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のどあめの備忘録  作者: のどあめ


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2/5

秋の旋律ふたつ

秋空で連想される曲。

 ようやく秋がきました。

 太平洋側は一ヶ月以上ずっと雨か曇りでした。やっと秋空が拝めて気持ちがあがり、よく愛車(自転車)に乗ってお散歩しています。


 秋がくると口ずさみたくなるのがLSDの「Audio」。LSDって……お薬じゃありません。Labrinth、Sia、Diploの3人の頭文字を取ったユニットの名前です。まあ、Siaさんはお薬を暗喩した歌詞入れること多い方ですけどね、リアーナのDiamondsとか。この「Audio」に出てくるMoondustもお薬の一種だとか。それを意識してか、LSDのミュージックビデオはサイケデリックな色調のアニメが頻出します。


 歌詞の意味があるような無いようなこの曲。めっちゃ早書きで作られたそうです。


 なんでもスタジオで音響機械が故障して修理している間に、シーアとラビリンスのボーカル二人が「は〜やく音がでないかな」「は〜やく機械なおらないかな」とか歌っている(想像だけど)間にできちゃったというこの曲。その辺が最後の「We can't live on without the rhythm」にでているのかなと思います。確かに心拍無くして私達は生きてはいけない。


 ミュージックビデオに出てくる風船みたいにふわふわと浮遊感のある歌です。秋空とお散歩そして帰宅する時に口ずさんでいます。


 だがしかし。当時小学生だった下の子に言わせると、これがハゲの曲になるんだな。


「Make the bomb bomb beat I'll give you melody」


 ……確かにここのI'll give がハゲに聞こえる。


「ハゲだ、ハゲ。ハゲの曲だ」

「人が好きな曲に何ということを。そんな言ってるとおまえ、本当にハゲるぞ」(相方の家系がそっち側です)

「!!」

「ふっふっふ。ふさふさだった母方のじいちゃんの遺伝子が発現することを震えて祈れ」

「ハゲるのは嫌だ〜」


 大事な受験期に親子でこんなあほなやりとりをしていました。ハゲに聞こえるけど、やっぱり大好きな曲です。


 ◇


 そして色づいた葉が落ちる頃に口ずさみたくなるのがアレクサンドル・ボロディン作曲「ポロヴェツ人(韃靼人)の踊り」の冒頭のオーボエの旋律(娘達の踊り)。昔は韃靼人と言ってたのですが今はポロヴェツ人と言うのが主流だそう。ポロヴェツ人はキプチャクという遊牧民。モンゴル軍が侵入するまで二百年近くロシア、ウクライナに侵入していたそうな。


 初めて聞いた時は、なんてロマンチックな音楽だろうと感動したものです。実はオペラ「イーゴリ公」の曲で歌詞が付いていたと知ったのはごく最近です。


 この曲の場面は、ポロヴェツ人の捕虜になったイーゴリ公がハーン(相手側のボスね)と一緒に奴隷や敵兵の踊りを見せられているのです。で、ハーンがイーゴリ公に「わしに従属してくれたらあんさんを解放しまっせ。なんなら好きな女奴隷あげるで、どや?」と迫るという所。


 哀愁漂う奴隷達(イーゴリ公の国の若い娘達だ)の歌う旋律と疾走感溢れる敵兵達の「偉大な俺達のハーン万歳!」な歌が錯綜する、要素詰め込みすぎと言われかねない物がぎゅっと詰まっている名曲なのです。


 娘達の踊りの歌詞がこれまた素晴らしくてね。冒頭が「風の翼に乗って(私の)歌よ、故郷に届けておくれ」という聞いた端から目から汗が出るような切なさよ。そして切々と懐かしい故郷の風景とかつての穏やかな生活を歌うの。


 もう戻れない穏やかなあの日々。生きては帰れない故郷。せめて歌、おまえだけでも故郷に還っておくれ。歌よ、おまえは故郷で自由に過ごして。


 これを聞く度にロシアの人ってなんてロマンチックな人達なんだと思います。民話はホラーでおっかない話が多いけどね。


 オペラではこの曲の場面、韃靼人が鞭を振り回していたり奴隷の娘の髪の毛掴んで振り回す演出なんですよ。ロシアの人のアジア観がうかがえます。


 なんかね、遺伝子レベルでアジアへの恐怖や警戒心が染みついていないか?と考えさせられます。


 ついでに調べてみたらアレクサンドル・ボロディンという人がね、物凄く濃いお方でした。まず肩書が医者で化学者で作曲家ですよ。本業が忙しすぎて日曜しか作曲しない自称「日曜作曲家」で歴史に残る名曲を残しているチートでした。


 そもそも出生からしてやばい。貴族と既婚女性(両親の年齢差が四十歳近く。闇が深い)との間の子どもで認知されずに農奴の子にされたとか。


 化学では有機化学で教科書に載るような発見(アルドール反応)をしたとか。医業においては女性医療従事者養成機関設立に従事して。


 そして三十過ぎて本格的に作曲を始めてムソルグスキーやリムスキー=コルサコフと知り合いで、初の交響曲はリストがドイツの公演手配したとか。


 なろうの主人公になれるんじゃないかという知識チートに人脈チートですね。いや、設定盛りすぎと言われるかもしれない。



 片やEDMで機械の修理中に完成しちゃったLSDの「Audio」。片やクラシックで約二十年近く作曲して未完に終わった「イーゴリ公」。対照的なのに。どちらの音楽も秋を感じさせられるのが不思議ですね。

ボロディンさん、グルジアの王子の非嫡出子とされている文献もありましたが、このエッセイではWikipediaにならいます。

  

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