第133話 部屋にて……。
恋愛を書くのは個人的に難しいです。
なんにも変わりない日常の明朝にて……
「緊張するわね……」
「安心しろ、経験している俺だから大丈夫だ。暫く、話しかけられても返答できる自信はねぇぞ」
「そうなの? 分かった。安全になったら話しかけて」
「……よし、やるぞ」
品川は深呼吸し、目の焦点は真っ直ぐ見て、集中していた。
「……」
品川が黙秘しながら前へ進んだので、一華は後に続くのだ。
フロント前へ進み、鍵だけをテーブルへ置いて、玄関から堂々と出た。
品川と一華は難なくラブホテルから脱出でき、辺り一面を見渡す。
そこにはラブラブのカップル、商談中のサラリーマン、電柱下で眠るホームレスがいた。
(全員『アトラス財団』の者ね。風俗店やホテルが多い店なのに、ここでイチャイチャする理由が無い。それにサラリーマンも怪しい。商談の電話してるのに風俗通いする暇とかあるのかしら? それに遠くから聞いてたら適当なことばかり話をしているだけ。あのホームレスにしたら靴だけが綺麗すぎるし、上着から白い綺麗なシャツが見えてんのよ……)
杜撰な変装と見張りなので、一華は内心呆れていた。
(これなら余裕よね。それにしても本当に認識されてないのかしら?)
一華は疑問に思っていた。
もしかしたら今見てる人物達は本当に実在し、おかしい行動しているのか、それとも怪しまれないように演技しているのか、それが疑問だった。
そこへ集中している為、一切喋れない品川がジェスチャーで『急ぐぞ』と伝える。
「えぇ……」
そう一言返事で一華の家まで向かう。
暫く歩いていると人気が多い繁華街へ辿り着き、一華は安堵する。
そして品川は路地裏へ入り、『解除する』というジェスチャーをする。
「えぇ……」
人が見てないか確認し、安全だと認識すると月の覇気を解除した。
解除した瞬間、品川は身体から大量に発汗させ、頭痛で立てなくなる。壁へ手を当て、肩で息を繰り返し、疲弊しきった精神を回復させる。
「大丈夫?」
心配した一華はポケットからハンカチを取り出し、汗を拭いてやる。
「サ、サンキュー……少し、休んだら……また行こう」
かなり疲弊しきっており、ちゃんとした会話もままならなかった。
「無理だと判断したら能力の使用を止めるわ。これ以上、貴方の精神力が持たなくなる」
「……あぁ、それでいい。それで……」
急に猛烈な眠気が襲い、そのまま力なく地面へ倒れる……だが、品川を支える腕があった。
「ほら、私の家はもう少しだから頑張って」
支えてくれたのは一華だった。
短い間なのに、ここまでしてくれるのは意外だったのだ。
協力関係なら回復を待って、放っておくのが東京の人間だと、品川は偏見の片隅で思っていた。
そんな考え方は改め、反省することにした。
「……何、そのスッキリした顔?」
「いや、ちょっと変な考え方をした自分が恥ずかしいと思ってな?」
「……まさか!? 私の胸を見てたじゃないんでしょうね?」
「この角度じゃ見えねぇよ。折角、東京の代表者として見直したのに……」
余計な一言だが、そんな事は別に叱責するほどでもなかった。寧ろ、初めて人間という仲間を持った清々しい気分だった。
「何よ。だったら一人で歩く?」
「いや、もう少し支えていてくれ……頼む桜草さん」
「……私が住んでる渋谷まで、もう少しよ。頑張って品川くん」
お互いに少しだけ距離が縮まった予感した。
暫く歩き、ようやく一華が住む渋谷区へ到達した。
このまま月の覇気で幻覚を維持したまま、一華の自宅まで向かった。
そして品川は満身創痍のまま、一華のマンションへ辿り着き、三階にある部屋へ入室した。
「……」
目前へ広がる1LDKの部屋を目撃し、呆然としていた。
「どうしたの?」
「いや、女の子の部屋に入るのは初めてだから……ましてや刑事さんの部屋となったら、硬派なイメージがあったから……意外と普通だった」
