駐車場の峯婆ちゃんに頼んでみたらエサ代毎月五千円かかるから無理や言うねん。何とか助けてあげたいんやけどなあ。白と灰色の綺麗な子やし」
「ふうん。ヒナはやさしいな。でも無理。ウチのお父さんもお母さんも動物苦手やから」
「そっかー、頼みの綱が切れてしもた」
コカゲはごそごそと財布を出した。
「あー、1週間分位ならドッグフード買えるかも知れん」
「そんなんじゃ駄目やろ。飼わへんのに出してもらうって何か違う気がする」
「そうやねえ。毎月は出せないし」
コカゲの家もお金には厳しかった。
「ま、他も当たってみるわ。コカゲに押し付けるのも変やしね。じゃあね」
「うん」
ヒナタはクラスで当たってみたが、誰も見たことない弱ったシベリアンハスキーを飼おうとは言わなかった。そもそもペットのトレンドは室内で飼う小型犬に移っており、シベリアンハスキーと言われてもみんなピンと来なかった。ヒナタは担任の田上先生や剣道部の足立先生にも聞いてみたが、良い返事はなかった。
仕方なくヒナタは帰り道に宿り木の婆を訪ねた。
「オーロラは元気?」
「ヒナちゃん、すっかり友達やな」
宿り木の婆は笑った。
「今どこにおるんやろ。婆ちゃん見てない?」
「今日も来とったで。食べるもんないけどお煎餅の欠片あげといたわ。せやけどやっぱり弱っとるなあ。もうそんなになごうないわ」
「長くないってどれくらい?」
「まあもって1年かなあ」
「なんで判るの?」
「せやからワシはホームセンターのペット売場でパートしとったんやって。大概判る。いろんな犬見て来たからな」
ヒナタはがっくりした。1年位って・・・。食べるものが無くては益々寿命が縮まってしまう。
「婆ちゃん、エサあったら飼ってくれるねんな」
「あったらな」
「あたしが、探してみる」
ヒナタは言ってみたものの困った。1年分のドッグフード、どこかに落ちてないかな。あ、落ちてたらオーロラが先に見つけて食べるか。どうしたもんだか。




