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キミとの約束  作者: 蒼野 棗
第二章
20/47

#11-2 光の貴公子


「……あ、そうだ。属性について教えて欲しいなら、テルテルに頼むと良いよ」

「テルテル?」

「うん。あの人は相当な変人だけど、悪い人じゃないし……あ、けど、暫く姿見てないし、また行方不明中かも」

「行方不明!? え、それって探さなくて大丈夫なんですか?」

「うん、いつもの事だし。ふらっと帰ってきて、ふらっといなくなるから」


 ふと花音の言葉を思い出す。

 光属性持ちは変わり者が多い。なるほど、否定できないかもしれない。

 そんな事を考えていると周囲の空気が一変したのを感じて、優斗は顔を上げる。いや、空気というよりも周囲が急に明るくなったのだ。

 明るいというよりは眩しいというのが正解かもしれない。


「……あ、噂をすれば。テルテルが帰ってきたみたい。良かったね」


 緊張感の欠片もない声で朔がそう言ったが、優斗はそれどころではない。

 この距離で既に目が痛くなるほどの光を携え、誰かが優雅に歩いてきた。

 優斗の全身に緊張が走る。息を呑み、人影が近付いてくるのをじっと見守る。


 瀧石嶺学園の男子生徒の制服である白い詰襟を纏った青年。右腕につけられた水色の腕章に入っている白い線の数は三本。つまり、彼は最高学年である三年生というわけだ。

 ようやくその顔がハッキリと見えて、優斗はその顔を見た瞬間、思わず平伏してしまいそうになった。


 風に揺られながらもキラキラと輝く金の髪。深くどこまでも透き通った碧色の瞳。整いすぎた顔立ちは、最早人間ではないのではないかと疑いたくなるほど美しい。この世の美という美を詰め込んだようなそんな青年だった。


 彼の姿を見るだけで目が潰れてしまいそうになる。背後から後光が差しているように見え、その神々しさに眼前に立っているのは神様なのではないかと本気で考えてしまうほど、眼前の青年は圧倒的な存在感を放っていた。

 青年の瞳が優斗を見据える。たったそれだけの事で優斗は身動きが取れなくなる。


「……テルテル、久しぶりッス。相変わらず眩しいっすね」

「おお、朔君ではないか!? 相変わらず美しい容姿だ」

「テルテルにそう言われても……嫌みにしか聞こえないっすよ」

「うむうむ。それは仕方のないことだね! 僕の美しさは他の誰とも比べられないのだからね!」


 ふふふ、と笑う彼の姿は、やはり人外のものと思えるほど美しい。けれど、どうにもその容姿と言動が一致しない。


「ところで、この少年は誰だい?」

「あー、彼は……」

「いや、いいんだ! 何も言わなくても良い! そう、僕に分からない事などないからね! 君は……そう! 僕のファンだね!」

「え? いや、俺は──」

「良いんだ良いんだ。うんうん、何も言わなくても分かってるからね! 老若男女問わず魅了してしまう僕の美しさに見惚れてしまうのは仕方のない事だからね! むしろ自然の摂理だからね! どれ、握手でもしようか? それともサインが良いかい? あ、写真でも構わないからね!」


(この人、全く人の話聞かない!)


 なにか勘違いして、口を挟む暇もなく、ぐいぐい来る彼に困惑して、優斗は助けを求めるように朔に視線を移す。しかし、朔は小さく溜息をついた後、関わるのも面倒だとばかりに視線を逸らして、牛乳を飲んでいる。


「さあさあ、好きなのを選びたまえ! 大丈夫! 僕は誰に対しても寛大な事で知られてるからね! 君が何を望もうと怒ったりしないからね! 安心したまえよ!」


 正直言うと凄くうるさかった。声も大きいが何よりもキラキラと輝く彼の存在そのものがうるさかった。

 優斗が何と言えばいいか迷っていると彼は、ふと何かに気付いたように優斗の顔をじっと見つめる。


「あ、あの?」


 何故そんなに見つめられるのか分からず、そもそも幾ら彼の容姿が人外並に美しいとしても男と見つめ合う趣味は優斗にはない為、自然と距離を取る。しかし、それは許さないとばかりに急に肩を勢いよく掴まれた。