「文句言うなら入れないわよ?」
「悪い、いつも見る光景が違った感じだから違和感を感じていたんだ」
「いつもどんな風景を見てるのよ……」
「非日常な光景だ。物語に出てくる豪華な屋敷、出勤する時にいつも見れるイルカ、やたらめったら響く轟音と慟哭、俺と仲間の周囲はいつも阿鼻叫喚……」
「何それ? 何処の地獄? そんな地獄みたいな物が現実にあっていいの?」
「一般人が阿鼻叫喚してる訳ねぇぞ、俺達に喧嘩売った奴等が倒れて騒いでるだけだ」
「それでも地獄よ……大阪って、そんな魔境だっけ? 嫌よ。そんな伊波だらけの気が触れた世界」
「地獄には行ったことはあるし、魔界にも行ったこともある……行ったことないのは天国ぐらいだな」
もし品川を倒したら、一体どっちに向かうのだろうと、更に心配となる一華だった。
部屋へ入り、一華は品川をスタンダードなベッドへゆっくりと寝かせる。
一華の部屋は小さいテレビ、本棚には大量に置かれた漫画、机には散らばった資料、吹雪から聞いた話よりかけ離れていた。
「お腹すいた……今から警察署に戻って報告しなきゃならないけど、品川くんはどうするの?」
「危険だが出前でも頼むよ。暫くしたら仲間とも連絡とる」
「分かったわ、それじゃまた後で」
「あぁ……」
一華が出掛けると、直ぐ様品川はポケットからスマホを取り出し、部屋を撮影し始めた。
早速、何処かに連絡し始めた。
「よし……あぁ、俺だ。この部屋に来てくれ……今は誰もいない……安心しろ、口は固そうな刑事さん……あ~はいはい。後ろにいるヒステリックアイドルも連れて来い……じゃあ頼んだぞ」
戦闘よりも電話による精神的なダメージが強かったらしく、呆れるしかなかった品川。
電話を切ってから、暫くすると部屋の中心に黒い渦が出現した。
そして迷いのないクナイが渦から飛来した。が、品川は難なく指二本でキャッチし、頭が痛くなった。
「本当に貴様は揉め事ばっか起こすばかりか、足を引っ張る疫病神め!」
「はいはい、そこまでや。ちゃんと生きてたんや、怪我人に愚痴を言ってもなんも始まらんよ」
「全く、天才である俺がついていないと何もできないようだな。それにお前を倒すのは内藤でも竹島でも『アトラス財団』でもないからな? 天才である俺だからな、もう一回覚えておけクソリーゼント」
「……よく頑張ったな」
「テメェに慰められても嬉しくねぇよ……けど、これで揃ったな」
渦から出て来たのは……
戦闘モードに切り替え、何時ものに服へ着替えた雅。
なんだかんだで疲弊しきっているが内心は嬉しそうな吹雪。
偉そうな態度で腕組みし、長髪のカツラを取って、現れた南雲。
そして最後にコイツも本気なのかビジネススーツじゃなく、品川と対決した際に着衣していた物と一緒な服装で現れた……忍だった。
「おい、一応さ人の部屋だし、ましてや刑事さんの家でもあるから靴脱げよ」
「「「テメェは、この部屋の主人か!」」」
忍以外の一斉で突っ込まれる品川だった。
(一日だけ品川と離れてただけで、こんなにもテンションが違うものなのか?)
感情豊かな友達が少ない為、忍には理解できなかった。
「それより忍……その手にあるのは?」
品川は忍が両手一杯にコンビニ袋を持っていた事に気付き、尋ねてみた。
「腹減ってるか?」
「あぁ、かなりな」
「だったら買い物は無駄じゃなかったな」
忍が購入してきた物は五キロのハム、五キロのソーセージ、一キロのチーズ、食パン五斤、千ミリリットルの水を十本、各種の店で漁りに漁った色んな酒、オマケ感覚でミックスナッツが入っていた。
「今から調理してやる。このまま食うと身体治す前に、腹を壊しそうだからな」
そして忍の大量による調理が始まった。
いかがでしたか?
もし良ければ誤字や脱字や意見や質問等あれば教えてください。




