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マグナムブレイカー  作者: サカキマンZET
第3章 東と西 黒の追憶編
111/171

第111話 最強の始まり。

二週間程はお休みをいただきます。

楽しみにしている方には申し訳ございません。

 暗く棘と修羅の道ばかり、全裸で進んでいる人物がいた。

 足元はドロドロとした赤黒い血溜まりばかり、進めど進めど何処までも、鼻を閉じたくなるような悪臭。

 どれもこれもが最悪(・・)な場所だった。


「もう終わりにしたら?」


 深い暗闇から、その人物に対して優しく声を掛ける。


「まだだ。まだ終わっていない……俺は……まだ夢に近づいていない……」


「でも、無理してるよ?」


「それでもだ……」


 男の身体はボロボロだった。もう指で突っつけば崩れる土人形な状態。

 左足首が完全崩壊し倒れた。けれど、力一杯這いずりながらも前へ進む。


「貴方の所為じゃないでしょ? なんで、そこまでして進もうとするの?」


「もう意地だ。諦める訳にはいかない、ここまで登って来た……アイツの為にも……」


 限界に達しのか、右腕もボロボロと崩壊したのだ。


「見てられないよ……自分の所為でもないのに、全て馬鹿みたいに背負って、自分が壊れかけてるじゃない!」


 今まで優しく止めてたのが、いきなりと憤怒へと変わっていた。


「分かってる……分かってる……お前の……お前の為にも……」


 彼はとても後悔しながら、深く深く長い眠りに誘われて行った。


 明朝に高級ベッドで神崎忍は重い瞼を開いて、目覚めた。目からは病気かと思われる血涙が流れ出ていた。

 忍は左手で血涙を触り確認した。何故か心の底から凄く悲しくなり、同時に怒りも込み上げていた。


「俺が選んだ道だ……後悔は無かった筈なのに……」


 グッと血涙が付着した左手を力強く握り締める。

 何か覚悟し、上半身を腹筋のみで起こし完全に目覚める。


「……疲労困憊で見る夢じゃないな」


 頭を抱え深刻な表情でポツリと呟く。

 それもそのはず。忍は帰還した後、修二の元へ駆け付け、更にはウロボロスと戦闘するという、かなり激務な事をしていた。

 その無理が重なり、自宅へ玄関へ入った瞬間に突如と意識が途切れたのだ。

 それからは二日間は死んだ様に眠っていた。


「……二日か、後一日休みたいが閻魔の所へ向かわないとな」


 忍は身体を横へとスライドさせ、ベッドから足を出し、フラフラしながらも立ち上がり、クローゼットから服を探す。


「……久し振りに帰って来たから、何処に何があるのか分からないな」


 そしてクローゼットから服を見繕う。

 見繕った物に着替える為、全ての服を脱い だ。下着も含めて……。


「パンツはどうしよう……」


 忍は顎を触り深刻な表情で悩んでいた。

 ベッドの上に置いてある。黒いトランクスか赤黒いトランクスの二つをどちらか身に付けるのか……。

 するとコンコンとドアを叩く音が部屋に響いた。


「入れ」


「失礼します」


 主人の許可が降りたことでメイドは部屋へ入って来た。

 部屋へ入り、メイドは大きく驚愕し、恥ずかしさで頬を赤めらせ、絶叫した。


「?」


 何故、いきなり絶叫したのか訳が分からない忍はキョトンとしていた。


「忍様! 何時も言っているじゃないですか! 裸でいるなら、先に仰っていただかないと!」


 メイドはジリジリ近づきながら、忍相手に激昂しながら説教していた。


「……あぁ、今度から気をつけるよ」


 悪気ない様子で忍は返答する。


「駄目です! 今回こそは約束してもらいますよ。このままじゃ神崎家のメイドとして恥ずかしい思いをします! 主君として気高い意識を持っていただかないと!」


「……なら聞こう。そんな羞恥心のない主君に君は、どう変えようとしている?」


 そんな意見に興味を持ち、忍は全裸のまま、メイドへと近づく。

 メイドは少しずつ後退りし、壁際まで追い込まれた。

 そして少女漫画とかに使われる壁ドンをし、メイドの目を虚空な瞳でジッと見ていた。


「……」


「……俺は五年間、変化を求められて来た。毎日毎日戦い、失う物もあれば離れて行く物まであった。これ以上、俺に何を求める?」


 忍が求めていたのは返答だった。それは納得する理由じゃなかった。なんでも良かった。

 別にやさぐれている訳じゃなかった。ただ、返答を聞き理由が欲しかった。


「……それは自分で見つけてください。我々の仕事は忍様のお世話です。それに私は遠回しに言っているだけで、ハッキリ言います! 家の中でも服は着ててください。働いている私にはセクハラですから……失礼します」


