都会の子どもは大変だ
通勤途中の風景。
通勤の途中、ピッカピカのタワマンを通り抜ける。ゴージャスなエントランスを見る度に世の中お金持ちが多いのだなと嘆息しています。
タワマンの周囲は公開緑地や公園があって。犬を連れて散歩する人、何かの撮影している人達、私の様に死んだ目で通勤する人々など様々です。
よれよれと職場に向かうある朝。お年を召したお父さんらしき男性と幼稚園くらいの女の子を見かけました。
見ると自分の頭ぐらい大きなボールを女の子が持っていて、両手でお父さんに向かって投げている。
ヒョロっ
ポテポテボテ……
ボールはバウンドしてお父さんの手に収まった。お父さんが投げ返してもう一度。よっこらしょと大きなボールを両手で抱えて、また女の子が投げる。
ヒョロロっ
ポテポテボテ……
まあ、そうだよね。ボール持つだけで精一杯だもの。ボール、重いよね。体操教室の課題を練習してるのかなぁ。親子の練習を横目に眺めながら職場に向かった。
しかし。子どもの成長は早い。ひと月かそこらで女の子は大きなボールを片手で持てるようになった。そして、ついに
シュッ
ボールはノーバウンドで勢いよくお父さんの腕におさまった。
お——よく頑張った!
やった、やったね。
良かったね!!
と、つい声をかけたくなったが。そんな事したら、どう見ても不審者になるので全力で我慢します。うん、都会は世知辛いや。
こうしてボール投げのミッションをクリアした親子は見かけなくなった。当たり前だけど少し寂しい。
ボール投げ練習する親子の姿が見られなくなってしばらくした頃。今度は大人数人と子ども達の姿を見かけるようになった。
大人が三人から四人。子どもも同じ人数なのでほぼマンツーマン。
はじめはママ友やパパ友で合同自主練しているのかと思ったが樣子が違う。お兄さんお姉さん達は揃いのジャージ着てるし。そもそも普通の家にケンケンパ リング (フラット フープ)や体操用の縄梯子は置いてないもんな。
ほぼマンツーマンで体操指導か。親御さん、ふっといな。さすがタワマン暮らしのご家庭は違うぜ。感嘆しながら、体操教室の樣子を見るのがしばらくの日課となった。
ある朝。フラットフープが公開空地のスペースにいくつか置いてある。
フープ一個がケンケンする所、フープが二個横に並ぶ所はパー。フープの真ん中に片足ずつ置く。フープ一個でも指示によってはグーで両足を揃えて着地もあるけどね。指示を良く聞かないとできないやつだ。
ケンケン、パー、ケン、パー、ケン、パー…グー…
全部できたら、くるりとUターンをして全力疾走。先生の前のフープに入ってぴたりと気をつけの姿勢で立つ。いきなりできる幼児は少ないんじゃないだろうか。
女の子は先生の指示を聞いて真面目にケンケンパーをして終わると気をつけまでしっかりこなす。ケンケンが難しいところは少しふらついちゃうけど。
たいして男の子は……。ケンケンパーは速くてダイナミックだけど最後の気をつけはぐにゃぐにゃで、お姉さん先生に姿勢を注意されている。やっぱり男の子は男の子だ。
中には、練習を断固拒否して周りをふらふら走り回る男の子もいる。自由だな。
朝も早うから先生も子どもを大変だなあ、と横目で見ながら出勤する私であった。
こちらも、何ヶ月か過ぎると課題がどんどん難しくなっていく。そして、ついに縄梯子が登場した。
登りませんよ?縄梯子を地面に敷いて四角のスペースを利用してケンケンとかグーとかパーとかやるんですよ。
最後の頃は、これまた難しいのをやってたの。
縄梯子の▢のスペースにグーで両足を揃えてジャンプ。次は前の▢の右横に右斜め方向にグージャンプ。次は前の▢の中、左斜めにグージャンプ。要は右斜め前、左斜め前とグー、グーと決められた場所にリズム良くグージャンプしていくわけ。
体幹鍛えてないと難しいだろうね。
子ども達のジャンプは当然ふらつくし、足は揃わないし、▢を踏むし。見ているこっちが心折れそうになる。
大人でも難しいかな。つか私……ゆっくりならできるのだろうか。
「はっ。これは最難関◯△小学校の過去問だわ!」とか私にわかるわけもなく。
やっぱり、横目で見ながら職場に向かうのでした。
東京都の小学校受験は11月1日から。体操を頑張っていた子達もお受験をしたのだろうか。夏の朝、幼稚園に行く前に練習していた子ども達。
都会の子どもは大変だ。
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