酔った勢いでの異世界生活⑭料理へのこだわり
壁lー゜)ヒッソリ ダイスケ、料理屋で働いてた時のこだわりを語るの巻
パワーレベリングからシルバーラビットの宿に帰ったミカとユウコは、帰り道までは元気だったが、宿にたどり着いたら疲れが一気に出たらしく、直ぐに「ダイスケおやすみ」とだけ言って自分たちの部屋に入って行った。俺は「明日は予定入れてないから、ゆっくり休んでいいからね。ミカ、ユウコおやすみ」とだけ言って自分も部屋に入りベットに横になった。明日は何をしようかな?近接戦闘の護身術を2人に教えたいとかも考えてるんだけど、スキルの習得って大変なんだよな。チュートリアルダンジョンでは比較的楽に入手できるんだけど、本格スタート後はスキル習得イベントクエストを攻略するくらいしか入手方法が無かった。
瞬動を覚えてもらえたら最強なんだけど、能力の高さだけあって、クエストもめちゃくちゃ厳しくて、命に係わるハードクエストで、俺もゲームではβ版ダンジョンでしか取れなかったんだよね。まぁ、その辺は何とか別の対策を考えよう。明日のミカの魔導書はどれにしようかな?とりあえずフライでいいかな?今日の飛行も後半楽しそうだったし。そんな事を考えながら、俺は眠りに落ちていった。
翌朝、俺はいつもより早く目が覚めた。食堂にもまだ誰も居ない。エミリが一人朝食の準備をしてるみたいだ「ん~おかしいな~。何が違うんだろう?」厨房からそんなエミリの声が聞こえた。俺は厨房へ向かいエミリに声をかけた「おはようエミリ。どうしたの?」「あ、ダイスケさんおはようございます。ちょっとスープの味がいつもと違くて・・・」エミリがそう言ったので俺は「ちょっと見せて」と言って鍋を確認する。「ちょっとだけ味見するね」そう言って一口、口に含んで原因が分かった。
「エミリ。この乾燥させた黒い海藻で初めのダシをとってるんだよね」俺がそう言うと「はい」とエミリが答える「この黒い海藻を取り除くタイミングが遅かったんだと思うよ。この黒い海藻の苦みが少し出てる。これは、デリケートで沸騰させちゃうと余分な苦みが出るんだ。いつもは沸騰する前に取り除いてるはずなんだけど、遅かったんだと思うよ」俺がそう言うと「あ、確かにいつもより少し取り除くのが遅かったです。これが原因だったのか~」そう言って鍋とにらめっこしていた。
「このまま強引に作るのなら、別のもうちょっと濃い味のこれを使ってこっちのキノコも入れれば別の味で苦みが気にならないスープも作れるけどどうする?」俺がエミリにそう聞くと「いえ、初めからいつもので作り直します。まだ時間もありますので」と俺に向ってにっこり微笑んだ「それより、ダイスケさん凄いです。お父さんと会話してる気分でしたよ。昨日、1回飲んだだけのうちのスープの味がなんでわかるんですか!おまけに応急処置の別メニューまで考えちゃうなんて」エミリが驚いてそう言うので俺は少し語った。
「前に居た場所で料理に携わっててね。まぁ、前に居た場所はクックチルって言う外道・・・いや、か、簡略化料理っていうのかな?そう言うのが流行りだしちゃって、まともに料理を作る場所もなくなっちゃってたんだけど、俺はそれにずっと抵抗する性格だったので、料理の道を諦めてても余計に味に詳しくなっちゃって。だから、昨日ここで食事したときは本当に嬉しかったんだ。あ、久しぶりに本当の料理だって・・・」
「簡略化料理?ですか・・・良く分からないのですが、もしかして昨日の肉炒めみたいな直ぐに出せる料理の事ですか?」エミリが悲しそうに言うので俺は慌てて訂正した「違うよ。あれは、本物。前々からしっかり味付けして仕込みがしてある肉をお客さんに出す前にしっかり炒めてる。俺が言う簡略化料理っていうのは、例えるなら、昨日の残り物を温めなおして出す。これを毎日やるような事かな?」それを聞いたエミリは驚いていた「えっ、そんな事出来ませんよ。お客様に失礼です」「良かった。エミリ、その気持ち絶対忘れちゃだめだよ。美味しかったよまた来るねって言える料理をいつまでも出して欲しい。前に俺が居たところは、そういう場所が消えてしまったんだ」
俺は現代日本を思い出して思わずエミリに語ってしまった。この異世界の料理が本当に好きだったからだ。