21話 奈々
折角の夏休みなのに、私は外に出るのが怖くなった。
理由は、はっきりしている。
家の前から少し離れた物陰。
そこに、彼がいるかもしれないから。
それに気付いたのは、終業式の翌日だった。
買い物に出かけようと家を出た時、物陰から誰かが飛び出してきた。
(ッ……白井くん?)
「奈々ーっ!!」
嘘……嘘嘘嘘……!?
「あ、ごめん忘れ物!!」
咄嗟に嘘をついて、すぐに家に飛び込んだ。
まだ心臓がドキドキしている。
出たと思ったらすぐ帰ってきた私に、怪訝そうな顔をしていたお母さんに事情を説明し、そっと先程の物陰を室内から覗いてみる。
——まだ、いる。
この日、外が暗くなるまで彼はずっと同じ場所に居た。
それから、外に出る時間を変えた。
出かける時には、申し訳なかったけど、美香達に迎えに来てもらった。
お母さんに車を出してもらった。
……全部、偶然じゃない。
同じ場所。
同じ距離。
じっと、こっちを見てる影がいる。
はっきり顔は見えないのに、分かる。
——あの人だ。
何もされてないのに。
何も起きてないのに。
それでも、怖い。
日を追うごとに、外に出るのが億劫になっていく。
カーテンを閉める時間が長くなっていく。
誰かと一緒じゃないと、外に出られなくなる。
スマホを見るたびに、あの動画が頭に浮かぶ。
笑ってた顔。
血がついたままの顔。
……思い出したくないのに、消えてくれない。
そして、気付いてしまう。
あの人は——まだ、終わってないと思ってる。
あの日のことを。
私とのことを。
……もう、やだ。
明日は、花火大会。
本当は、すっごく楽しみだったのに。
今はただ——何も起きませんようにって、祈ることしかできなかった。