 メイドはハッキリと忍に申し上げ、腕を払いのけ部屋から去った。


「……そうか」


 一人となり、軽く笑いながらベッドへ戻り、黒のトランクスを眺めていた。


「戻れるなら、黒に戻りたいな」


 願望するかように黒のトランクスを取り、履いた。

 クローゼットからワインレッドのサテンシャツ、グレーのスラックス、裸足の状態だった。


「……さて、行くか」


 その姿のまま、部屋で『ダークネスホール』を開き、閻魔の目前へイメージする。すると渦の中からワープ先が見えて、そこへ突撃する。

 そしたら畳の上で着地し、『ダークネスホール』を閉じ、遅いが辺りを確認する。

 閻魔だけ座り、後は誰もいない状態だった。


「無作法だな。横着すると細かい所が見えなくなるぞ?」


 突如ワープしてきた忍には驚かず、分かってた感じの冷静な対応する閻魔。

 普段とは違い、キラキラと黄金に光る蝶と彼岸花の刺繍が入った浴衣を着ていた。右片手には世界に認められた度数の高い、スピリタスをラッパ飲みしていた。

 それも朝から飲んでいた様子で、空き瓶が閻魔の隣で数百本は並んでいた。


「……アンタ、経済には役に立つがアル中には敵扱いされるぞ?」


「これでも足りないぐらいだ。後百万本は欲しいが、俺が独り占めする訳にもいかないからな?」


「……しょうがねぇな」


 閻魔の言い分に不服な忍は小さな『ダークネスホール』を開き、何か探っていた。

 そしてお目当ての物があり、それを渦から引っ張り出す。


「俺が作ったワインだ。試験段階だが、酒通のアンタに評価してほしい」


 それはコツコツと知識を蓄え、更には実験を何回も繰り返し作った酒を閻魔へ試食として渡した。

 深緑の長いビンで、白いラベルのロゴには『solis』と刻まれていた。


「ほう、ラテン語で『太陽』か。大きく出たな? それとも何か意味があるのか?」


 ラベルに書かれた文字を見て、閻魔は気になったのか忍へ尋ねた。


「このワインを作っている時、たまに品川修二の顔が浮かんでな? アイツは何時も太陽みたく周りを照らし、全てを巻き込む。特別扱いではない……が、意味はある。未熟、単純という意味合いも込めて作った」


 無表情のまま、ラテン語の意味と理由を長々と閻魔へ説明した。


「成る程、お前にとっては未完成(・・・)のワインだな?」


「あぁ、『太陽』だけでは俺には勝てない。もう一つ何かを加えないと……そこまで辿り着けない」


 自負するほど忍は強いと発言した。


「……未熟で単純か。お前も未熟であり、未完成のワインと一緒か?」


 閻魔は忍を試すような態度で尋ねた。


「……そうだ。本来の目的は神への復讐。その第一歩として、お前を倒すという目的がある。神に愛され、ゼウス、ルシファーより完全無欠の貴様に勝つことだ」


「……それは面白い。待ってるぞ、お前が俺と同等になる日を?」


 大きな事を平然と発言した忍に対し、閻魔は怒らず、油断せず、慢心せず、本当に心の底から楽しんで待っている様子だった。


「じゃあ、乾杯と行こう。ちゃんと目的意識を持っている事で……」


 『ダークネスホール』を開き、ワイングラス二本を取り出し、一本は閻魔へ渡した。

 そして閻魔はウキウキな気分で、ワインボトルを忍へ渡す。


「……」


 淡々とコルクを抜き取りながら、閻魔の持っているグラスへワインを半分まで注ぐ。

 そのワインは見た目は黒いが、奥深くには深紅の色が見え隠れしていた。

 忍も自分のグラスにワインを注ぎ終わり、準備は万端。


「……我が(おやじ)に」


「我が(おやじ)に……」


 閻魔が乾杯の挨拶を述べると、続けて忍も返答した。

 『solis』というワインはフルーツの薫りがする。が、味は苦々しく酸っぱく不味かった。


「……飲むか? スピリタス」


「あぁ、飲もう」


 口直しに閻魔は右隣にある木箱からスピリタス一本を取り出し、忍に渡して、飲み会を続けるのだった。

いかがでしたか?

もし良ければ誤字や脱字や意見や質問等があれば教えてください。

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