「うんうん、そうか! 君も光属性なのだね! うんうん、分かる、分かるとも! 光属性持ちは誰もがその内なる輝きを隠し切れていないからね!」

「へ?」

「……テルテル、ユウ君は属性強化したいみたいなんで、教えてあげてくれないっすか?」

「なるほど! そういう事ならお安いご用だね! 君が更に光り輝く為なら僕も協力を惜しまないよ! そう、僕は美しいものが大好きだからね! 君のその美しい魂がもっと光り輝けるように僕が導いてあげようではないか! 大丈夫! 僕に任せれば、安心だからね!」

「え? ええと……」


 突然すぎる展開に頭がついていかない。そもそも眼前の青年の至近距離からの眩しさに目が痛くなってきた。


「……良かったね、ユウ君。テルテルは面倒だし、うるさいし、喧しいし、面倒だし、変な人だけど、悪い人じゃないから、安心して教えてもらうと良い」

(面倒だって二回言った!?)

「はっはっはっ、この僕にそんな事を言うのは君くらいだね朔君! だから、僕は君が好きだ。変に敬わないからね! 君に限らず七隊の面々は皆好きだけどね! そうそう、七隊といえば新しい子が入ったと聞いたよ! どんな子なんだい?」

「スズちゃん? ……あー、ある意味テルテルに似てるかもしれないっすね。見た目と言動のギャップが激しい辺り」


 そんな会話を聞きながら、優斗は昨日の会話を思い出す。

 瀧石嶺学園全生徒の頂点に立つ七隊。

 その選ばれた生徒の中で更に頂点に立つのが序列第一位の生徒。

 その人は瀧石嶺家の退鬼師であるということ。巫女様と呼ばれ、絶対の存在として敬われている瀧石嶺千里の婚約者であるということ。そして、優斗と同じ光属性の退鬼師であるということ。


 ひくり、と表情がひきつっていく優斗。

 顔を青ざめさせて、浮かんだ答えが間違っていることを祈りながら、昨日聞いたばかりのその名を口にした。


「……た、瀧石嶺たきいし……てる、さん?」

「うむ、何かね?」


 満面の笑みで頷かれて、優斗は頭が痛くなった。

 関わるまいと思っていた人物と早速関わってしまった事に気が遠くなりかけたが、それでも彼本人が快諾してくれたのは決して悪い事ではない。


 相手は序列第一位の、しかも退鬼師にとっては絶対の瀧石嶺家の退鬼師。実力は疑うまでもなく、教えを請う相手としては、これ以上ないくらい適任な相手だ。いや、むしろ優斗が彼に教えを請うなど分不相応だと罵られてしまいそうだ。


「あ、あの、本当に良いんですか?」

「勿論だとも! 僕は一度言った事は必ず守るからね! 安心してくれていいからね! それじゃあ、弟子君。まずは君の名前を聞いてもいいかね?」


 そこで優斗はまだ自分が名乗っていなかった事に気が付き、慌てて名乗る。


「つ、月舘優斗です。宜しくお願いします」

「うんうん、礼儀正しい子は嫌いじゃないよ。けど、そんなに堅くならなくていいからね! 敬われるのは好きじゃないからね! 僕の美しすぎる容姿に魅了されて慕う人ならともかく、瀧石嶺家の名で壁を作られるのは嫌いだからね! だから、僕の事は名前で呼んで欲しいね!」

「は、はぁ……。分かりました。照さん」

「うんうん、君は素直な良い子だね! 早速授業に入りたいところだけど、残念ながら僕も用事があってね」

「あ、いえ、手が空いてる時で大丈夫です。元々、俺の我が儘に付き合ってもらうのですから」


 優斗の言葉に残念そうな顔をしていた照は、パッと表情を明るくさせる。


「そうかい? それなら、明日の授業はどんなのだい?」

「明日ですか? えっと、いまはチームメイトの一人が入院してて、それで俺達もほぼ自習というか、チーム内で訓練してます」

「うんうん、分かったよ! 分かったとも! それじゃあ、また明日会おう! 約束だからね!」

「あ、は、はい」


 優斗が頷いたのを見ると、照は満足そうに何度も頷き、それから思い出したように朔の腕を掴んだ。


「そうそう、朔君も呼ばれていただろう? 七隊召集命令が掛かっていたからね! ほらほら、案内してほしいね! 自慢ではないが僕は道が全く分からないからね!」

「……あー、そういえばそんな事、シュウ先輩が言ってたかも。というか、テルテル。引きずらないでほしいっす」

「うんうん、それなら自分の足で歩いて欲しいね! けど、朔君の事だからすぐに寝てしまうからね! 結果的にこうした方が早いというわけだね!」

「……あー、はぁ。まあいいっすけど。……またね、ユウ君」

「うんうん、挨拶は良い事だからね! さらばだ、弟子君!」


 そんな騒がしい会話をしながら、照達は歩いていった。

 その様子を優斗は呆然と見つめ、それから結局明日は何時に何処に行けばいいのか分からないことを思いだし、彼らの去った方を見るが、既に姿は見えなくなっていた。

 明日はどうすればいいのかと途方に暮れる優斗だった。



 そして、翌日。

 自主訓練中に晴に稽古をつけてもらっていた優斗は再び頭が痛くなるのを感じた。

 その原因は、たった一つ。

 突然現れるなり、喧しく喋りだした照の存在だ。

 七隊序列第一位であり、瀧石嶺家の退鬼師であり、千里の婚約者。そんな人物が突然現れたら場が混乱するのは至極当然の事だろう。


「ゆ、ゆゆゆ、優斗くん!? ど、ど、どういう事!? なんで照様が此処に!?」

「はっはっはっ! なんだなんだ! 君もボクのファンかね! うんうん、分かる、分かるとも! この僕の美しすぎる容姿を見て、動揺してしまうのは仕方のない事だからね! それよりも弟子君! 約束通り、授業を始めようじゃないか!」

「で、弟子!? え? な、なんで? いつの間にそんな事に!?」

「とりあえず、聡は落ち着け」


 あわあわと挙動不審になっていた聡に落ち着くように声をかけるが、やはり圧倒的な存在感を放つ照を前にして落ち着くことなど出来ないのか、晴の後ろに隠れてしまう。

 晴も幸太郎も照の放つ眩しさに耐えきれないのか、腕で目を覆っている。普通に考えれば失礼極まりない態度なのだが、照は気にした様子なく笑っている。


「優斗君。何があったの?」

「いや、昨日嵐の見舞いの帰りに偶然朔さんと会って、それで……照さんを紹介されたというか、快く授業を引き受けてくれたというか……」

「……そう。そういう事」


 しどろもどろな優斗の説明でも花音は状況が理解できたのか、小さく頷く。

 そんな花音の顔を照は、ジッと見つめている。

 花音は暫く黙っていたが、やがて我慢できなくなったのか、照に視線を移して口を開く。


「何か用でしょうか?」

「ん? んんー、君は不思議だね! うんうん、実に不思議だ!」

「……どういう意味ですか?」

「君は闇属性だろう?」


 初対面なのに属性を見抜かれた事に花音は目を見開く。その反応を肯定と取った照は満足そうに何度も頷いてみせる。


「うんうん、驚くのも無理ないね! 初対面で見抜くなんて普通はあり得ない事だからね! でも僕を普通と思わないでほしいね! その人の魂の美しさで属性を見抜くなんて僕にとっては造作もない事だからね!」

「魂の美しさ?」

「その通りだとも弟子君! そして、この子はとても不思議な魂をしているね! 目的の為ならどんなものでも切り捨てる冷徹さを持ちつつも強い意志で何かを守ろうとしている。実に矛盾した魂の在り方だね! それなのに歪む事なく、とても美しく澄んでいる! うんうん、実に不思議だね! そして、同時にとても素晴らしいね!」


 優斗にはその言葉の意味が理解できなかった。

 不思議に思って花音を見れば、一瞬花音の顔が虚を衝かれたように揺れたのが目に入った。

 花音は照の言葉を理解できたのだろうか。そう考えても既に花音はいつもの無表情に戻っており、その表情から彼女の真意を探る事はできなかった。


「闇属性持ちで、歪む事のない美しい魂を持つ人は極めて稀だからね! ……あ、そうか。君の魂は皐月さつき君と良く似ているかもしれないね! 彼女もひどく矛盾した魂の在り方なのにその魂はどこまでも美しいからね!」


 よほど花音がお気に召したのか満足そうに何度も頷く照。対して、花音の照を見る瞳は冷え切っている。

 何故だかは分からないが、花音は照に対して怒りに近い感情を抱いているようだ。そう気付いた優斗は、慌てた様子で二人の間に入った。


「て、照さん! 早速授業お願いできますか?」

「ん? ああ、勿論だとも! 僕は自分の言った事は必ず守るからね! さあ、弟子君! 早速授業を始めようじゃないか!」


 照の関心が花音から外れた事に優斗は安堵の息をつく。そして、晴達を振り返った。


「そういう事だから、悪い。今日の稽古は此処まででもいいか?」

「気にするな。我らは我らで訓練していよう」

「が、頑張ってね、優斗くん」


 優しく送り出してくれた晴達に感謝しながら、優斗は照に向き直る。その姿は相変わらず真正面から見るには眩しくて堪らない。


「とりあえず、別の場所に行きますか?」

「その必要はないね! さあさあ、弟子君! まずは君の実力を見せてくれたまえ!」

「え? じ、実力を見せるって……」

「おや? どうかしたのかね? もしかして、僕に攻撃するのが心配かね? だとしたら、安心したまえ! 君に僕を傷付ける事は出来ないからね! 安心して掛かってきたまえ!」


 優斗が戸惑っている理由は全く別のものなのだが、何か勘違いしている照に優斗は困惑した様子で口を開く。


「い、いえ、そういう事じゃなくて……。俺、戦えないんです」

「ふむ? 君は先程そこの女生徒と稽古をしていたように見えたがね」

「確かに稽古をつけてもらってますけど、まだ実戦で戦えるほどじゃなくて……。武器も出せないですし……」


 優斗の言葉に照は何かを考えるように黙り込んでしまう。そして、昨日と同じようにジッと優斗の顔を見つめる。いや、優斗の顔を見ているというよりは彼の雰囲気を読み取っているという感じだ。


「……なるほどね! 分かったよ、分かったとも! それならば、弟子君。戦う必要はない。属性は纏えるのだろう? まずはそれをやってみたまえよ!」

「は、はい」


 言われた通りに気を集中させて、全身に気が行き渡るように意識する。すると、優斗の全身がほのかに発光する。

 それを見た照は何度も頷く。


「うんうん、なるほどね! 弟子君、その状態で僕を見てみるがいい!」

「え?」


 照の言葉の意味が分からず、怪訝な顔をしながらも言うとおりに彼に視線を移して……優斗はある事に気付く。

 真正面からは眩しすぎて到底直視出来ない照の眩しさが弱まっていた。いまなら、真正面から彼の顔を見ても目が眩む事はないだろう。


「どうだい? 僕の顔がちゃんと見えるかね?」

「はい、大丈夫です。けど、なんで?」

「それは弟子君がいま自らの属性で自分の身を守っているからだね! 属性を身に纏っている状態ならば、僅かだが身体能力も向上するからね! 常に纏う事が出来るならば、それだけで充分戦闘に耐えられるようになるだろうね!」


 知らなかった。属性を纏う事でそんな効果があったのか、と感心する優斗。だが、照は簡単に言っているが属性を纏うだけで、かなりの気力がいる。正直、今の優斗では一分も纏っていられない。

 ふっと、優斗の全身から光が消える。


「おや、もう消えてしまったね! まあ、普通は常時纏う事などは出来ないからね! だから、退鬼師の多くは戦闘中のみか、ここ一番の時にのみ纏う事が多い。だからこそ、常に属性を纏う事が出来れば、君はそれだけでどの退鬼師よりも抜きんでた存在になるだろうね!」

「どの退鬼師よりも?」

「おや、信じられないと言いたげな顔だね? でも、君の気持も分かる、分かるとも! 一般的に光属性の退鬼師は支援に向いていると言われているからね!」


 その言葉に以前の授業で、白がそう言っていた事を優斗も思い出す。


(確か、支援系とされるのが、風、水、光だったっけ?)


「だけど、僕からしてみたらそれは有り得ない事だね! 何せ光属性ほど攻撃に特化しているものはないからね!」

「え?」


 また信じられないと言いたげな顔をした優斗。

 それはそうだろう。いくら優斗がまともに属性の力を引き出せていないとはいえ、精々相手の目くらましぐらいしか出来ると思えないからだ。 

 そんな優斗の考えが分かったのだろう。

 照は、ふむと頷くと目を細めて、周囲をキョロキョロと見渡す。そして、森の方に視線を止める。


「よく見ていたまえ」


 そんな声と共に彼は、森に向かって手を翳す。

 次の瞬間、彼の掌から放たれた高密度のエネルギーがレーザー状になり、一瞬にして校庭と森を抉った。


「っ!」


 地面が大きく揺れる。

 巻き起こる黒煙が優斗の視界を奪う。そして、その煙が晴れた後、彼の視界に入ってきた光景に優斗は息を呑んだ。

 大きく抉れた地面。レーザーが放たれた森の一部は、跡形もなく消えてなくなり、森の向こう側に広がっていた景色が見えていた。

 その凄まじさに、圧倒的な破壊力に、その場にいた誰もが言葉を失う。


「ああ、安心してくれたまえ! 焼き払った所に人がいないのは確認済みだからね!」


 振り返って笑う照に優斗は、底知れぬ恐ろしさを覚える。

 とても人間に出来ると思えない破戒の力を前に恐怖を抱いた。そんな優斗の恐怖に気付いたのか、照は僅かに考え込み、それから屈託なく笑う。


「安心したまえ! 例え、弟子君が死ぬ気で鍛えた所でこれほどの出力は出せないだろうからね! ただし、気を付けたまえ! このように光属性は扱いを間違えれば何もかもを破壊してしまうほどの破壊力を秘めている事を忘れないことだね!」

「……は、はい」

「なに、心配することはない。君ほどの美しい魂の持ち主ならば、道を違える事はないだろうからね! だからこそ、僕は君に教えてもいいと思ったのだからね!」

「ちょっと、今のは何事!? ……って、貴方は……」


 爆発を聞きつけて、走ってきた白は照の姿を見るなり、目を見開く。対して、照は白の顔を見るなり、苦虫を噛みつぶしたような顔をする。


「……なるほど、貴方の仕業でしたか。それならあの威力も納得です。しかし、どういう事か説明していただけますよね?」

「どうやら時間切れのようだ。弟子君、とりあえずは長時間属性を纏えるように訓練したまえ! それが当面の君の課題だからね!」

「わ、分かりました」

「それでは、僕は去ろう。白君の説教は長いからね! さらばだね!」

「あ、照様! 逃がしませんよ!」


 早口で捲し立てて、そのまま止める間もなく、走り出してしまった照の後を白も追いかける。

 あっという間に姿が見えなくなった二人を優斗達は茫然と見つめた。


「……なるほど、あれが序列第一位の実力の片鱗ですか。恐ろしい事に彼は実力の半分も出してないんでしょうね」


 ふと、声を上げたのは幸太郎だった。

 彼は照が破壊した地面と森を静かに観察していた。


「この程度の破壊、あの人にとっては準備運動だろうね」

「ええ、絶対に敵対したくない人ですね」


 あの幸太郎がそこまで言う事に驚いた優斗だが、花音達の顔も青ざめているのを見て、彼女達も瀧石嶺照という存在に恐怖を抱いているのだと理解するのだった。


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